気づき
月陽は相槌を打っているだけだった。
それは気が楽で、気を使わなくて良かった。
樹さんは歩くのが遅いん月陽を気遣い同じ歩調にしてくれて、人混みが苦手な月陽を察してぶつかりそうになる時には肩を引いて誘導してくれた。
話しながら行われるそれは自然で打算は無く、月陽は嬉しかった。
「月陽ちゃん聞いてる?」
「あ、えっとなんでしたっけ」
「スタバかコメダどっちがいい?」
「……バ」
「えっ?どっち?」
「スタバがいいです。入った事なくて」
ついこないだちゃんとした店に初めて入ったくらいだ。有名なスタバなんて入った事も入ろうとしたことも無い。
あそこは選ばれし者だけが入れる場所だと思ってるし、入り難い雰囲気が漂っている。
「うん!可愛いねー!お姉さん奢ってあげる!」
「えっ、それは悪いですよ」
なんてこと言うんだ。貸しをつくったら何を持って返せと言われるか分かったもんじゃない。
頑固拒否したい。
「いいっていいって、今日のお礼だと思ってさ」
「お礼って私何もしてません」
全く折れる気のない樹さん。ここは頑なに拒否の姿勢を保つ。
年下だからと哀れまれたくない。誰とでもできるだけ対等でいたい。
その能力は今は無くてもそれで施しを受けたくはない。
「むー、意外と強情だなあ。じゃ、こうしようLINE交換。これで手を打とう」
「え、あ、はい。あれ?」
そういって手を出され、思わずスマホを渡してしまった。
あれ?前もあった気がする。
それで分かった。夜桜も樹さんも自分から動いているんだと。




