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「結婚して」


「お断りします」


「うん」


もう何度となく同じやり取りをして、

にこにこと微笑んでいる第二皇子を見る。


第二皇子を助けてから、

皇城の一室が与えられ、自由に過ごしていいと言われた。


そこで、私は前仕事していた、

作物の生育予測や、天体観測を続けている。


ある晴れた日、夕方から雨が降るかもしれませんよと、

侍女にアドバイスをして、実際に雨が降ってから、

侍女の間でも私の人気は高いそうだ。


おかげで、最初に食べたお菓子が、

望んだ時にいくらでも食べられ、今の生活を満喫してた。


もちろん、ベッドのマットも、

私好みに調整してもらい、ふわふわだけど、

寝心地はいいという、最高の環境である。




ただ、困った事と言えば、

第二皇子が事ある事に、求婚してくるようになった。


一応伯爵令嬢とはいえ、ハリボテ令嬢、

ほんの数日前までは平民だったのだ。


そうそう皇族としてやっていけるとは思えないし、

部屋にこもって数字の分析をしている方が私には会っている。


社交とか、正直めんどうくさい。




「飽きないですね」


何度も求婚する第二皇子に告げる。


「ああ、嫌がれてないのは分かっているからね」


その言葉にぐっとなる。


いろいろ言い訳をして、自分の心を抑えてはいるが、

正直第二皇子の事は嫌いではない。


むしろ、優秀で努力を怠らず、外見もいい。


最初絵師さんが、かっこよく描いていると思った事を、

絵師さんにお詫びしたいぐらい、

むしろ絵よりも、実物の方がかっこいいぐらいなのだ。




いやいやダメダメ。




今日も、無理やり心にブレーキをかける。


「もうキスもした仲だし」


「あれは呪いを移す為です。ノーカウント」


私はばっさりと切って捨てる。


それを第二皇子は楽しそうに見ていた。




「やっぱり、貴女は素敵だ」


「どうしてそうなるのです?」


「自分の事が自分で決められる。

 貴族社会にあって、それってなかなか難し事なんだよ」


そう言われて、そうかも?と思う。


私はけっこう上司の指示のまま流されてきた感じもあるので、

いまいちピンとこないが。


「色目を使って、すり寄るでもない、

 しかし、誰よりも魅力を放っている」


そう言われて、髪に口づけされる。



髪に感触はないはずなのに、

かあっと顔が赤くなる。


私こうゆうの慣れてないのよ~



「絶対落とすから」


あれだけ断っているのに、

どこからその自信が来るのか・・・


しかし、そう言われて、どこか嬉しい自分もいて、

自分の心を持て余していた。






そうして、数日経ったとき。


雲の動きを観察しようとテラスに出る。


華やかな庭園ではなく、

低い針葉樹が植えられたテラスは人も少なく、

息抜きにはぴったりだ。


テラスにはテーブルと椅子が用意され、

お菓子も用意される。


料理長は私が褒めたのがよほど嬉しかったらしく、

私が好きな果物を教えて欲しいと言ってきて、

いくつか教えると、

その果物を使ったいろんなお菓子を作ってくれるようになった。


おかげで、お菓子に飽きる事なく、

料理長には今度何か贈り物をしようかと考えている。




そうして雲を見ている時だった。


「そこの美しいお嬢さん」


はて、美しい?とは思ったが、

周りに女性は私しかいなので、返答する。


「私の事でしょうか?」


「ええそうです」


きっちりしたスーツに身を纏い、

軽い口調で語りかけるも、軽薄な感じはない。


よほど社交をこなしているのか・・・


皇城にいるとなると、上級貴族である可能性が高い。


下手な事は言えない。


対、領主で鍛えた、外ずらの笑顔で対応する。


「私はデズモンド・ファイルと申します」


「まあ、デズモンド様」


「ご存じでいらっしゃいましたか?」


「ええ」


侯爵の身分で、広い領地を持つ有能な人間だ、

そんなに女性関係が派手という噂も聞かない。


独身女性なら、優良物件と飛びつく男性だろう。


「それで、どうなされました?」


私が、普通に対応したので、どこかびっくりしたようだ。

多分、普段キャーキャー言われているので、

私の対応が新鮮だったのだろう。


「お名前をお聞きしても?」


「ジュリエッタ・ディールスと申します」


「ジュリエッタ嬢、今度二人っきりでお話など

 時間を頂けませんが?

 お好きなら観劇や美術館など、

 どこでもご案内しますよ」



おお・・・まさかのナンパ。


第二皇子といい、今人生最大のモテ期がやってきてるのか?


うーん、逃すにはもったいないいい男かな?

そう考えていた時だった、バタバタと音がして。


「ジュリエッタ!」


と名前を呼ぶ声がした。

驚いてそちらを向くと、第二皇子のレオナルドだ。


デズモンドも慌てて礼を取る。


「どうしてここへ?」


ちらりと侍女を見ると、にっこりと笑われた。


恐らく侍女の電光石火の伝言ゲームで、

レオナルドに伝えられたに違いない。


レオナルドは、私をぐいっと抱くと、

いきなり口づける。


そして、しばらくした後、口を離して。


「こうゆう訳だ、彼女は貴殿と2人では出かけない」


と勝手に断ってしまった。


えー


私は声にはならず、口をぱくぱくさせる。


デズモンドは貴族らしい笑みを浮かべ、

お二人の幸せをお祈りしておりますと告げ、

去って行ってしまった。


「ああ・・・もったいない」


その言葉にレオナルド様が反応する。


「ああいう男が好みか?」


「判断できる程デズモンド様の事は知りませんが、

 まあ、女性に人気があるのは分かる気がします」


そう言うと。


「なぜデズモンドは名前で呼ぶんだ!」


と叫ばれてしまった。


そう言えば、レオナルド様の事は第二皇子

としか呼んでいない。


「それが正式な敬称ですし・・・」


そう言うと、拗ねた子供みたいな顔になる。


「名前で呼んで」


「とは言われても、と言うかさっきキスしましたね」


少し責めるかのような視線を向ける。


すると、当然というように受け止めて、


「誰にも渡さない」


と宣言されてしまった。


「で、名前」


がっしりと肩を掴まれ、言うまで離してくれそうにない。


「言わないなら、首筋とか、あちらこちらに

 キスマークを付けて・・・」


その言葉を聞いて、本当に実行しそうだったので、

慌てて言う。


「レオナルド様!」


そう言うと、本当に嬉しそうに、

心からのほころんだ笑顔が目に飛び込んで来た。


名前呼んだだけなのに・・・


心臓がどきどき言う。


そんな私をぎゅっとレオナルド様が抱きしめ、

私は仕方ないなと、身を任せた。

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