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chapter4 1時間かけてスキル検証

 血塗れの牛(元凶は主に瀬尾さんの石)が息絶えるのと同時に、淡い光に包まれた牛の死骸が通路の床に染み込むように消え(ついでに飛び散ったり、俺たちの体に着いた血とか体液も消えた)、代わりにその場に牛の角(×2)と両手持ちの斧が一本残っていた。


「ドロップアイテムってヤツか?」

 状況からアタリをつけて、俺は二つの代物を『鑑定』してみた。


・銘:魔牛の角(※合成、加工用)

・属性:無

・物理攻撃力:20

・物理防御力:15

・魔法攻撃力:0

・魔法防御力:0

・スキル:『刺突(小)』


・銘:魔牛の斧

・属性:無

・物理攻撃力:35

・物理防御力:36

・魔法攻撃力:0

・魔法防御力:0

・スキル:『防錆』『重量変動(上下30%)』


 角の方はともかく(それでもなにげに、いま俺が持っている剣よりも優秀だけど)、斧の方はかなり優秀である。

 俺は瀬尾さんに鑑定結果を話して、ドロップ品を分配することにした。

「んじゃあ、角のほうは短剣代わりに俺が持つことにして、斧は瀬尾さんが持つってことでいいかな?」

「え!? いいの? いい武器なんだから、上北君が持っていたほうがいいんじゃないの? 私なら代わりに上北君がいま持っている剣でいいんだけど……」

「いや、剣というのは素人が持ってもあんまし意味がないんだ。その点、斧は素人でも使いやすいしね」

 それにさっきの瀬尾さんの容赦ない、力任せの戦い方にはもの凄く似合っていると思う。

「幸い、牛が持っていた斧と違って、こっちは人間が持てるサイズの斧だし」


 床に落ちている斧を持ってみたところ、だいたい重さは15㎏くらいだった。三割軽くできるとして10㎏強か、振り回すのにはちょっとキツイか? と思う反面、片手でも軽々と扱える気がするアンバランスな感覚に首を捻ったところで――。


「ああ、そうか。牛をぶっ殺したのでレベルアップしてるのか!?」


 そのことに気付いた俺は、早速、自分と瀬尾さんのステータスを『鑑定』してみた。


・名前:上北直輝

・年齢:16歳

・Lv1→13

・HP:17→63(58)

・MP:18→55(42)

・筋力:20→70(66)

・知力:19→24(19)

・敏捷:16→48(43) 

・スキル:『変質者』『鑑定』『剣術中級』『罠探知初級』『夜目』『対人型魔獣特化(小)』


・名前:瀬尾桃華

・年齢:16歳

・Lv1→13

・HP:15→52(45)

・MP:14→49(39)

・筋力:13→65(60)

・知力:15→18(18)

・敏捷:25→77(73) 

・スキル:『速度増幅』『空間把握』『翻訳』『危機察知』『裁縫初級』『対巨乳特化(中)』


 かなりのレベルアップを果たしている。……果たしているんだけれど、なんだろう瀬尾さんの微妙な方向への、残念な進化は?

 とりあえず、結構なMPがあるので、『変質者』の能力について、鉄剣と魔牛の角、魔牛の斧を使ってこれを検証することにした。

 手を放していてもスキルは発動するか確認してみたけれど、案の定、無理のようで、基本的に触っていないと干渉はできないらしい。


 そんなわけで、まずは右手に魔牛の角、左手に錆びた鉄剣を持って、まずは魔牛の角にある『刺突(小)』を複成(コピー)してみた。

 結果、一回目失敗。

・MP:55(42→39)

 なるほど、失敗してもMP3消費するのか。

 もう一度やって二回目成功。

・MP:55(39→36)


 これを鉄剣に複写する。

・MP:55(36→33)

 同じくMP3消費。


 続いて最初に鉄剣に複写した『自動修復(小)』にスキル変動(1ランク上)をかける。

・MP:55(33→31)

・スキル:『刺突(中)』

 MP2消費。ランクダウンも多分同じだろうから、再度スキル変動(1ランク上)を施したが、これは発動しなかった。


「一度かけたものには重ね掛けできないのか、インターバルが必要なのか、微妙なところだな~」

 ともかく、この場では検証できないことがわかった。


 でもって、スキル変質(逆転)については、ちと勿体ないけれど、魔牛の角の一本を犠牲にして試してみることにした。


・銘:魔牛の角(※合成、加工素材)

・属性:無

・物理攻撃力:20

・物理防御力:15

・魔法攻撃力:0

・魔法防御力:0

・スキル:『抜き取り(小)』


 ……どないせいって言うんだ、こんなスキル???

