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臆病者たちの選択肢
「ねぇ、私だけを見ててよ。月陽」
私は声に詰まる。顔もさぞ赤く火照っているだろう。
ドキドキが止まらない。何に対してかも分からないけど。
夜桜の瞳に吸い込まれそうになる。
この薄暗闇が私を匿ってくれればいいけど。
次の言葉は慎重に選ばなければいけない。
関係が変わる。
夜桜はずるい。この言葉は受けて側が意味を決め付けることになる。
言葉通りか、それ以上か。
頭がぐるぐるする。
「今は夜桜しか見えないよ?」
私は誤魔化した。無理だ。今は、無理だ。
握ったままの手は力強く、熱かった。
月陽は仰向けになり、目を閉じた。
私もずるい。
暫く夜桜の視線を感じていたが、知らず知らず月陽は眠りに落ちた。
夜桜はいつまでもその寝顔を愛おしそうに見ていた。
ただ、少しだけ残念そうに、悲しげに。
それでも安堵もあっただろう。




