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(8)巡る櫛

四日目

朝、オレたちはまたも叡電に乗って修学院の千丘寺に向かっていた。


この三日間、オレたちが行ったのは、御所、河合神社、そして千丘寺の3か所だ。

このうち、礼子さんに櫛を渡せたことで河合神社で次のイベントが起きる可能性は低い。その櫛を持った礼子さんが向かったのは御所だけど、ここは千姫に出会うという一番大きなイベントが発生したところだから、次のイベントはしばらくないのではないか。そうなると、初めて行ったときにババ様が出て来たのに、2回目の時はそんなババ様のことは知らぬというじー様が出てきた千丘寺が次なるイベント発生の可能性が最も高いのではないか、というのが、昨日一晩、今回の出来事を整理したハナちゃんの結論だった。


そんなわけで今日も朝から千丘寺に向かっているのだ。


アパートを出る前、今日もあっちこっち行ったりするかもしれないから、オレのような現代風の服装にしてみるかと正孝と源太に聞いてみたところ、動きやすさや涼しさを考えれば、オレの着ているものの方が勝っているとは思うが、侍たるもの、この出で立ち以外で表は歩けない、と固辞された。現代に来て、見るもの食べるものに大騒ぎしてはしゃぐ彼らも好きだが、オレは、この侍然とした彼らの考えというのか、頑固さというのか、アイデンティティというのか、とにかく、こんな彼らが好きだった。


車中では、もう正孝も源太も騒ぎはなしなかった。代わりにハナちゃんが彼女なりの昨夜の謎解き成果を披露してくれた。

「二日目に千丘寺に行ったときに出てきたババ様から、千早ちゃんが櫛をもらったんだけど、ババ様が言うには、礼子様亡き後、帝の失意ぶりが激しいので夫の安倍有世さんが形見の櫛を娘の代わりにと渡した。いつか返してもらおうと思っていたけど、そのまま千丘寺に保管されることとなり、それが一昨日千早ちゃんの手に渡ったと。ここまではいい?」

頷く一同。

「そして昨日、三日目。千早ちゃんが櫛をもらったのだから、これで元の時代に戻ればいいんだけど、元の時代には帝のところに櫛があるはずだから、このままでは戻れないのではないか、という疑問があったので、また千丘寺を訪ねた。でも出てきたのはババ様ではなく男の和尚様」

「うんうん」

「しかも櫛のことや寺伝のことなど知らないという…これが引っかかってたの」

「というと?」

「たぶんあの和尚さんが千丘寺の本当の住職だと思うの。そして二日目までは櫛も千丘寺にあったので、あの和尚さんも寺伝と寺宝のことは知っていたはず。ところが二日目に出てきたババ様は玉依姫命、つまり神様で、その神様が千丘寺の櫛を千早ちゃんに授けてしまった。なのでその瞬間に、千丘寺から寺宝がなくなり、寺伝もなくなった。つまり歴史が変わって、最初から櫛のない千丘寺になってしまったので三日目の和尚さんは何も知らない、ってなったんじゃないかしら?」

「なるほど。その推理に異論はない。でもさ、その和尚さんの後に河合神社に行ったとき、ババ様は二日目に千姫に櫛を渡したことをカラスから聞いた、と言ったよな? それってどういうことだ?」

オレが聞いてみる。


「それはねぇ…わからなかった! 確かに私たちには千丘寺であったババ様も、昨日河合神社であったババ様も同一人物に見えたけど、何か違うのかもね。それが何か、今は私にもわからない」

源太以外は、うんうんと頷いている。源太は眉間に深いしわを寄せ、何やら二日目のババ様、三日目のババ様と呟いている。

「源太には後で某が説明します故、続けてくだされハナ殿」

とは正孝。だいぶ前のめりになって話を聞いている。


「そして和尚さんに会った後で河合神社に行ったらババ様である玉依姫命が登場し、櫛を礼子様に渡してくれと言う。櫛はその時千早ちゃんが持っていたのだけど、そのままでは千早ちゃんが来た時代に戻れないから、まずは櫛のない時代、つまり礼子様が生きているときに戻って、礼子様に渡せ、と」

ふんふん。


「そして、私たちは現代に戻ってきたけど、一年さんと千早ちゃんはどこか違う時代に行ってしまった、というのが昨日までの展開」

「なるほど。すると、今日千丘寺に行くと、何が起こるのでしょうか?」

正孝が聞くと、

「それ! まさにそれなのよ! 二日目は寺伝も寺宝もあった千丘寺。でも櫛をきっかけに三日目には寺伝も寺宝もない千丘寺になってしまった。だから四日目の今日行っても何もないでしょう、と思うんだけど、私の推理では違う結果が待ってると思うの!」

「違う結果?」

「千早ちゃんと一年さん! 千丘寺に寺伝も寺宝もないというのは昨日も今日も同じだけど、昨日は千早ちゃんと一年さんがいた。でも今日はいない。つまり二人が元の時代に戻ったことが、今日の千丘寺をどう変えているか、それを確かめたいの!」


ハナちゃんの力説が終わった。なるほど、確かに辻褄はあってる。すると正孝が、うーんと唸り、一言。

「お館様が、一年の嫁に、というわけです。ハナ殿は利発な人ですな」

そう言われて、こういう謎解きが好きなだけよ、とハナちゃんは言った。


さて、3日連続での千丘寺。今日はどんなことが起こるだろうか。


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