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「起きて下さい!ジュリエッタ様!!!」


自分の専属の侍女であるキャシーではなく、

侍女長であるマチルダにたたき起こされる。


私は一度寝てしまうと、深い眠りについて、

なかなか起きないタイプなので、

相当強引に起こしたのだろう。


顔からは、焦りと申し訳なささで、

苦渋の表情を浮かべている。


皇城の侍女は教育が行き届いていて、

めったな事で表情を表す事はない。


そのトップである侍女長となれば、

よほどの事と簡単に分かる。


「どうしたの?」


私は簡潔に聞く。


「レオナルド様に呪いが!」


私はベッドを飛び降りて、皇城の廊下を走る。

途中侍女がガウンを手渡してくれ、

なんとか羽織るが、それももどかし程だ。


「レオナルド様!」


私は、レオナルド様の部屋に飛び込み叫ぶ。


神官などが、何とか呪いを抑えているようだが、

レオナルド様は苦しそうな声を上げ、

何とか意識を保っている状態のようだ。


私は迷わず駆け寄り、口づけをする。


そのまま呪いを移す。


今回は呪いの種類を見極める余裕がなかった。


自分に呪いを移してから、

落ち着けと言い聞かせて、呪いの種類を見極める。


やっかいだな。


呪いの種類は13種類。


その全てを知っているし、解析方法も習得している。


この呪いは確かに13種類の1つだ。

ただし、一部オリジナルが加えられており、

既存の解析方法では対応できない。


ダイヤル式の金庫を開けるような気分で、

取りあえず思いつくままに術式を入れてみる。


そうしているうちにも、痛みが体中を襲い、

意識が朦朧としてくる。


気を失ったら、間違いなく死ぬだろう。


痛みと、術式が当てはまらない焦り。


間違いなく時間との勝負だ。



これ、あれ、それ、ああならこれは・・・



カチン



自分の中で弾ける音がして、そのまま体の力が抜けた。



解除・・・できた・・・・・



「大丈夫か!?」


ようやく、レオナルド様の声が耳に入る。


「はあ、やばかったですね」


嘘でも大丈夫とは言いたくなかったので、

ストレートに本音を言う。


このまま何度も死にかけたらたまらない。


「呪いの元の心当たりは?」


「恐らく兄だと思い」


レオナルド様が苦しそうな顔で言った。


確か今、皇帝が病でふせっていたはずだ、

という事は次期皇帝の座を巡る、権力争いか。


「兄には、皇帝の座はいらないと伝えてある、

 それでも心配なのだろうか・・・」


兄が弟の意志を汲んでいたとしても、

側近や支持者が手を回している可能性もある。


もうしばらく安心はできそうにないのか。


「で、その恰好」


そう言えば・・・と自分の姿を思い返す。


昔は色気のないパジャマとか、

普段着そのままで寝ていたが、


皇城では、ひらひらのネグリジェが用意されていて、

特に問題もないので、それを使わせてもらっている。


男性から見ると、かなりセクシーなアレだ。


それにガウンを大雑把に羽織っただけ、

その姿で、レオナルド様の上に馬乗りになっている。



・・・でも、治療行為だったしね。


これできゃーとか言う、可愛らしさは私にはない。


むしろ、レオナルド様の方が、真っ赤な顔で狼狽えている。



少し魔が差した



「私、セクシー?」


敢えて笑顔を作って、レオナルド様に迫ってみる。


「ジュ・・・・ジュリエッタ!」


と私を抱きしめようとするレオナルド様を、

ひょいと避ける。



やっぱ男って単純よね~



「部屋に戻るわ」


控えていた侍女に告げる。


レオナルド様はベッドに突っ伏したままだった。




部屋に戻ると、マチルダが神妙な顔で私の前に来た。


「いかようにも処分をお受けします」


「処分?」


はて?何か処分が必要な事があった?


「寝ていらしたジュリエッタ様を強引に起こしてしまいました」


うーん、しかしそれは事情があったのだし・・・


「別にいいわよ、緊急事態だった訳だし」


「それでは示しがつきません」


示しねぇ


「こうゆう時は、だいたいどんな罰なの?」


「減給4ヵ月が妥当かと」


うーんそっか。


「じゃあ、減給2か月と、

 料理長に贈り物をしたかったの、

 料理長は舌も肥えているはずだから、

 何がいいか調べてきて、それでいいわ」


マチルダは驚いていたようだった。


「料理長に贈り物ですか?」


「そう、私がお菓子が好きな事を知って、

 飽きないように、いろいろ作ってくれているの、

 そのお礼をしたかったのよ」


「それは・・・当然の事では」


「私の気持ちの問題ね、

 嬉しかった、だから贈り物がしたい、と言う」


マチルダはどこか呆然としながら、


「ジュリエッタ様は、天使か女神のようですね」


そんな大袈裟なと思う。


「残念ながら羽は生えていないわ」


マチルダはくすりと笑って。


「料理長から欲しい物を聞いてきます」


「よろしくね」


「それと、レオナルド様・・・あまりに哀れでは・・・・」


「なぜ?」


私が心底、不思議そうにしているのを見て、

マチルダは溜息をついたのだった。

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