表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/14

1

「ファビリア、ちょっといいか」


上司のハンスに声をかけられ、書類から顔を離す。


秘数術の計算は複雑だ、

また計算やり直しかなと、少し恨めしそうな顔で、

ハンスの方を振り返る。


「なんですか、ロウソクはちゃんと節約・・・」


そう言いかけて、顔が引きつる。


ハンスの手には、お酒と二つのコップ。


やばい・・・これやばいヤツだ・・・・


過去の経験から、それを悟る。


ハンスは無理難題の(本人が嫌がりそうな)指示を出す時、

必ず酒を持って現れる。


さて、今回は何を言われるのやら・・・




過去、自慢話が大好きな領主の元に行かされ、

さんざん話に付き合わされたり、


絶壁の崖の貴重な花の採取を命じられた事を思い出す。



あああ・・・どちらも思い出したくない。



ハンスの指示は、あくまで指示であって、

命令ではないし、絶対でもない。


それでも、仕方ないと思わせる力がハンスにはあったし、

だからこそ、この個性的な人間が揃う、

魔術機関で官長なんてしてられるのだろう。


個人的にさほどお世話になった覚えもないが、

(むしろ難題を解決して貢献している)

どことなく、私が魅力に感じる報酬を提示して、

口先三寸でまるめこんでしまうのだ。




今回もそうだろうな、と「はあ」と諦め的に溜息をつく。


「で、何ですか」


どうせ断る事はないだろうと、注がれたお酒を口に含む。


そして、おや?と思った。


お酒はさほど詳しくはないが、

領主との交流などでは、そこそこいいお酒が出される。


普段は当然安物のお酒なので、

ある程度の違いは分かるようになっていた。


そして、この舌ざわり・・・


ハンスが言葉を続けるまでに重ねる。


「このお酒って!」


慌てていう私に、ハンスがにやりと笑う。


「流石だな、分かるか・・・63年物だ」


その言葉にうっかりコップを落としそうになり、

あわててコップを握りしめた。


63年物?それってプレミアがついて、

貴族がこぞってオークションで落札しようとする、

一級品のお酒では?


「こんな物どこで・・・」


「皇帝にもらった」


はあ?確かに皇帝なら、この貴重なお酒も手に入るかもしれない、

しかし、それをここで開けるか?


しかもそれを私に飲ますって・・・


貴重なお酒を飲めた嬉しさより、

これから提示される仕事に背筋がぞっとなる。


これ、相当やっかい事では?


ハンスは笑っているようで、

目が笑っていない事に気づく、


一気にお酒をあおり、ハンスに聞く。


「で、今回の要件は」


「第二皇子の代わりに死んで欲しい」


やはり、ろくでもない要件だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