14.接触
少し長め。
私が改名された後も、赤ずきんさんはフェンリルにダル絡みをしてから、『また会いに来るから~!』と言って帰っていった。
そうして私とフェンリルの元には、メラさんと赤ずきんさんの二人が週一回会いに来るようになった。
メラさんと赤ずきんさんは意外と馬が合うらしく、鉢合わせた時はよく雑談している。
勿論フェンリルは抜きで。
そんなこんなでフェンリルと出会って十一年経った。
私はもう十五歳、成人だ。
昔と比べると今はとても幸せ。不自由なく、メラさんや、赤ずきんさんとも出会って、夢かと思う程に幸せを感じている。
私は今日もフェンリルの姿になり、狩りに行く。
この数年で、私のスキル、『模倣』をかなり把握出来たと思う。
『模倣』は相手の能力と姿を模倣するだけで、その人物のスキル等、魔法を使う時にはスキルとは言え魔力を使うこと。
そして、スキルは能力と違って完璧に模倣は出来ないことが分かった。例えると、メラさんのスキル、『以心伝心』は脳内会話が出来るけど、私は一方的に話すことしか出来ない。それも、一言だけだ。それに魔力の消耗も激しいから、割に合ってない。
でも、初対面とかなら使えるかも。
他には、姿だけを変えたり、逆に能力だけを変えたりすることも出来た。それも、一部だけ姿を変えたり、素早さだけを変えたりと、結構器用に変えれる。
でも私は各々バラバラに変えたら途中で混乱してくるから、それはあまりしないけど。
暫くして、私はいつもの狩り場に到着し、いつもの猪を殺め、食べる。
この猪を食べていると、少し前にメラさんが持ってきたお土産を思い出す。
この猪を加工した串焼きだった。それは生臭くなく、柔らかく、何より味が美味し過ぎた。
それと比べると今食べている生の猪は──いや、比べちゃ駄目。あれとこれは別物だから。
私は寝床に帰る。
直ぐに到着したけど、私は茂みの前で立ち止まる。
誰かいる。それも複数人……三人か?
フェンリルでも、メラさんでも、赤ずきんさんでも無い、知らない気配と匂いだ。
私は耳を研ぎ澄ます。
「こ、これ、癒しの泉だぞ!?こんな大発見、俺達勲章モノだぞ!」
「この森の深部の調査って意外と進んでなかったからな。魔物の活発化の原因を調べに来たんだが、一旦報告しに帰るか?」
「それもアリですね。なら一旦癒しの泉の水を汲んで、持って帰りましょうか」
男二人と女一人、話の内容から冒険者なのかな?
どうしよう。このままこの三人が立ち去るのを待つ?でもそれだったら癒しの泉の存在がバレて、ここに新たな人間が来ちゃう。
どうにかして、この人達を止めないと……!
でも、どうやって……
「おい、静かに……何かいるぞ。それも、相当強力な……」
「もしかして、それが魔物が活発化している原因なんじゃ……」
「一気に二つも大発見か!?」
バレた……?と、とにかく、私がこの人達を止めないと!
私は茂みから出る。
「フェ、フェンリル!?」
「あの、伝説の……?」
そ、そうだ、私、フェンリルのままだった。
私は人間の姿に戻る。
「一体、どーなってんだ!?」
「ゼフォン、落ち着け。スゥ、おい、お前は一体何者だ?答え無いのなら、魔物とみなし、お前を殺す」
事情を説明したくても、声が出なくて話せない。
こ、こんな時こそ、スキルの出番……!
私は能力をメラさんに変え、スキルを使う。
魔力に、『敵じゃない』と言葉を込め、相手の脳に送る。
「な、何だ、今のは……!」
「敵じゃ、ない……?」
「──!気を付けろ!洗脳魔法だ!こいつは俺達に『敵ではない』と洗脳しようとしている!」
違う、洗脳じゃない!本当に敵じゃないんだって!
「子供の姿をしても、化け物だってことか」
「なら、始末しないと……!」
三人は一斉に私に遅いかかってくる。
このままじゃ、殺される……反撃、しなきゃ。
三人に向かって、戦意喪失するくらいの炎魔法を……!
……え?何で?私、火傷するくらいの、炎魔法を、使ったんだよね……?
なのに、何で……
三人は灰になってるの?
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