 ちなみにMPは5消費して、31→26になっていた。いや、マジで牛に使った分でMPがスッカラカンになっていたんだな。あぶねーあぶねー。


 と、ここまでわかったところで、

「あれ? 触っていればOKなら、もしかして自分のスキルにも効果があるんじゃね?」

 と思って自分のすべてのスキルにスキル変動(1ランク上)をかけてみた。


・名前:上北直輝

・年齢:16歳

・Lv1→13

・HP:17→63(58)

・MP:18→55(17)

・筋力:20→70(66)

・知力:19→24(19)

・敏捷:16→48(43) 

・スキル:『変質者』『賢者(ナビゲーター)』『剣術上級』『罠探知中級』『遠見』『対人型魔獣特化(中)』


『変質者』自体には効果が及ぼせないようだが、他のスキルは軒並み上昇した。

「あれ、MPマイナス2×5だから、残り16かと思っていたんだけど?」

 なぜか1多いことに疑問を覚えた瞬間――。


【解:MPは魔素のある場所であれば、1時間に1回復します】

 不意に機械的な女性の声と、テロップがステータスウインドウに流れた。

(な、なんだこれ!?)

 そう思うのと同時に、

【解:『賢者(ナビゲーター)』による自動回答です】

 なんとまぁ、『鑑定』が1ランクアップすると、解説までついてくれるらしい。

 痒いところに手が届く親切設計というべきか、余計なお世話機能というべきか、日本製の家電のような微妙な高機能である。


「――とはいえ、これは使える」

 ほくそ笑んだ俺は、瀬尾さんに『変質者』の効果を説明して、彼女のスキルもレベルアップさせることを提案した。

 説明を聞いて納得した瀬尾さんの手を掴んで――

 

・名前:瀬尾桃華

・年齢:16歳

・Lv1→13

・HP:15→52(45)

・MP:14→49(39)

・筋力:13→65(60)

・知力:15→18(18)

・敏捷:25→77(73) 

・スキル:『疾風迅雷』『立体機動』『調教(テイム)』『予知(最大五分前)』『裁縫中級』『対巨乳特化(大)』


 ついでに瀬尾さんの持っているスキルを複成(コピー)して、自分に複写しようとしたが、

【警告:スキルスロットが一杯です。複写した場合、どれかひとつのスキルを削除する必要があります】

 という『賢者(ナビゲーター)』からの警告があった。


(なんで? 武器は大丈夫だったじゃないか?)

【解:武器には装備スロットがあり、現在マスターが持っている鉄剣のスロットは5です】

 そういうことらしいので、どう見ても瀬尾さん特化型のスキルを、わざわざ自分のスキルをひとつ潰してまで付ける意味がないと判断して、代わりに鉄剣に付けられるだけのスキルを付けてみた。


・銘:無

・属性:無

・物理攻撃力:16(10)

・物理防御力:18(9)+4

・魔法攻撃力:0

・魔法防御力:0

・スキル:『硬化(小)』『自動修復(小)』『刺突(中)』『防錆』『重量変動(上下30%)』


 自動修復と防錆のお陰で、見違えるほどきれいになった剣を確認しながら、俺は満足げな様子で自分のスキルを確認している瀬尾さんに恐る恐る尋ねた。


「……なあ、『対巨乳特化(大)』は、俺の他のスキルを複成(コピー)したほうが有効なんじゃないかぁ?」

「え? なんで???」


 本気で理解できないという顔をしている瀬尾さんを前に、俺は説得の言葉を失ったのであった。

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