表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦の舞  作者: 闇の獣性
13/26

第13章 — 悪役の策略(あくやくのさくりゃく)

“青の裂隙クラブ”は、生きた肉体のように脈打っていた。

光、色、そして暴力。

低音のビートが金属の壁を震わせ、

空気にはオゾンとアドレナリンの匂いが混じっていた。


二重のプラットフォームが黒い奈落の上に浮かび、

リズムに合わせて動く可動橋だけが、それらを繋いでいた。


中央のステージには、蛍光の血で描かれた紋章が光っていた。

──レンの印。

“沈黙の振付師コレオグラファー”の象徴。


カイト、サトウ、そして“ヴォーゼ・ギャング”の八人は

入口で立ち止まり、その光景を見つめた。


周囲の群衆は狂喜の熱気に包まれ、

電子掲示板にはすでに賭け率が表示されていた。


> 特別対戦 ― ヴォーゼ・ギャング vs 青の裂隙クラブ

オッズ:カイト側に対して 3対1




ダンテがライトを見上げて口笛を吹いた。

「ずいぶん俺たちが負ける方に賭けてやがるな、ボス。」


リョウが手袋を締めながら応える。

「上等。全部スッて泣かせてやろうぜ。」


だが、サトウの視線は血の印から離れなかった。

「……これは挑発じゃない。」

低く言う。

「戦争の宣言だ。レンはこのアリーナのスポンサーになった。

 トーナメント前にお前を削り取るつもりだ。」


カイトは冷たい緑のイヤリングに触れ、指先でなぞった。

「……なら、削られた後に何が残るか見せてやる。」


スピーカーが告げる。

「対戦開始まで──90秒。」


対岸のプラットフォームに、

敵チームが姿を現した。


青の裂隙クラブの五人のダンサー兵。

その中央に立つ女──

銀髪、ガラスのような瞳。

“鏡の女王レイン・オブ・リフレクション”と呼ばれるリラ。


短い衝撃バトンを二本。

身体には導電素材のスーツ。

動くたび、電流が走るように光る。


リラは唇に笑みを浮かべた。

「あなたが“ヴォーゼ”の少年ね。」

音響システムを通して響く声。

「あなたの踊りの噂、聞いてるわ。」


カイトは何も言わなかった。

ただ足を構え、呼吸を整える。


リラは続けた。

「ねぇ、レンがあなたについて何て言ってたか知ってる?」

わずかに前のめりになり、瞳を光らせる。

「“彼は火花。美しいけど──短命だ。”」


ミカが歯を食いしばった。

「……その笑顔、すぐ消してやる。」


サトウが手を上げた。

「集中しろ。挑発は無視だ。」

「覚えておけ、“落下”が敗北だ。」

そしてカイトを見る。

「お前がリズムを導け。」


照明が落ちた。

観客の声が遠のく。

ただ、ビートだけが残った。

低く、重く、脅迫のように。


──開始。


プラットフォームが震え、

最初に動いたのはリラだった。


バトンが閃光を描く。

衝撃で床のセンサーが青く光り、

支配領域を示す。


彼女の動きは、まるで“鏡”だった。

相手の動きをそのまま反射し、

そのまま攻撃へと転化する。


“鏡の女王”──その名の通り。


カイトは即座に理解した。

“模倣”で戦うタイプ。

相手のリズムを奪い、

その技を反転して返す。


「リズムを反転する。」

カイトが通信機で囁く。

逆拍カウンタービートに合わせろ。」


全員が瞬時に同期。

ビートが戦場になる。


カイトが先に飛び出す。

ブレイクダンスと柔術を混ぜた回転。

リラは即座に模倣──それが罠。


その瞬間、左側からミカの

非致死性ショックディスクが飛んだ。


直撃。

リラが二歩、後退。

カイトが前進。

踏み込み。押し。


──落下寸前。


だが彼女は速い。

バトンを床に突き、

ぎりぎりで体勢を戻す。


笑う。

銀髪がネオンを弾く。


今度は反撃。

閃光のような攻撃。


戦いが“多層の舞踏”へと変わる。


ダンテが突進し、

リョウと双子が側面を封鎖。

ミカはサウンドと風のリズムを制御する。


青の裂隙のメンバーも負けていない。

五人が一糸乱れぬ動きで応戦。

一撃ごとが音楽の一部。

防御もまた、美の一部。


観客が爆発するように叫ぶ。


高台からサトウが見下ろす。

心臓が早鐘のように打つ。


彼は気づいた。

リラの動きは──彼女自身のものではない。


あの回転。

あの角度。

一拍ごとの間。


それは──レンの技だった。


「カイト!あれはレンのステップだ!」

通信に叫ぶ。


カイトは悟った。

この戦いはリラとの勝負じゃない。

レンからの“伝言”だ。


──「俺は姿を見せずとも、お前と踊れる。」


挑発。

冷酷な支配。


胸の奥で、歪みが唸った。

血が熱を帯びる。

イヤリングが脈を打つ。


だが彼は制御した。

深呼吸。

橙の炎のような眼差し。


「……俺の影と踊りたいってか?」

小さく呟く。

「上等だ。」


カイトはリズムを崩した。

音楽の拍を外し、

バラバラな動きを始める。

不規則なダンス。

予測不能な拍。


リラが追う──が、追いつけない。


タイミングがずれた。

カイトが回転し、肩で押す。

リラのバランスが崩れる。

交差したバトンが音を立て、

その身体が宙を舞った。


──落下。


観客が凍りつく。

数秒の静寂。

そして、爆発。


> 勝者:ヴォーゼ・ギャング




リラは衝撃吸収の奈落に落ち、

荒い息を吐きながら笑った。


引き上げられる直前、

彼女はカイトを見上げ、囁く。


「……本物の彼が来るわ、ヴォーゼ。」


カイトは黙って見送った。

プラットフォームが中央に戻る。

システムが表示する。


> 報酬:青の裂隙クラブの領地 ─ 獲得。




ミカが笑う。

「地図にまた一つ、光が増えたね。」


だがサトウは表情を変えなかった。

「……これは勝利じゃない。警告だ。」


カイトは足元を見る。

蛍光の血に濡れたレンの紋章が、

まだ消えずに光っていた。


理解した。

サトウの言葉の意味を。


──レンは全てを仕組んでいる。


戦いも。

勝利も。

一歩一歩のダンスさえも。


カイトは、

敵の振り付けの中を踊らされていた。



---


次の章へ続く:


数時間後。

仲間たちが眠る倉庫の壁に、

再びあの印が現れた。


蛍光の血で描かれたレンの紋章。


そして、その下には新たな言葉。


> 「第二の落下だいにのらっかの時だ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