storry:5~[謎の声]~
20分後、ようやく鐘が鳴った。それと同時に生徒達は一斉に喋りだし、動き始めた。
少年に話しかける人は誰もいない。
「今日、俺んち来る?」
「明日数学あるじゃんだりぃな~」
「あ!昨日借りたCD、持ってきてるから後で返すね!」
生徒はみな、本やカバンを持って廊下に出始めた。他のクラスの生徒も玄関へと向かっている。廊下が人の声でいっぱいになった。
すると、奥の方から次々に生徒が誰かに挨拶をし始めた。こちらに向かっているのは干物の女…ダズエル先生だ。足音を立てながら歩いてくる。凄い顔だ。挨拶をする生徒には目もくれず、真っ直ぐと少年を見ている。
先生が入口を開けた。と、次の瞬間ダズエルは少年の濡れた髪を掴んだ。手には三層のゴム手袋をつけている。
「痛いっ」
ダズエルはそのまま少年の頭を鷲掴みし、廊下にいる生徒を軽く押しのけて、玄関先にあるさっきの水道場の近くへと引っ張り、少年をその地面に叩きつけた。
「なんて汚らわしい男なのチャーリー・ケイム…!!見なさい、この有り様を!!我が学園の鏡と言える玄関の近くに、よくもまぁ!血なんか垂らしてくれたものね!!見なさい!よ~くご覧なさい!!」
少年はゆっくりと顔を上げ、周りを見ることなく起き上がった。
「今すぐに拭きなさい。そしてそこにある殺菌剤を振りまいてもう一度洗い流しなさい!いい?その後、いつもどおりに学校中の掃除をしなさいね。」
先生はそう言って玄関へと足を運んだ。
少年は水道場にあるさっきのたわしを手に取り
「…しなさい。しなさい。って、馬鹿みたいに連呼しやがるババァだな…」
と、どこからともなくそう言う、男の人の声を聞いた。少年は慌てて
「僕が言ったんじゃありません!」
と、何とか誤解を解こうとしたが無駄だった。
先生はこちらを振り返ってこう言った。
「食事は抜きます。10日間。」
少年は『またか…』と頭を掻いた。これで三度目だ。前は5日間食事抜きだった。今回ばかりはキツい…。
それにしても、一体何だったんだ…さっきの声は…。誰がどこから発しているのだろうか…。
少年は不思議に思っていた。