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まぁ、いじめが起こって数日後。
相変わらずな毎日だが、今日はクラスの空気がおかしい。
というか、琴音さんの席に人がいた。
「…?」
忘れていたが、琴音さんの席は私の斜め後ろ。
気になったので、少し盗み聞きしてみた。
「大丈夫?琴音…」
「あはは、まぁね…痛いけど」
「転んだぐらいで足くじくの?」
「わからないわよ、そんなこと。でも、転んだだけだし。それしか考えられない」
…どうやら、琴音さんは足をくじいたようだ。
悪い足の末路だなーとぼんやり思ったが、私が言ったことじゃん。事実になってる!
やったぁと喜ぶのは悪者だろうか…。
ちなみに、琴音さんと話しているのは紫咲 香さん。幼稚園の頃からの親友らしい。
私が琴音さんに直接いじめられたあの日から琴音さんはちょっかいを出してこないが、代わりに香さんがちょっかいを出してくる。
すごい連携プレーだなーとか感心したが、彼女もまた、私の発散の相手になっただけであった。
とか私が考えているうちにも会話は進んでいく。
「これじゃ、体育の時間は休みね」
「…ちょっと嬉しいかも」
「琴音ったら!仮病って思われるわよ?」
「平気。藤沢先生だったらダメかもだけど、狭山先生に言えば、信じてくれるわ」
「ぷっ、そうかも〜!」
…ひどい。
確かに狭山先生は優しいし、生徒の言うことはウソだなんて疑いもしないんだろうけど、狭山先生をそういう風に言うのは許さない!
だからといって何もできないのが私…。
くそう、琴音、香…!
一人で怒っている私は、周りから見るとおかしいかもしれない。
本気で怒っているんだからね!
「どうでもいいけどさ、それってSの言った通りなんでしょ?」
えす?
えすって…Sだよね?
「そうなの…ほんとに訳わかんないんだよね、あいつ」
S…イニシャルだとしたら、私かな。
皐月…SATUKIだし。
琴音さんが急に大きな声を上げる。
「何が悪い足よ! なんなわけ!? あんたのその口も悪い口でしょうが!」
…私だわ。
うるさいな、ほんと。仕掛けてきたのはそっちでしょ?
今度は香が同意するように大きく首を振る。
「そうそう。うざいったらありゃしないわよねー。もっとおとなしい子かと思ってたわ」
そりゃどうも。おとなしいと思っていたあなたは観察の目がありませんね。
あと!動作が大げさなんだよ!
鼻で笑いたくなってきた…。くだらないと思う、心から。
「殴りたくなってくるわよね!」
そう言って笑う香。
怖いよ!殴るって笑って言う単語じゃない!
ていうか、この人達私がいることわかってるわけ?
私と琴音の席って近いんだよ?
試しに、大きく音を立てて席を立ってみる。
案の定、彼女たちはびっくりしてそそくさとその場を立ち去っていきましたとさ。
それはともかく。
私の言った通りになるなんて…。
どう考えてもおかしいと思うんだけど。
偶然? まさか!
誰か私の味方をしてくれている人が…、っていうのも考えにくいことだし。
知らない人ばっかりだもん。
ていうか、入学したばっかりからこれってどうなの?