40/395
2人の口元
夜桜が玄関前で月陽の荷物を片手分持つ。
「合鍵……」
なにやら恐ろしい言葉が聞こえたが聞かなかったことにした。
チラチラと鍵を見てくるが多分鍵を見たことがないんだろう。
きっとそう。物珍しさに鍵を見ているだけと信じたい。
「お菓子どこに置けばいい?」
「…そういえばお菓子買わないから置き場とか無いや。決めていいよ」
「そっか、お菓子は食べないっと」
じっくりと夜桜はまるでなにかにメモする様にゆっくりと呟いた。
「じゃあ、お菓子はー、ここね!」
そう言って、パスタとかレトルトを置いているキッチン横に袋ごと掛ける。
月陽は雑な相槌をうって、鍋の準備に取り掛かる。
ガスコンロに土鍋をセットして、具材を1口大に切って入れるだけ。なんとも簡単な料理だ。
2人の食費から作られる初めての料理。
まな板と包丁を持って小さなキッチンスペースに持っていく。
「……夜桜、やること別にないよ?」
「一緒にいたいだけー」
「ふーん、そ」
ぶっきらぼうに言われた言葉はどこか楽しげで、2人の口元には自然と笑みが浮かんでいた。




