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復讐 6

 公国側から検問所を通り、王国側へ歩いて行くと、多数の警備兵が駆け寄ってきて鬱陶しくも攻撃をしてきていたが、〈空間断絶(ディスコネクト)〉で近寄らせないようにしながら、彼らを気にすること無くそのまま検問所を出て行った。


 移動手段を印象的にして、僕の事を探させるために、派手にいこうと思って収納から魔道バイクを出した。そして、シルヴィアをそのまま抱き抱えて、バイクに跨がり颯爽とその場を走り去った。


 僕の一連の行動に、王国の警備兵や屋敷から僕を追いかけてきていた剣士と魔法師は、攻撃することに疲れてしまったのか、途中からは僕の行動をただ見ているだけになっていた。最後は収納から出した大きな魔道バイクを見て、呆気(あっけ)にとられたような、ぼーぜんとした表情で僕の背中を見送っていた。




 しばらく魔道バイクを走らせ、検問所から僕の姿が見えなくなるところまで来て、木陰に隠れるようにバイクを停めて収納した。


「ゴメンねシルヴィア、大丈夫だった?」


「あ~、う~!」


 鉄の扉を蹴破った時の衝撃や、魔道バイクでの移動で結構な振動があったと思ったので心配したが、彼女は相変わらずの反応だった。


「やっぱり、エリクサーが無いと無理なのかな」


 彼女は今、薬のせいで心を壊されているということらしい。それがどんな状態なのかは分からない。彼女が声を出しているのは、何かを伝えようとしているのか、それとも心の悲鳴が自然と声になって出ているだけなのだろうか。


「本当はこのまま学園に戻って、メグの協力を仰いでエリクサーを作って貰うべきなんだろうけど・・・ゴメンね、僕の勝手な感情に付き合わせて」


 彼女を誰かに預けてから動こうかとも考えたが、僕が守っている方が安全で確実だ。それに、彼女をこんな目に遭わせた奴らには相応の(むく)いを受けさせたい。また、それとは別に、自分の親がこの改革派閥に協力していた場合は、下手に時間を置いてしまうと、僕以外の誰かの手で処刑されてしまう可能性もある。そんな考えで、彼女を同行させながら目的を果たそうと決めたのだった。



 ここからは、〈幻影(ミラージュ)〉で姿を消しながら奴らの動向を探る必要があるので、シルヴィアには申し訳ないが、口に小さ目の布を噛まさせてもらって、大きな声が出せないようにさせてもらった。


「ゴメンね、シルヴィア」


モゴモゴ言っている彼女に謝りながら、また抱き抱えて光魔法を発動させ姿を消した。


「さぁ、僕の考えた通りに行動してくれよ」


そう呟くと、奴らのもとへと来た道を戻った。




side ギル・エイカーズ


 上級貴族街の神殿の一室。ここには今、この国の未来を(うれ)う者達が集まっている。私の隣には軍務卿、正面には枢機卿、そしてもう1人の人物が真剣な表情で座っている。


「ダリア君が動き出しているようですね」


「ええ、そのようです。彼の力と考え方なら動いて当然ですね」


「どうなると思う?」


「そうですね、私の知る彼なら、友人を助けて戻ってくるだけでは終わらないでしょう」


 枢機卿と私は、ダリア君の動きについて推測した。そこに軍務卿が割って入る。


「彼の実力があればそれも問題ないでしょうな。ですが、問題は改革派閥に対しどこまでの行動を取るかということでしょう」


軍務卿の質問には、私から考えうる限りの推察を述べる。


「ダリア君なら、邪魔する者は始末していくでしょう」


「ほう、根拠があるのかね?」


「根拠も何も彼の行動は昔から実にシンプルです。敵か、味方か、です。改革派閥が敵になった以上、彼が躊躇(ちゅうちょ)する理由がない」


「なるほどな。裏を返せば、そんな考えで生きていけるだけの実力ということか」


 軍務卿が私の考えに苦笑いを浮かべた。本来は自分の行動した結果、周りへの影響や、その後の自分への処遇などいろいろな事を考慮してから実際に動くものだ。だが彼は違う、自分の感情にことのほか素直に生きている。それは、いざとなれば全てを引っくり返すだけの力を持っているからに他ならない。


「となると、今回はこちらにとって有意義な働きになりそうですな」


「今後もそうあって欲しいものですがね」


軍務卿が今回のダリア君の行動を自分達にとって効果的であると考え、枢機卿がそれに同意した。


「ええ、私もそう思っています。これで改革派閥は痛手を被りますし、もしかすると崩壊させるだけの打撃をダリア君が与えてくれるかもしれません」


 さらに、私は今回の彼の動きがもたらす最高の結果を予想した。それは、ある情報筋から改革派閥の首魁はフリューゲン辺境伯である可能性が高いこと。さらに、その領地に何故か彼が興味を持っていたことの報告を受けているからだ。その2つの情報から、そうなる可能性もあるのではと考えたのだ。


「では次は、いよいよ王派閥ですな」


「彼がそちらに傾くことは無いのかね?」


「それは大丈夫ですわ」


 枢機卿と軍務卿の会話に、この部屋のもう1人の人物であるマリーゴールド家の令嬢が入ってきた。


「意識誘導が上手く行っているのかね?」


「はい。王子には彼がフリージア様と仲が良いと吹き込んだら、案の定、こちらの想定通りの動きをしてくれましたので。そんな行動を取った王子を彼が良く思うはずもありません」


「ご苦労だったな」


「いいえ、これもこの王国の為ですから」


 そう言って、彼女は軽やかな笑みを浮かべている。彼女の本来の所属は王派閥なのだが、実のところ、教会派閥が昔から送り込んでいる間者(かんじゃ)の家系の1人だ。


「試合ではダリア君は王子を手玉にとっていたと聞いているけど、王子は大丈夫だったのかい?」


王子が彼を処刑すべきだと叫び出せば、こちらの思いもよらないことになっていく可能性もある。それゆえ、王子の心情を知っておくべきだ。


「当初は処刑する勢いでしたが、彼の実力を見て考えを変えたようですね」


「そうか・・・取り込もうと動き出しましたか?」


「はい、仰る通りです。王子の心変わりの(さま)は、いっそ清々しい程だったとエヴァ先生から聞いています」


「ダリア君の反応はどうだったと?」


「見る限りは、王子に(なび)くことは無さそうだったと」


「そうですか・・・」


 どうやらダリア君は、一度相手を敵と見なすと自分にとって利益がありそうだったとしても、そんな事では動かないようだ。


「では、彼の行動の結果を見て、我々も動き出すとしましょうか」


「そうですな。これでこの国にとっての最良の結果が待っているでしょうな」


「ええ。皆さん、動き出す準備をお願いします」


 状況は教会派閥にとって好都合になってきている。幸運だったのは、彼が王都へ来た時に、最初に冒険者協会へと訪問したことだろう。そのとき彼の実力を知らなかったなら、こんなに予定を前倒しして動くことは無かった。


 さらに、彼が子供と言うことも大きい。考え方が単純で、こちらにとっても読みやすい。だからこそ、教会派閥でもない彼を上手に使って、ここまでの成果が出せていると言っても良い。


 そして、いよいよ我らが教会派閥は最終段階へと向けて、動き出すのだった。

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