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お呼ばれしてみたい

今日は久しぶりのお出かけだよ。

そういえばルナ姉に会うのもしばらくぶりだね。

たしかうちで聞茶ならぬ聞シュークリームをして以来かな。

あのときは楽しかったね。

予算の都合上、三種類しか買えなかったけど、俺はひとつも当たらないという快挙を達成したっけ。

見事に三つとも当てたルナ姉は「こんなの簡単」って、ちょっと得意になってたよね。

でもそんなナマイキなことをいいながら鼻の頭にクリームがついていたルナ姉はとっても美味しそうだったよ。

とにかく俺はシュークリーム味のルナ姉のことを思い出しながら、渡された地図のとおりに歩いていったんだ。

几帳面に描いてあってとってもわかりやすかったから、方向音痴な俺でもなんとかたどり着けそうだよ。

しばらくすると、向こうの方に人影が見えてきた。

誰かなと思うまでもなくルナ姉だよ。

ルナ姉に関する世界的権威の俺が見間違えるはずがないもんね。

俺の姿に気づいたのか、ルナ姉はこっちに手を振ってくれたね。

でもね、手を振るならもう少し大きく振ってほしいかな。

そんなに恥ずかしそうにしてたら遠目ではわからなかったよ。

俺が、ルナ姉はここに住んでるのかって思いながら近づいていったら、いきなり走り寄ってきたよね。

そして、「迷わなかった?」とか「ケガはしてない?」とか聞いてくるルナ姉。

いつも必要以上に俺のことを心配してくれるのがルナ姉クオリティだよね。

でも今日に限って「だれにも会わなかった?」なんて聞いてきちゃう。

だれかに会ってたらマズイことでもあるのかな。

俺は笑って受け流すことにするよ。

ルナ姉は少し不満そうにしてたけど、そのまま家の中に案内してくれたね。

この家はルナ姉の匂いがしてる気がするって素直に言ったら、案の定「バカ」って言われたよ。

ここに住んでいるのは自分だけじゃないからそんなわけない、って否定してくるんだ。

でも、ルナ姉に関する世界的権威の俺が嗅ぎ違えるはずがないよね。

俺はルナ姉の匂いだけを嗅ぎ分けることができるんだよって真面目に言ったら、案の定「バカ」って言われたよ。

そんなことをひそひそ話しながらついていくと、ルナ姉はひとつの扉の前で立ち止まった。

どうやらここがルナ姉の部屋みたいだね。

俺がわくわくしていると、扉を開けて「入って」って一言だけ小声で言ってくれたね。

期待に胸を膨らませて入ってみたら、やっぱりルナ姉らしい部屋だったよ。

白と黒を基調にしたシンプルなデザインで、生活感のカケラもないくらい片付いてたんだ。

俺が来る前に全力で整理整頓しちゃったんだね。

せっかく楽しみにしていたルナ姉の私生活をかいま見れなくて、悔しさのあまり必死にあら探しを始める俺。

とりあえずベッドの下を覗き込もうとしたら、あわてたルナ姉に本気で服を引っ張られたよ。

この瞬間に確信したね。

ルナ姉はここにエッチな本を隠しているんだ。

そういうものに理解のある俺はこれ以上詮索しないことにしたよ。

それが本物の紳士ってやつだからね。

俺はルナ姉のほうを向いてほほえみながらうなずいたよ。

するとルナ姉は、けげんそうな顔をして「何かカン違いしてるでしょ」とか言ってくれちゃうんだよね。

俺は、大丈夫って言ったけど、まるで信じてないみたいだったね。

なにか悩んでたみたいだけど、しばらくしたら恥ずかしそうに「笑わない?」とか言い出すんだよ。

俺はその意味がよくわからなかったから、聞きなおしてみた。

そしたら、「絶対に笑わないって約束するんだったら見せてあげる」だって。

そんな愉快な性癖をもってるのかな、なんて考えながら、俺は笑わないって約束したよ。

ルナ姉は「ちょっと待ってて」って言いながら、おもむろに四つんばいになってベッドの下に手を伸ばすんだ。

