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18話 またな!

 レイはメタルドラゴンの銀色の鱗に突き刺した木刀を抜き取るとメタルドラゴンから間合いを取りソラの横に立った。


『やったのかな?』


「どうだろう?」


 メタルドラゴンは横たわったまま微動だにしない。 


『ナンテコトダ・・・・アノ部位ハ通常ノアダマンタイト合金ノ倍ノ硬度ヲ有シテイルノニ・・・』


『ウ・・・・ワタシハ何ヲシテイタノダ・・・・生身ノ人間ヲ攻撃シテ・・・・』


『中尉、ワタシハ一体・・・・・。』


『AI、お前は悪い夢を見ていたんだ・・・。』


『夢? AIノワタシガ夢?ソウカ夢カ・・・ソウデナ・ケ・・・・・・・・・・・・』


『おい、AI!』


『・・・・・・・・・』


 中尉はAIが完全に機能を停止したことを悟った。

 

 中尉にとってAIは30年以上共に戦ってきた戦友と呼べる存在だった。彼は竜騎兵の搭乗員として生を受け、肉体年齢で18歳になり新型の竜騎兵に初めて搭乗した時からの腐れ縁であった。


 彼はAIと共に死線をくぐり抜けてきた過去が走馬灯のように思い出していた。


『そういゃあ77とあった時も・・・・そうだ!77は』



『SAI!AIの代わりに竜騎兵のコントロール回路に接続してくれ!』


『了解!』


 少しすると彼の手足には竜騎兵を通しての感覚が戻ってきた。


『マスタート竜騎兵ノ接続ヲカンリョウシマシタ。』


『よし、行けるぞ!』



「おわ、こいつ動き出したぞ!」


 レイとソラは再び戦闘態勢に入った。


『おい、まて、俺だ!体の自由は戻った。もう攻撃はしない!』


「本当か?」


 メタルドラゴンは両手を挙げて攻撃の意志が無いことを示した。


『ああ、助けてくれてありがとう。ところで君の名前は何て言うんだ?』


「俺か?俺はレイって言うんだ。それと、隣のメタルドラゴンがソラって言うんだ。」


『ソラ?1077じゃあないのか?』


『僕には名前なんかなかったけど、レイが付けてくれたんだ!1077なんて名前じゃないぞ!そういう、おじさんは何て言う名前なんだ?』


『ああ、俺か?俺の識別番号・・・名前は999だ。』


「999?なんか言い難いな。」


『ああ、それならサンクって呼んでくれ、仲間にはそう呼ばれていた。』


「サンク、それなら言いやすそうだな。」


『サンクさん、よろしく!』


『ああ、宜しく。ところで、俺は1000年間寝ていたみたいで今の状態が良く分からないんだ。さっきレイは「この世界の人達を救った青いドラゴン」って言っただろう。その話を教えてくれないか?』



「ああ、その話か?それなら・・・・えーっと・・・おっちゃーん!」


 レイは離れた所でレイ達の戦いを呆然と見ていたジョニーに手を振って呼び寄せたのだ。


 ジョニーは青いドラゴンの伝説と滅びたキルルティア文明から今に至るまでの話をサンクに嬉々として説明していた・・・レイを介して。それからジョニーはキルルティア文明の事をサンクに根ほり葉ほり聞いていたので既に日が傾き夕方になっていた。


『ありがとう、状況が良く分かったよ。』


「いやこちらこそありがとう。貴重なキルルティア文明のことを聞くことが出来たんだ。それより、キルルティア文明滅亡後の状況を記した書物とかがほとんどなく、この程度の情報しかなく、申し訳ない。」


『いや、これだけ情報が得られれば十分だ。それとソラに聞きたいんだが、君の同族はいないのか?』


『同族?父ちゃんと母ちゃんがいたけど100年前に二人共死んじゃった。それからメタルドラゴンには会ってないよ。』


『そうか・・・嫌なことを思い出させてすまないが、二人が無くなる時に何を言っていたか覚えていたら教えてくれないか?』


『ああ、いいよ。先に父ちゃんが突然動けなくなったんだけど、かーちゃんが「りじぇねをするか?」って聞いてたよ。』


 竜騎兵は思わず目を見開いたのを見たソラは話を中断したが、サンクに促された話を続けた。


『父ちゃんは「いや、今はもう無理だ・・・」と言ってその後に動かなくなったんだ。それから数年後に同じ様にかーちゃんも突然動けなくなってしまったんだ。僕は驚いて、かーちゃんに近づくとかーちゃんは申し訳なさそうに「貴方が大人になるまで守れなかったよ。ごめんね”なな”。」って言ってそのまま死んじゃった・・・。』


