夜に芽吹く桜2
月陽の頬が赤く染まる。その熟れたりんごのような愛くるしい顔を見てて自分で言った言葉が時間をかけて自分の中に溶けだす。
な、何言ってんだ!私ぃ!
少しの間我を失っていた気がする。
出来るなら今の言葉を取り消したい!
顔なんて直視出来ないと思ったのに、潤んだ漆のような瞳に映る私は自分でも驚く程に妖艶に写った。
私はどういう意味を込めたのか。
月陽の事は確実に好きだと思う。というか好きだ。
この好きは何に当てはめれば良いのだろう。
友情?性欲?独占欲?
きっと全部で、まだそれ以上の多くの意味を付けたいと望んでいる。
直接的に言わなかった、いや、言えなかったのは月陽が私に好意を抱く確信が持てないから。
要は臆病者なのだ。
月陽は私の言葉に対してどう答えるのか迷ってる様だ。
迷って、悩んでくれている。それだけで嬉しくなってしまう私はもうダメかもしれない。
「今は夜桜しか見えないよ?」
どれだけ時間がたったか分からない。1分か10分かそれ以上か。
月陽は、静寂を切り裂いて、はぐらかした。
ズキリと胸が傷んだ。それと同時に力が抜けるほど安堵した。
月陽はギュッと目を強く瞑り、仰向けになった。
手は握られたままで、それがもうひとつの答えなのだという事だと願わずには居られない。
いつからちゃんとした答えが聞ければ良いけど。
私は月陽をずっと、ずっと見ていた。
「月陽、月陽は違うかも知れないけどね、私は今この時間が幸せだと感じてるよ」
夜桜は既に眠りについていた月陽に内緒話のように言い聞かせた。
その言葉はこの時限りの言葉。
夜明けはまだ先で、月明かりが眩しい。




