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学園トーナメント 14

 改革派閥のサジウスと名乗った男は、嫌らしい笑みを浮かべながら王子の様子を(なが)めていた。


「貴様の()れ言など、どうでもよい!これは国家反逆罪だ!貴様ら、生まれて来たことを後悔させてやるぞ!」


 さっきから王子は、憎々しげにサジウスや周りを取り囲んでいる改革派閥の人達に吠えているが、僕を盾にするような立ち位置で叫んでいるため、どうにも怯えている印象に見えてしまう。たしかに、改革派閥の魔法師は、第四位階の魔法も放ってきているので、中には結構な手練れが何人かいるはずだ。そもそも元は貴族ということなので、才能の数も上級貴族ほどでないにしても5つ前後はあると考えられる。そうなってくると、いくら王子が金ランク冒険者といっても、この人数を相手にするのは無謀と自分でも分かっているのだろう。


(だからって、さっきまで殺そうとしていた人間の背後で守ってもらおうなんて、プライドもないのか?)


 僕の王子に対する評価は既に地の底だったが、さらに地中深くまで下がっていった。しかも、この期に及んで意味の無い言葉ばかり(わめ)いているので、王子を押し退けて僕が彼らに質問した。


「それで、これだけの規模で動いているんだから、それなりの策を準備しているんだろうけど、目的はなんですか?」


「!?貴様、俺が奴らと話しているところに割って入ってくるとは無礼だぞ!」


王子の言葉を遮るように話し始めたので、僕にも激昂して叫んできた。そんな様子を憐れな者でも見るようにサジウスは見つめていた。


「ふっ、その能無しと違って君はこの状況を冷静に見つめているようだね?」


「きっ、貴様!俺が能無しだと!?」


 王子のせいで話が全く前に進まなくなってしまうので、土魔法〈大地の牢壁(グランド・プリズン)〉で王子を外界から遮断した。


「ふぅ、これで静かになった。それで、あなた達の目的を聞いてもいいですか?」


「ほぅ、第四位階か・・・しかも王子を守るように発動したのは、君は王派閥の人間だったかな?」


「邪推ですよ。この状況で王子が死ぬと僕にまでとばっちりが来そうだったのと、本当に(うるさ)かったからですよ」


「まぁいいだろう。先にも言った通り君と敵対する気はない。我々の最初の目的は王子を捕虜とすることだ。そいつを使って国王との交渉材料にするのさ!それに、今日は宰相や軍務卿もいないからな、邪魔な護衛もいなくて事を成しやすい」


 王子を捕虜とする事は僕も予想していた。しかし、今日を狙ったのはわざわざ宰相や軍務卿の護衛がいない日を狙っての事だったらしい。確かにあれほど上位の役職の人達にならそれなりの護衛が何人もいてもおかしくない。しかし、果たしてあの王子に国王と交渉できるだけの価値があるのだろうか。


(たしか王子には弟もいたはずだし、最悪見殺しにするんじゃないかな?)


王派閥がどう動くかは分からないが、あまりに無理難題を要求されるなら王子を見捨てる選択肢もあるのではないだろうかと考えてしまう。


「そうですか、それで最終的な目的として、この国をどうするつもりなのですか?」


「自由だよ!血筋に縛られることの無い自由な国を新たに創造するのだ!そして、その中では実力のあるものが相応の待遇を受けられるのだ!・・・君もその方がいいのではないかい?平民だからと見下されることもなく、能力を正当に評価してくれるのだぞ?」


彼の言う理想は、どこかで聞いたような内容だった。


(それって、公国の取り組みと一緒じゃないか?・・・あれ?でも、よく考えてみるとそれって結局今とそんなに変わらないんじゃないか?)


 彼が言う実力での評価とは、結局のところ持って生まれた才能が物を言う。それはつまり、貴族の血筋であれば多くの才能を持って生まれるが、平民では1つか2つしか持っていない。つまり、今の貴族が平民を使役するというような状況はなにも変わらない。唯一変わるとするならば、国の頭が変わるだけだ。今国を支配している血筋を一掃(いっそう)し、そこに自分達が居座るだけのまやかしの自由だった。


(なるほど、平民にしてみれば何か変わるかもという期待感で、元貴族からは再び権力の座に座ることが出来るという欲望で改革派閥を動かしているんだろうな・・・)


 この革命が成功するかどうかは分からないが、成功したところでローガンさんの手紙にあったように、廃嫡されるような能力の低い者が支配するとなれば、もしかしたら平民にとってはより過酷な生活になることも想像できる。公国ではどのようになっているのか詳しくは分からないが、触れ合った人達は特に国に対して不満を持っているというような印象は受けなかった。


