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学園トーナメント 4

 翌日———


 ついに僕達魔法コースもトーナメントの試合が始まった。組み合わせは朝一番で貼りだされており、皆自分の相手を確認していた。その表を見て、中には拳を握る者から絶望に顔を青ざめさせている者まで、その反応は様々だった。


「僕の相手は2年生のAクラスの人か・・・」


 一番やりたくない組合せに何かしらの力が働いたのではと勘繰りたくなるのだが、学園長が不安視していたということを考えれば、わざわざ学園の上の人が騒動が心配される組合せにするとは思えないので、偶然の結果なのだろう。


(というか、そう信じたい)


 溜め息をついていると、フリージア様が話しかけてきた。


「おはようございますダリア君」


「おはようございますフリージア様」


「ダリア君の相手は上級生の貴族ですか・・・何事もなければ良いのですが」


不穏なことをさらっと言ってくるが、僕もそう思っていたのでなんとも言えない顔になってしまう。


(フリージア様は僕の状況を知っているのかな?王子の婚約者だし・・・)


「ふふふ、ダリア君、少しは自分の考えていることを顔に出さないようにしましょうね」


「えっ、僕どんな顔していましたか?」


「ふふふ、内緒です!」


僕がどんな顔をしていたのか教えてはくれなかったが、表情に出てしまう心当たりが無いわけではないので、今後の自分の為にも彼女の言葉を肝に銘じておこうと思った。


「フリージア様は救護班として参加されているんですか?」


「そうですよ、先週から怪我をされた方達を治療しています。今のところ、そう大きな怪我をされた方はいないので、ダリア君も相手の方に大怪我させないようにしてくださいね」


 僕の実力を知っているフリージア様は、僕よりも相手が怪我をしないかのことの方が心配のようだ。笑顔で忠告されてしまった。


「はい、気を付けます」


 そんなことを話していると、メグとシルヴィア、マシュー達もトーナメント表を見に来たようだ。


「おはようダリア!」


「おはようございますフリージア様、マーガレット殿下、ダリア君!」


「お、おはようございます!!」


 メグは親しげに、シルヴィアはやや緊張しつつ、マシューに至ってはガチガチになりながら朝の挨拶を交わしてきた。


「おはようございますマーガレット殿下、皆さん。今日から頑張ってくださいね!」


「おはようみんな!って、マシュー緊張してるのか?今から緊張してたら試合まで持たないぞ?」


「い、いや、俺が緊張しているのは試合の方じゃないって」


 どうやらマシューは集まっている面々に恐縮しているようだった。たしかに聖女様に他国の王女では、それもしょうがないだろう。その割りにシルヴィアはさほど固くなっておらず、肝が座っているようだった。


(初めてクラスで話した時にはオドオドした感じだったのに、きっと彼女も成長してるんだな)


そんなことを考えていると、もう1人この輪の中に入ってきた。


「ん、おはようマーガレット、フリージア、ダリア・・シルヴィアに・・・誰?」


「あっ、初めまして!自分はボーデン伯爵領のマシュー・ライナーと言います!」


「ん、ダリアの友達?」


「はっ、はい!同じクラスで仲良くしてもらっています!」


「ん、私はティア・ロキシード。ダリアの親友。よろしく」


そのティアの言葉に周りから若干のざわっとした雰囲気が感じられ、僕とティアを往復する視線を感じた。


「ティアさんはダリアの親友なのですか?」


メグがティアの言っていた、親友というフレーズに反応してその真意を聞いていた。


「ん、もちろん!私はダリアと一緒に公国へ旅行し、更にはダリアの可愛い服装も見ている。これが親友でなくて他になんという?」


「えっへん!」と擬音がつきそうな態度のティアに、メグが目を丸くしながら驚いていた。


「えっ?可愛い服装?・・・ってどう言うことですか!?」


「ん、私とフリージアは休み中にダリアの可愛い服ファッションショーを開催していた。・・・素晴らしいものを見ることが出来て私は満足。フリージアの言う通り、ダリアにはよく似合う」


「ええ、そうでしょうティアさん!ただし、ダリア君に限りますけどね」


「ん、全くその通り!」


お互い通じ合っているというような やり取りで、意味深な笑顔を2人は浮かべていた。それを見たメグがやたらと食いついてきてしまった。


「何ですかそれはっ!?わ、私も見たいです!!ダリア?今度私にも見せてください!」


「えっ?いや、それは・・・」


「・・・私には見せられないと言うのですか?」


 悲しげな、今にも泣き出しそうな表情をされてしまうと弱いのだが、そうは言ってもあの姿はそう人に見られたくないものなのだ。そんな僕の心情も知らずにか、もう一人名乗りをあげてくる。


