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おはようの珈琲
鼻腔を擽るは珈琲の香り。
カフェの匂いだ。
「おはよう。よかったー起こそうか迷ってたとこ」
夜桜は珈琲の入ったサーバーを手に持って月陽を見てる。
どこか照れくさそうだ。
それは私も変わらない。
「それは?」
月陽が夜桜の手のサーバーを指さして聞く。
「ゲイシャ。世界一の珈琲だよ」
夜桜にとって心を落ち着かせる方法は珈琲を淹れる事なのかもしれない。
「なに?私の為に淹れたの?」
言ってからほんの少しだけ、後悔した。
月陽は昨日の夜の事がまだ鮮明に思い出せる。
夜桜は言葉に詰まり、消え入りそうな声で答えた。
「うん。そうだよ」
照れくさそうにするなよ、私まで照れくさい。
なんとも言えない気まずさと珈琲の香りだけが部屋を満たしていた。