スカートのくせにこんなことをするなんて、もう挑発としか思えないよね。

ルナ姉の白くてすべすべのふとももを穴が空くほど見つめながら、なんとか理性を保っていたよ。

そして俺がルナ姉のスカートの中を覗き込もうとかがみこんだ瞬間に、「取れた」とか急に言って立ち上がり始めてやんの。

俺は超高速で気をつけの姿勢に戻ったよ。

膝が、パキッ!、とか鳴ったけど気にしない。

ルナ姉はそんな俺に「ん」とか言って、何かふかふかしたものを押し付けてくるわけ。

なんだろうと思って見てみたら、エッチな本じゃなくて、シマウマのぬいぐるみ。

思いがけない物体にキョトンとする俺と、顔を赤くしながらぬいぐるみをぐいぐい押し付けてくるルナ姉。

たっぷり十秒の沈黙のあとで、これは何か聞いてみたら、なぜか早口で「ゆきひこ」だってさ。

べつに名前を聞いたわけじゃないのにね。

俺はだんだん落ち着いてきたから、この謎について改めて考えてみたよ。

たぶんルナ姉は最初からエッチな本なんて隠してなかったんだ。

そうだよね、あの純情で清楚なルナ姉が、アダルト向けの本なんて持ってるわけないもんね。

実際に隠してたのは、ぬいぐるみだったんだ。

そういえば、かわいいものは私には似合わないとか前に言ってたね。

それで恥ずかしくなって、部屋の片付けのときにしまっちゃったのかな。

納得した俺は、ルナ姉からゆきひこを受け取ったよ。

よく見てみると日に焼けたのか色あせているところもあるし、肌触りも見た目ほどふかふかしてなかった。

もしかしたら、ゆきひこはすごく前からルナ姉と一緒にいるのかな。

そう思うとなんとなく妬けてきちゃうよね。

なんだかほのかにルナ姉の匂いもするしさ。

抱いて寝たりとかしてるのかもしれない。

だんだんゆきひこが小憎らしい気がしてきたよ。

だから先制攻撃として、ゆきひこの耳をはむはむしてやったね。

そしたらルナ姉が「ちょっと何するの」とか言って、俺の手からゆきひこをさらっていくわけ。

攻撃って俺が言ったら、「いじめないでよ」ってゆきひこを大切そうに抱きしめるルナ姉。

ずるいよね、俺だってルナ姉に抱擁されたいのに。

すっかりヘソを曲げた俺は腹いせにルナ姉のベッドにダイブしたんだ。

横から「ホコリが舞うからやめて」とか聞こえるけど気にしない。

俺はルナ姉の枕に顔をうずめて深呼吸する。

その枕から素晴らしいほど無機質な洗剤の香りがしたから、俺は失望で泣きそうになったよ。

全然ルナ姉の匂いがしない、って叫んだら、「何考えてるのよ、変態」だってさ。

もうここまできたらヤケだよね。

俺は、ゆきひこばっかりずるいって駄々をこねはじめた。

言葉につまるルナ姉。

俺だって俺だってとか言いながら布団の奥の方へと潜っていく俺。

「ぐちゃぐちゃにしないで」ってあわてて止めるルナ姉。

止められるモンなら止めてみな、とか言い出す俺。

「ほんとにやめてよ」って言って俺にしがみついてやめさせようとするルナ姉。

くねくねとしなやかに動いて抵抗する俺。

それをがんばって抑え込むルナ姉。

そしていよいよベッドから引きずり出される俺。

息を整えながら「もう、いいかげんにしてよ」とか言っちゃうルナ姉。

床にひっくり返された俺の目に見えたのは、いつの間にか机の上に、ぽんと置かれていたゆきひこ。

俺にはそのとき、ゆきひこがこっちをむすっとにらんでいるように見えたよ。

だから俺はゆきひこに向かって渾身のしたり顔をしてやったんだ。

そしたらルナ姉は「頭ぶつけておかしくなっちゃった?」って不思議そうに尋ねてきた。

おかしいどころか、大真面目だよね。

俺とゆきひこの静かな勝負は、これからどんどんヒートアップしていきそうだよ。

もちろん俺の味方になってくれるよね、ルナ姉!

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