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フェアリーパレス  作者: 梨奈
第1章:ジェファニー・クリスター
1/7

storry:1~[チャーリー・ケイム]~

ご観覧ありがとうございます!

ゆっくりとご覧ください

そして最後まで見守っていただけると幸いです!!



配達人が家々の玄関先に通達を配る。老婆が人影の少ない道を渡る。ハスキー犬を散歩させながらハンバーガーを食べ歩く男が坂を下る。金髪の女の人が赤い車に乗り、狭い道を通る。・・・・そして事故はおきる。

自転車で角を曲がった配達人は老婆が目の前にいることに気づき、あわてて避けた。が、老婆は驚いて尻餅をついてしまった。それをみた犬を連れた男は急いで駆け寄り老婆に気遣った。すると犬は老婆のかばんの中にあったハム肉をうばった。飼い主はあわてて、逃げようとする犬のリードを引っ張ったが首輪が外れてしまい犬はハムを加えたまま逃走してしまった。仕事場へ行く途中の女性の赤い車が急に飛び出してきた犬を避けるために電柱にぶつかってしまった。女の人は無事だった。


・・・物事には偶然が重なり事故が生じることがある。それには必ず原因がある。だが、どれが原因かがわからない。だから「偶然」の一言ですましてしまう。









学校中に鐘が響き渡った。昼休みだ。

広い土地に木造の校舎が2つ並んでいて、その右側の建物から人が次々と外に流れ出た。

色は違うが、皆同じデザインの制服を身にまとっている。


空は灰色がかった青。けして良い天気だとは言えないが、その下では生徒達がボールを蹴ったり、縄跳びや鉄棒の練習をしていたり、木に登って遊んでいたりと皆思い思いに遊んでいる。実に楽しそうだ。


その生徒達の賑やかな声はまるでこの濁った空を晴れやかにしているように思える。


そんな中、ひときわデカく甲高い女性の声が広いグランドに響き渡った。

「チャーリー・ケイム!!」

校舎の方から聞こえた。

ボールを追いかけていた男の子達はゲームをやめ、声のする方を見た。

そこには紫のワンピースを羽織った、魚の干物が立っている。


「…なんだ…もう10分経ったのか…」

そうつぶやいて、干物の方へ素っ気なく歩く一人の少年の顔には、複数のすり傷や紫色のアザが残っていた。

そして右手首には黄ばんだ包帯がかなりキツく巻かれている。





「時間よ。チャーリー。早く部屋へお戻りなさい。」

少年との距離がある程度に縮まった時、干物が落ち着いた口調で言った。が、顔にはどう見ても「怒り」と書いてある。前に重ねた手も握りしめたり、交互に重ね変えたりしている。



少年はそれに動じることはなかった。これこそ落ち着いている。実に妙な光景だ。



干物の女性は先生だ。

背が高く、痩せてガリガリになったその体は水分不足のワカメのような長い黒髪を背負って立っていた。



少年は無言のまま、当たり前のように自分の部屋がある寮へと向かった。

寮は校舎と同じ土地にあり、学校の裏側にひっそりとたたずんでいた。薄暗くカビ臭いその寮はコンクリート製の小さな二階建ての建物だ。とにかく汚い。


その寮に寝泊まりしているのは、今寮へと向かっているその少年だけだった。



遊びは中断された。

さっきまで少年と遊んでいた男の子達はゲームを再開している。まるで何事もなかったかのごとく。



「遊びは10分間だけだと何回言えば分かるのですか。昼休み終了後まで寮に居なさい。いいですね」


先生は寮の入口から10m離れたところで少年に言った。少年はまた無言で自分の部屋がある二階へと足を運んだ。




学校の昼休みはなぜか二時間もあった。昼休み終了後は掃除があり、一時間授業がある。その後他の生徒は下校となる。

少年だけは違ったが。



少年の部屋には木製の机と椅子、ベッドには白い枕がおいてあった。

たった1つの窓からあの先生がこちら側に背を向けて校舎へと歩いているのが見える。


静かだ。


少年はベッドに横たわった。外からあの賑やかな声がかすかに聞こえる。


「もう少しでシュートを決められたのに」


そうつぶやいた少年はコンクリートの天井をなんとなく眺めていたが、

しばらくして、いつの間にか眠りについた。



数時間後少年が目を覚ました。寝過ごしたと思ってベッドから起き上がり扉をあけると、そこにはコンクリート剥き出しでホコリまみれの階段はなかった。


芝生があった。果てしなく広い土地には緑色のじゅうたんが敷かれてあり、天井は真っ青な空。その少し遠いところに白い建物がそびえており、その後ろには美しい湖と綺麗な山が腰をおろしていた。


少年はなぜか驚きより嬉しさがわいていた。

「走れる!」


カゴの中の鳥が一気に大空に舞うように、いや。檻から脱走した猿が両手足を使って踊りでるかのように、少年は思いっきりその緑色のじゅうたんに足を踏み入れた。少年は本当に嬉しく感じていた。


と、次の瞬間、耳にキーンと響くあの声が空間いっぱいに

「チャーリー・ケイム!!」

・・聞こえた。




ハッと気づいた少年は自分がベッドの上にいることを知った。夢だった。


そっと窓を見てみると、干物の先生がさっきの10m先のほうで静かに、でも確かに怒って立っていた。


声は続く。

「昼休みは終わりましたよっ!!早くでてらっしゃい!!」

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