 ソラは今にも泣きそうな顔をしていた。


『ソラすまなかった。もういい、ありがとう。』


 ソラの両親というのはおそらく1077と同じ隊にいたものだろう。3人はあの時生き延びて、この世界を生きてきたのだ。彼等は生死にかかわる怪我をしてリジェネで若返った1077を守ってきたのだ・・・。


 音声遮蔽、サンクが呟くと機体外への音声が遮断された。


『SAIソラの機体をスキャンしてくれ。』


『了解!』


 彼は目の前に映し出されたスキャン結果をみて呟いた。


『リジェネは95%完了してるじゃないか!それにしては機体が小さいな。』


『ハイ、体積デ元ノ1077ノ1/2程度ノ大キサデス。基地外デノリジェネノタメ十分ナマナヲエラレナカッタコトガ原因ト考エラレマス。ソレトAI機能ノ部分モ成熟ガ不十分デス。自立ノ行動ハ最低限シカデキナイデショウ。』


『記憶回路はどうだ?』


『記憶回路ハソレナリニ発達シテイマス。ワタシノ2/3程度ノ容量ガ確保サレテイマス。』

 

『よし、それなら77に生き残るためにに必要な情報をあげよう。』


『了解シマシタ。』


『音声遮蔽解除!』


 小さな機械音と共に外界との通話が可能になった。


『ソラ、君がこれから生きていくために必要な知識を渡したいんだが、受け取ってくれないか?』


 ソラは少し考えた後にうんと答えた。


『それじゃあ、「接続ハッチ開放」って言ってくれないか?』


 接続ハッチ開放とソラが唱えると、ソラの首の付けての後ろに有る白い鱗が開いた。


『よし、それじゃあソラと俺をケーブルで一時的に接続するから動かないでくれ。』


 竜騎兵はレイに木刀で刺された白い鱗を開くとそこから銀色のケーブルが出てきてケーブルはソラの白い鱗が開いた部分に接続した。


『うーん、なんかむずむずするー。』


『大丈夫、害はないから、少しだけ我慢していてくれ。』


 ソラと竜騎兵が繋がった状態で5分程経つとケーブルはソラから外れ竜騎兵の元に戻って行き二人の白い鱗が閉ざされた。


『さあ、これで終わりだ。ソラ、君が何か困った時にどうしたいか念じるんだ。そうすれば、俺が送った情報の中から使えそうなが思い浮かんでくるから、それを試してみると言い。まあ、全て上手くいくとは言えないからお守り程度だと思っていてくれ。』


『うん、ありがとうサンク!』


 ソラの言葉に竜騎兵は満足そうに微笑んでいた。


「ところでサンク、サンクはこれからどうするつもりなの?良かったら僕たちと一緒に行かない?」


 ソラの誘いに少し考えた後にサンクは口を開いた。


『ありがたい申し出だが、しばらく一人でこの世界を見て回ろうと思う。』


 サンクの回答にソラはがっかりしてあからさまに落ち込んでいた。


『ソラ、そんなに気を落とすんじゃない。今生の別れという分けじゃあないだろう。また、どこかで会えるさ。』


『そうか!また会えるんだね?』


『ああ、会えるさ!』


『それじゃあ、またね!』


『ああ、またな!』


 レイ達はサンクに別れを告げクレタ町に向かおうとしている時に、不意にサンクレイに聞いた。

『そうだ、レイ!青いドラゴンの伝説を伝えた人の名前は何て言うんだ?』


「えっと、確か”ランディ”って聞いたよ。」


『ランディ・・・・そうか、ありがとう』


***************************************************


 レイ達が去った後、サンクは荒地に寝転がっていた。


 満天の星灯りがサンクの姿を映し出している。


『ランディ・・・お前も生き残ったんだな・・・・・・・・・なあ、ランディ。俺がやったことは正しかったんだよな?』


彼はじっと虚空を見つめていた。

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