第五話
少し投稿期間が開いてしまいました。
楽しんで頂けたら幸いです。
やあ、皆さんこんにちは。
マサヒト・ユリウス・ペーネミュンデ・フォン・アイガーです。
え~~皆さん。
いつの間にか三歳になってました。
寝て起きて遊んでいたら立てるようになってて言葉を話せるようになってました。
子供の身体の時間感覚が未だに分からないんだよ……!
許してくれよぉ……!
ま、まあ……ある程度会話が出来るようになってきたので、周りにいる人達にいろいろ聞いてみました。
『あれはなに?』『これはなに?』と知らないこと、気になる物に対して手当たり次第聞きまくりました。
部屋の中にある調度品、おもちゃ、本に出てくる動物、外にある植物や虫、食べ物に飲み物。
子供のように何でも聞いていきました。
……まあ子供なんですけどね。
聞いていくうちに分かってきたのは、前世と似通った部分が多々あると言うことです。
外に生えている植物は、改めて見てみたらやはり前世の世界とほぼ同じものでした。
サクラも前世でよく見た桜だったので感動しましたね!
虫も蝶やテントウ虫、ミミズにハエ、蚊やダンゴムシやバッタなどの前世で見たことある物ばかりでした。
おもちゃは積み木やぬいぐるみなど前世のゲーム機なんてものは影も形ありません。
無いなりに楽しく遊んで居るのでこれといった不満はありません。お絵かきとかもできます。
本はもちろん絵本ですが、侍女に読み聞かせてもらいましたが、前世で読んだことがある物に似ている物や、全く聞いたことの無い内容もありました。出てくる動物やら人やらは、ドラゴンや吸血鬼にオークに狼男、エルフにドワーフなど前世の幼少期に読んだ絵本には出てこない種族ばかりでした。
どこまでが現実にいる種族なのかは分かりませんが、ファンタジー色の強い物でした。
桃太郎っぽい話しなのに出てくる登場人物は、キジもサルも犬も変わっており、グリフォン・エルフ・人狼になってました。鬼は何故か鬼のままでしたが、もう普通に戦っても勝てそうなメンツだったので違和感がすごかったです。
離乳食から脱して固形物を食べられるようになってからは、前世の食事内容と大きく違い最初は大分戸惑いました。
前世はただの庶民家庭だったので、出てくる料理が豪華で量も多いので食べきれないし、毒味が毎回行われるので料理が微妙に冷めているため味は美味しいけど……うん、なんか嫌だ。
料理の内容は驚くことに和洋の料理が出てきました。
朝食が和食っぽいが出てきて、昼食と夕食が洋風っぽいのが出て来る割合が多い気がします。
お米も出てきたので前世日本人としてはとても嬉しかったです。
歩けるようになって部屋に置いてある物を近くで見たり触ったりできるようになって分かったんですが、アンティークのようなデザインの調度品ばかりで、見るからに高額そうな物ばかりで前世との生活環境のギャップを改めて感じています。しかも優美かつ実用性まで備わっているので子供の身でもある程度使い方が分かってしまう優れものです。
しかし照明の類いは前世とは違いました。
ロウソクなどの類いでは無く、天井から吊されているシャンデリアには宝石のような小さな石がはめ込まれており、夕方頃になると侍女か乳母がそれをつける。
最初は電球かと思ったが明らかに前世のそれとは違う形状をしていました。
気になったのでエルフの侍女に聞いてみると、『魔法石』という鉱物を使っているらしい。
遂に魔法という言葉が出て来ましたねぇ!
