表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/45

1.フェンリル

 私の身体にもふもふとした、暖かいものが当たっている。

 高級なベッドの上で、ふわふわの布団にくるまっているような感覚。

 あれ、私はライデンスノー家から追放されて、フェンリルの森に捨てられて、それで男の人が来たけど私は倒れて……

 私はうとうとしていが、ガバッと起き上がる。

 すると、私の目にはとんでもないものが映った。


 2メートル、いや、3メートルもあるだろうか、そんな大きな白い狼が、私の隣で寝ていた。

 一度も見たことがないけど、直感的に分かる。


 フェンリルだ。

 

 何で私はフェンリルと一緒に寝てたの?

 倒れてからの流れが全く掴めない。

 私は少し混乱し、バタバタしていると、隣で寝ていたフェンリルが起き上がる。

 私は思わずしりもちをつくと、フェンリルは私の前に座る。

 周りの木々が、フェンリルの大きさをより際立てる。

 私の足の数センチ先に鋭く尖った大きな爪が、地面を抉って、透き通った綺麗な青い眼は真っ直ぐ私を見つめている。

 怖い……

 ねぇ、貴方は一体何を考えているの?

 そんな心の声が聞こえたのだろうか。

 フェンリルは白い長髪の男の人の姿に変わったのだ。

 私が倒れる時にいた人だ。

「だい、じょうぶ?」

 男の人の姿をしたフェンリルが、心許ない口調で私に話しかける。

 私を心配してくれてるの?

 『大丈夫じゃない』と言いたいけど、声が出ないので私は首を横にぶんぶん振る。

「たすけ、いる?」

 今度は首を縦にぶんぶん振る。

「みず、のむ」

 フェンリルは左側にある泉を指差す。

 フェンリルに気を取られ過ぎていて、泉があることに気が付かなかった。

 私は力を振り絞り、泉の前まで何とかたどり着く。

 そして私は泉の水を飲む。

 すると、その水は喉を潤すだけではなく、身体のあちこちにあった傷が綺麗に治り、気力が湧いてくる。

 私は水をがふがぶ飲む。

 もしかして、これは「癒しの泉」?

 癒しの泉の水を飲むと簡単に治らない傷や、魔力が回復すると聞いたことがある。

 癒しの泉はまだ世界で2箇所しか見つかっていない。

 この森で見つかったと言う話は聞いたことがないので、これは未発見の癒しの泉ということになる。

 

「なぜ、もり、ひとり?」

 私が水を飲んだことを確認すると、フェンリルが当然の疑問を投げ掛けてくる。

 私はどう説明しようと考えていると、ある方法を思い付く。

 私は近くにあった枝を手に取り、地面に絵を描く。

 文字を書けば良い、と考えたけど私は会話の練習ばかりしていたので、ほとんど文字が書けない。

 なので私は絵を描く。

 大きな家を描き、怖い顔を大人を二人と子供を一人描く。

 そして、少し離れた所に木に囲まれた髪の長い悲しんでる子供を描く。

 貴族の家から嫌われて、森に捨てられた私を描いたつもりなんだけど……

 この絵を見たフェンリルは、そっと私を抱きしめる。

「だい、じょうぶ」

「ひとり、ちがう」

 私の言いたいことが伝わったのか、フェンリルはそう言う。

 抱きしめながらその言葉を聞き、私は静かに泣きながら抱きしめ返した。


 本文の下にある☆☆☆☆☆を、★★★★★にポチっとして頂ければありがたいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] かなりよくできていて、読みやすく、気持ちよく、脳みそがキラではなく、今を感じさせるファンタジー風で、長く読めて、毎回ほのぼのとした気持ちになれるお話だと思いますあなたは読んだ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