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冒険者生活 14

 通行門を何事もなく通過し、足早に冒険者協会へと戻ってきた。すぐにマリアさんに取り次いでもらって事の次第を報告し、しかるべき対応を冒険者協会側からラモン・ロイド男爵へするようにエリーさんが怒りもあらわに訴えたが―――


「ロイド伯爵のご子息であるラモン男爵ですか・・・また、面倒な相手に目をつけられましたね」


なにか彼の人となりを知っていそうなマリアさんが難しい顔をしながら悩みだした。その顔を見たゼストさんが問いただす。


「マリアさん、いくら面倒なロイド伯の子供と言っても、やった事は犯罪だぜ。さすがに無罪放免とはならねぇだろ?」


「いいえ、ゼストさん。貴方も知っているはずよ、男爵の親であるロイド伯は数多あまたの商会を束ねる大企業家です。王家に上納する金額は全体の1割を占めるというとんでもない力を持っています」


マリアさんの話では、この国の貴族家の数は約300。それだけの貴族の家があるというのに、わずか1つの家で全体の1割を占めるというのがどれだけの事なのかと説明された。


「ロイド伯はこの国の上層部に顔が利くし、最悪でっち上げの証言でこっちが不利になる可能性もあるわ」


そんなマリアさんの言葉にエリーさんが怒りに興奮して机を叩いて叫ぶ。


「何なんですかそれっ!平民だからって貴族は何しても良いって思ってるんですか!?」


「落ち着きなさい!貴方も貴族の理不尽さはよく知っているでしょう?」


そう言われたエリーさんは少し冷静になったのか、先程までの剣幕が引いていく。その様子にゼストさんが代わって話す。


「って事は、衛兵に訴えても何も動いてくれないどころか、逆にこっちが捕まえられるってことか?」


「ええ、その可能性も考慮して動く必要があるわ。特にダリア君が狙われているならよく考えて動きなさい!」


そう言うマリアさんは僕とエリーさんを順に見やって、覚悟を聞いてきているようだった。


「・・・今回はダリア君のお陰で大丈夫だったから・・・諦めます。私が変に騒いで、ダリア君がもっと大変なことになるかもしれないから・・・」


「ダリア君はどうするつもり?」


「エリーさんがそれでいいなら僕もそうします」


「・・・そう、分かったわ。私も出来る範囲で動いてみるけど、当てにはしないでね。まだ子供のダリア君には理解出来ないと思うけど、生きていくうえで貴族の理不尽さはいずれ経験することよ。今回の件はそれが早まったというだけでね・・・」


暗い雰囲気になった部屋で、ゼストさんがこんな提案をしてきた。


「とはいえ、全て片付くまではまたエリーちゃんが狙われる可能性もあるだろ?俺が警護してても良いか?」


「・・・良いんですか?でも私プラチナランクの方に払えるだけのお金が・・・」


「何言ってんだエリーちゃん!金なんていらねぇよ!俺がやりたいからやるだけだぜ!」


そう言いながら、また白い歯を見せて親指を立ててアピールしている。きっとこれはゼストさんのキメポーズなのだろう。


「では今日の所はこれで。おそらく明日には何か動きがあるでしょうから、また昼頃に来てくれますか?」


「あっ、1つ良いですか?」


最後にマリアさんが場を締めようとした時に、僕からみんなへお願いがあった。


「どうしたのダリア君?」


「もし近い内に男爵についての事で誰かに聞かれるようなことがあったら、具体的にどう助けられたかは言わずに、エリーさんは僕とゼストさんに助けられたと言って下さい。あと、ゼストさんも僕が助けを求めたから貴族街に乗り込んだと言うことにして下さい」


僕がそうお願いすると、3人は首をかしげていた。


「・・・?別に良いが、それって本当の事じゃねぇか?」


「・・・それもそうね。私も聞かれたらそう言うけど、そもそもそれが事実でしょ?」


「具体的な事は話さないようにですよ。お願いしますね!」


僕がそうお願いすると2人とも了承してくれた。あとは男爵がどう動いてくるかでその後の動きを考えることになった。


しかし、事態が動いたのはその日の夕刻だった。




「この宿屋にダリアという子供はいるか!?」


宿屋の食堂で夕食を食べていると、数人の衛兵達が完全武装をして雪崩れ込んできた。


「・・・?はい、ダリアは僕ですけど?」


「貴様か!ラモン・ロイド男爵からの通報で男爵への不敬罪についての申し立てがあった。一緒に来てもらおう!」


「はぁ、いいですけど」


 僕がそう言うやいなや、乱暴に腕を掴まれて連行された。食堂は騒然とし、女将さんたちが心配そうな視線を向けてくるが、僕は笑顔で「大丈夫です」と手を振った。連れてこられた先は平民街にある罪人収容所で、身体検査をされてそのまま地下にある匂いが酷い牢に放り込まれてしまった。衛兵が去り際に「魔力感知器があるから、魔法を使って逃げようとしても無駄だ!」と言って去って行った。


