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7.不死鳥の従者

 フェンリルが人の姿になる。

 女の人は壁が無くなって、少し慌てている。 

「せしる、てき、ちがう」

 フェンリルは私を弁護する。

「なら何者だ?アレは」

 女の人は指を差しながらそう言う。

 人をアレって言うな!

「せしる」

「そうじゃなくて、人間で、更に子供なのに無詠唱で魔法を使い、お前が認めているこいつは何者だと聞いている!」

 かなり怒ってる。でも少し可愛く見えちゃう。

「だから、せしる」

 フェンリルが真顔で、火に油を注ぐようなことを言う。

「っスゥー」

 ヤバい。これは可愛くない顔をしている。

「っはぁ~、もういいですよ」

 先に女の人が折れる。

 完全にフェンリルが悪いけどね。


「セシルさん、ですね?」

 高圧的に私に問いかける。

 整った美しい顔が、今では鬼のようにしか見えない。

 私は怯えながらも、首を縦に振る。

「フェンリルがあの調子なので、貴女に聞きます。貴女は一体何者なのですか?」

 ただのフェンリルに拾われただけの捨て子です。と言いたいけれど、声は相変わらず出ない。

 ここで何も話さなかったら、余計話がややこしくなる。


 私は近くにあった手頃や枝を手に取り、絵を描き出す。

 女の人の表情が気になるが、「はぁ?」って言われんばかりの顔を想像してしまい、見上げるのを止め描くことに専念する。

 私は口を開いた人の横顔を描き、その絵に大きく罰点を描く。

 話せないことを描いたつもり。

 それと、捨て子だと伝えるために、初めてフェンリルに会った時に描いた絵を描く。

 昔に比べてかなり絵は上達したと思う。

 フェンリルと会話する時以外にも、暇な時に絵を描いていたからね。

 私が絵を描き終えると、それを女の人がまじまじ見る。

 はぁ、と小さくため息をつき、女の人は話し始める。


「貴女は会話が出来ないのですか?」

 私は首を縦に振る。

「貴女は捨て子なのですか?」

 この質問にも首を振る。

 意図が概ね伝わっていて、結構嬉しい。

 女の人は少し間を空けてから、また話し始める。

「先程から質問ばかりしていて申し訳ございません」

「私の自己紹介をさせて下さい」

 さっきまでの鬼のような顔が一転、柔らかい表情の美人に変わった。


「私の名前はメラ · ロベレニー、不死鳥の従者であり主に情報収集を担当させて頂いてます」

「今日はフェンリルに、今私が使っているこの人化の魔法の指導のために、こちらへ赴きました」

 

 ん?情報量が多すぎて、混乱してきた。

 不死鳥の従者?人化の魔法を使っている?

 自己紹介されても何者か分からないんだけど。

 

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