「別に僕はこの国がどうなってもいいけど、僕の邪魔はしないでくれる?」


「ほほう、あなたの邪魔ですか?参考までに何が邪魔になるのですかな?」


「そうだね、僕の友達に手を出すのと、フリューゲン辺境伯領に面倒ごとを持ち込まないことかな?」


僕の言葉を聞いた瞬間、サジウスはほんの僅かに表情の揺らぎがあった。


(ローガンさんや、上級貴族と比べたらやっぱり能力は下だな)


 隠し事が下手なのだろう、反応すべきでない言葉に反応したということは、僕にとってどうやら彼らは邪魔になるようだ。


「・・・分かりました。私はお邪魔にならないと約束しましょう!」


 何気に表現が、私達から私に変わっているのは、彼自身は邪魔しないが、彼の派閥は邪魔するということだろうか。


「そうですか・・・残念です。僕の邪魔をするのであれば皆さんには消えてもらいますね」


「ま、待て!邪魔をしないと言ったではないかっ!」


「あなたの反応を見て、その言葉を素直に信じられるほど吞気(のんき)じゃありませんよ」


「なんだとっ!?ば、馬鹿にしよって!お前一人でこの人数を相手に出来るとでも!?」


 馬鹿にされたと感じたのか、先ほどまでの紳士口調が剥がれてきてしまっていた。その彼の言葉と共に、僕達を取り囲んでいた連中がじりじりと近づいてきて、後方の魔法師達も魔力の高まりが感じられた。


「あぁ、大丈夫ですよ。あなた達では僕の相手になんてなりませんから」


「くっ、このガキ!こっちが下手に出てれば良い気になってんじゃねえぞ!やれっ!」


 彼が怒声と共に号令を掛けると、さっと僕から距離をとった。すると、一斉に火魔法と風魔法が飛んでくる。タイミングや制御に問題があるのか、合体魔法とはいかないようだ。さらに目潰しの闇魔法も放たれるが、その全てを収納から取り出した銀翼の羽々斬(はばきり)で吸収してしまう。


「なっ?どこから剣なんて取り出した!?」


「いや、魔法はどうなった?」


「なんで奴は無傷なんだ!?」


 彼らからしたら、僕がどこからともなく剣を取り出し、魔法を無力化したように映ったのだろう、辺りは騒然となった。彼らの僕を見る目から、得体の知れない存在を目の前にしている混乱や恐怖が伝わってくる。


「ざっと200人か・・・ちょうどいい、僕の新しい魔法の鍛練に付き合ってもらおうかな!」


師匠との攻防で、まだまだ改良の余地があることを痛感したので、少しでも鍛練しなければと思っていたところだった。


「何言ってやがるこいつ!?」


「何したか知らないが、魔法をどうこうできてもこの人数で斬りかかれば何も出来まい!」


 おそらく剣術の才能持ちだろう、取り囲んでいた人達も一斉に動き出した。僕は剣を収納し両手に風魔法を圧縮して発動し、それを接触させてオリジナル魔法である天叢雲(あまのむくらも)を作り出した。


「な、なん———」


「ぎゃ———」


「助け———」


 最も僕に接近していた男達が、雷の剣を見て驚愕に顔を染め、叫んだ時には僕は既に彼らに接近し、水平に剣を()いでいた。とっさに剣で受けようとした男は、自らの剣を透過(とうか)してくる僕の剣の餌食(えじき)となっていった。しかも、僕の剣に触れた瞬間に絶命するようで、叫ぶ間もなく絶命してしまい、ほとんど意味を無さない声が周辺に木霊していった。


「さぁ、僕の鍛練の糧となれ!」


 そうして、アリの這い出る隙間もないほどの密度で切り込んでくる彼らを、僕は苦もなく殺していく。たまに少し距離がある者は、感電して気絶してしまうので殺し損なってしまうが、100人以上を斬ってもまだ剣として安定している。


(それでもやっぱり問題点があるな・・・)


 一番の問題は、金属系の防具に雷が勝手に流れていってしまうので、瞬間的に形状が不安定になってしまう。 しかも、勝手に雷が流れてしまった相手は殺すまでには至っていない。それに、形状が不安定になると、剣の間合いが極端に短くなってしまうのだ。


(そうだ、空間魔法で何とか出来ないかな?)


 今までは収納や、空間そのものを斬るということに使っていたが、空間を固定できないかと考えた。天叢雲(あまのむくらも)を薄くコーティングするイメージで、その空間を外界から影響を受けないように固定する。すると、とたんに揺らぎが消えて、本当の剣のように形状が固定した。


(おっ?上手く行ったかな?)


 そして、残りの約100人を成長した天叢雲(あまのむくらも)で掃除していった。さっきまでと違って、不安定になることも雷が僕の意思に反して金属に流れることもなくなった。


 数分後、辺りは肉の焼けたような嫌な臭いが漂う中、襲撃者全員の屍の上に立つ僕は、自分がまた成長できたことにニヤリと微笑んでいた。

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