詳しく聞いてみたのですが、侍女も仕組みは詳しく知らないようで、なんか光る、程度の認識だそうです。
まあ、前世でも動かし方は分かるけど、何で動いているのか分からないなんて物もありましたし……
まあ、いろいろと満喫しています。
しかし皇族なのでただ遊んでいるわけにはいきません。
数は少ないですが教育も始まりました。
数字の数え方が中心の簡単なものばかりで、宮廷マナーとか式典での立ち振る舞い方などはまだやっていませんがいずれやるのでしょう。文字などの勉強もまだです。
「マサヒト様、今日は絵本を読んでお勉強をいたしましょうねぇ」
おや、もう勉強の時間みたいですね。しかも絵本ですよ、まあ読むのは私ではないんですけどね。
では皆さん、続きはまた今度。
「マサヒト殿下のご様子はどうだ?」
「はい、幼いながらも文字や数字の飲み込みがとても早いようで」
部下からの報告に耳を傾けながら目の前の書類を処理していく。
数字も覚えれる。文字も読めるようになるだろう。三歳にしては確かに優秀だ。
「癇癪などは起こされたか?」
「いえ、そのようなことは無いそうです」
「そうか……他は?好きな食べ物や女の好み、苦手な物にお気に入りの遊びは?」
私の質問に少し引きながらも、部下は一つ一つ答えていく。
「好んでお食べになられるのは、米料理だそうで」
「米か……アベルト殿下は米よりもパンの方が好みだったな」
「女性の好みは……まだ早すぎるかと……」
「成熟してるかもしれんだろう、分かったら報告するように」
「承知しました、苦手な物は食べ物でしたは野菜のトマトやナスなどは苦手なようです」
「トマトにナス、後はピーマンとかか?」
「はい、まだ三歳ですので成長していけば克服できるかと」
一度、手を止めて部下に目を向ける。
ビクンッ、そう肩を震わせた。優秀だが少々臆病なのはいつまでたっても変わらない。
「いいか?アベルト殿下もマサヒト殿下もいずれこの栄えある帝国を背負って立つ御方であり、我々が身命をもって支えなければならない。何かあってからでは遅いのだ、何か起こる前にその原因を突き止め排除するのも仕事だ。それは理解しているな?」
「は、はい……しております……」
ふむ、それは理解しているようだ。
ならば……
「ならばやる事はわかるな?」
「は……苦手な物を食べれるように工夫する。でしょうか?」
「そうだ、手段は問わん。貴様がやれ」
「し、しかし私は料理の専門家では……」
優秀だが頭が固い。
「それがどうした?」
「は……?」
「料理の専門家ではないから職務を放棄するのか?貴様の頭に詰まっている脳みそはただの重しか?料理人に聞いたり、野菜の知識本を読んだり、殿下たちの御付きにもっと詳しく聞き食べれそうな状態があるか無いかの確認……いろいろできると思うが?」
私の質問にみるみるうちに顔が青くなっていく。最近の若い官僚は常識と縦割りの組織形態に少々縛られすぎだ。もっと柔軟に考え行動すべきだ。
我々にはそれを行える力と責務がある。
「ただちに取り掛かりますっ……!」
「進捗があり次第報告するように」
一礼してから執務室を出て行った。
発破をかければやる気が出るのはいいことだ。
一人になったことで静寂が広がる。
まぁ、ドアの向こうは相変わらず落ち着きがないが……
「さて……」
引き出しから資料を取り出す。
相変わらず分厚い資料だ。個々から選別して、マサヒト殿下の好みに合わせて、更にマサヒト殿下のお眼鏡に引っかかるのをどう探し当てるか。
「平民も貴族も関係なしか……」
アベルト殿下は、皇妃陛下がゴリ押ししそうになったが、何とか決まりうまくいっている。
しかしマサヒト殿下はどうだ?
皇后陛下の第一子。
血統を見れば皇太子に近いのはマサヒト殿下だろう。
アベルト殿下は兄であるが、それを差し引いても、マサヒト殿下の方が近い。
だからこんなにも送ってくる。
「アベルト殿下と比べて、ざっとニ倍か……」
男の従者一人決めるのにもこの量だ。
これが女の従者や専属使用人などであったらもっと増えていた事だろう。いや確実に増える。
邪な思惑を持った連中が嬉々として自分らの子を送り込んでくるだろう。
婚約者になったら国内では収まらなくなる。国を挙げての外交合戦になるだろう。
……想像しただけで胃が痛くなりそうだ。
まぁ、帝国が最終的な勝者になっていれば問題ない。
「さて……やるか」
帝国の未来の為に義務を果たそうじゃないか。
それが我々、宮内省の仕事だ。
その責任者たる私、カラスマ・コウトクに課せられた責務なのだから。
マサヒトの知らぬ所で、マサヒトの事が決められていく。
良い大人は子供の為に何でもするものなのだ。
いずれマサヒトにもわかる日が来る。
その大人たちの思いを、分かる日が。
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