「あ、あの。私もダリア君のファッションショー見てみたいです」


なんとこの状況の中、シルヴィアまで見たいと言い出してきたのだ。しかも、ずいっと僕に近寄って、上目使いに。それを見たメグも対抗するように上目使いで見てきた。


「ちょ、ちょっと待って!だって、あの格好は・・・そ、そう、僕が服を持っているわけじゃないから無理———」


「それなら今度皆さんで集まって観賞しませんか?あの服は元々私が作ったものでして、私の部屋にたくさんあるんですよ」


なんとか難を逃れようとしたところにフリージア様が割って入ってくる。


「それはいいですね!このトーナメントが終わったら皆で集まりましょう」


「わ、私も参加させてもらってもよろしいでしょうか?」


「もちろんです!皆でダリア君を()でましょう!」


 メグが予定を決め、それに恐縮しながらシルヴィアも参加することになり、最後はフリージア様が愛でるなどと不穏なことを言い出した。ここに僕の意見が入り込む余地などないと思わせるほどの圧倒的な迫力で・・・。



 そんな感じで、試合前だと言うのに比較的穏やかな雰囲気だったのだが、一人の登場に雰囲気は一瞬で緊張した場へと変わってしまった。ゲンティウス殿下が僕達の方へと来たのだ。姿を認めたマシューは一目散に臣下の礼をとり、僕達にも気づかせようと目配せした。フリージア様とメグはスカートの裾を少しあげて優雅に一礼し、僕とシルヴィアはマシューに倣って臣下の礼をとった。


 王子は僕達平民の行動に全く興味を示すことなく、両手を広げながらフリージア様の元まで近づいていった。


「フリージア!今日は私の試合の応援に来てくれるんだろう?」


「はい、もちろんですよ殿下」


「マーガレット王女もよければ私の華々しい勝利の姿をお見せしましょう!・・・君はロキシード宰相の娘の・・・ティアだったか?君もどうだ?」


「はい、ゲンティウス王子。私の試合の時間が空いておりましたら、是非伺います」


「私も試合時間に問題なければ観戦させていただきます」


 こんな場所なのに、王子はまるで周りを気にすることもなくフリージア様を軽く包容して、自分の応援に来てくれるかの確認をしていた。それにフリージア様はその心の(うち)を見せないような笑顔で対応していた。


(いくら婚約者で王子でも、場所を考えて欲しいな。しかも僕やマシューの事は眼中にないようだし)


 (ひざまず)きながらも様子を見ていたのだが、王子は僕らを一瞥(いちべつ)することもなくフリージア様達と話している。話を振られたメグ達は、先程までの笑顔が嘘のような作った笑顔で王子の対応をしていた。


「しかし、フリージアよ、付き合う人間は選ばねばねばいかんぞ。こんな平民達と親しく話すなど、上級貴族に相応しくない。君もだぞティア。マーガレット王女も他国の事でご存じないかもしれないが、人は選んで付き合うと良い」


 王子はさも平民とは言葉を交わすことも(はばか)るべきだ、というような言い方で僕らを見下してくる。その言葉を跪きながら聞いている僕は、臣下の礼も止めたいくらいだ。


「ゲンティウス王子、それは———」


「殿下、どんな存在であれ時を同じく生きる者同士平等に接するべきです。それに、そんな言い方では臣民に不信がられてしまいます」


 メグが王子に食って掛かろうとしたのを察したのか、フリージア様が素早く止めに入って、王子の言葉を(さと)している。


「フリージア、君は私の婚約者だ。いつまでも教会の考え方ではいかんぞ?今のうちから王族の一員としての考え方も身に付けなければならん」


「存じております殿下。しかし、今はまだ教会に身を置く一人として、また、将来殿下の傍で支える者として、狭量(きょうりょう)(そし)りを受けぬように、多くの者の意見を殿下は聞かなければなりません」


「それは理解している。が、王族には王族に相応しい行いというものもあることも理解せよ」


「・・・かしこまりました、ゲンティウス殿下」


「分かればよい。では、行こうかフリージア。特等席で試合を見させてやろう」


そう言ってフリージア様の手を引きながら2人は去っていった。


「・・・何なのですか、あれがこの国の次の王なのですか?」


 メグは憤慨(ふんがい)だといった表情で、去っていった王子を睨み付けていた。そこには見下されていた僕達の事を思う気持ちもあったのだろう。


「ん、仕方ない、王子は骨の髄まで貴族としての言動が染み込んでる」


貴族とはこうあるべし、という言動の見本が今のだとしたら、平民としてはあまりこの国には期待できない。


「まぁ、俺たちにとっては雲の上の存在だから、下手な事して処刑されないように、顔色伺いながら生活するしかないのさ」


「そうですね。私達平民はただ静かに暮らせればそれで良いと思っているだけなのに・・・」


マシューとシルヴィアがやたら実感が籠った言い方をしているので、2人ともきっと何か面倒な事があったのだろう。


「・・・この国の生活は窮屈なのですか?」


 そんな2人にメグは他国の王女として、彼らがこの国をどう感じているのか聞きたかったのだろう。


「・・・・・・」


「その問いには返答出来ません。下手なこと言えばどうなるか分かっていますから・・・」


答え難い質問だったのだろう、シルヴィアはどう言えばいいか困っていたので、マシューが代わりに答えていた。


「そうですか・・・」


その返答にメグは理解したとばかりに一言呟いた。

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