「もっと僕の置かれている状況を伝えてくれると思ったのに、説明も何もなしでこの扱いか。弁明の機会も与えずに処刑するつもりか?」


マリアさんが言う様に証言をでっちあげて男爵への暴行犯は僕だという事にして、不敬罪で処刑するという事なのだろう。思ったよりも行動が早いようだった。しかも弁明さえ受け付けないというのであれば、いくら僕が通行門を通っていないと言っても、男爵の屋敷に行っていないと言っても、捜査もせず男爵側からの証言だけで処分されそうだ。


「まぁ実際僕が犯人なんだけど、誰にも見られていないのにこんなことが出来るなんて・・・これが貴族の権力か・・・」


そんなことを考えていると一人の人物が近付いてくる足音が聞こえてきた。


「ダリア・タンジーですね?私はラモン・ロイド男爵の執事をしているベンといいます。この度は御愁傷様です」


「はぁ、何でしょうか?」


「ふふふ、まだ状況がよく分かっていないようですね。あなたは我が当主を害したはずです。どうやってかは分かりませんが屋敷にまで侵入して男爵様を殴り飛ばすとは・・・全く度し難い」


「いえいえ、僕は屋敷に―――」


「君がどう言おうが関係ないのです。男爵様がどう思ったかで真実は変わるのですから」


僕が襲撃について話そうとすると、それに被せて弁明は無意味だと執事は宣言してきた。


「これが貴族のやり方ってやつですか?」


「恨むなら目を付けられることをしてしまった自分を恨みなさい。男爵様が考案した、違約金を利用したビジネスを邪魔立てするからですよ。さて、本題ですが、君は随分と依頼で金銭を溜め込んでいるはずです。その在処ありかを教えなさい。所持品は処刑後に迷惑料として受け取る手筈ですが、君が稼いだという金銭が宿にもなく、先程の身体検査でも無いというじゃありませんか。どこに隠しているのですか?」


僕の持ち物は基本的にほとんど空間魔法で収納しているので、宿屋には王都で購入した着替えの服があるくらいだ。男爵の目的は僕の処刑と金銭ということらしい。


「言っても良いですけど、一つ答えてくれますか?」


「ほぉ、何ですか?」


「もし、今回の事を申し立てた男爵がいなくなったら僕の身柄も解放されますか?」


「ふはは、君はここから出ることなく処刑されるんですよ!まぁ君の質問に答えるなら、申立人がいなくなってしまえば金を掴ませた役人もその金自体が懐に入らなくなりますからね。ちゃんとした証拠がなければ請求を棄却するでしょう」


「なるほど、ありがとうございます。金銭については僕を処刑すると分かりますよ」


師匠曰く、空間魔法に収納した物は術者が死亡すると魔法が破綻して空間から全て出てくるはずだと言われた。はずだと言うのも、実際には分からないのでそうかもしれないという程度のものだ。


「ふん、言う気はなかったという事ですか?まぁいい。処刑後に君の親しい者を片っ端から尋問すればいずれ分るでしょう。処刑は明朝です、それまでの残された時間をせいぜい楽しみなさい」


その言葉を残して執事は去って行った。どうもこのままにしておくと僕は処刑され、またエリーさんやもしかしたら宿屋の女将さんたちにも迷惑を掛けるかもしれないという事が分かった。そのまましばらく地下牢で今回の事を考えていると一つの結論に達した。


「さすがにここまでされると憎しみが沸いてくるね。じゃあ復讐といきますか!」


 まずこの地下牢からの脱出だ。魔力探知機を無効化する必要があるが、そもそもどうやって魔力を探知するのかは、空気中の魔力の動きの変化を感知して警報を発する仕組みだ。魔法の使用は自身の魔力を呼び水に自然界に漂う魔力を制御するので、この漂う魔力を制御するときに空気中の魔力の動きが変化するというわけだ。つまり、魔力の変化を生じさせないほどの精密な制御が可能であればそもそも探知されないということだ。ただ、かなりの集中力が求められるので、もっと簡単な方法があればそれを選びたいやり方だ。その為エリーさんの救出にはゼストさんに協力してもらっている。とはいえ出来ないわけではない。師匠の鍛錬は伊達ではない。


 脱出の前準備として、見張りが来てもいい様に身代わりを準備しておく。以前始末した襲撃者から僕の背丈に近い者を選んで収納から取り出し壁に背を預けて通路側を向かせる。そして、顔に第三位階光魔法〈幻影ミラージュ〉の魔法で僕の顔にしておく。さらに自分に〈不視化インビジブル〉を掛け、魔力を循環させ肉体強化をして鉄格子を変形させて通路に出てからまた鉄格子を元の形に戻す。


「さぁ、復讐だ!」

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