chapter31 死霊王決戦! 0秒で瞬殺?!
書籍作業の途中で、WEB作品を書きたい病になったので更新しました。
「クハハハハハ、よくぞ来たなアルセリア王女とその他大勢。随分と頑張って――」
「奥義『グロリアス・ブレード』っ!」
死霊王の口上が終わる前に、俺はMPを三分の二消耗する必殺技を放った。
空中に巨大な魔法陣が浮かび上がり、そこから城でも一刀両断できそうな光の刃が現れて、有無を言わせず敵を真っ二つにする最終奥義である。
もともとは俺を含めた他のメンバーが「必要ない」と抹消を希望したスキル(例えば、『宝くじで下から二番目のアタリが出る確率が0.5%上がるスキル』だとか『戦闘中にスカートまくれてサービスできるスキル』、『苦いものを食べても顔に出ないスキル』『初めて会った犬に吠えられないスキル』『熱いコーヒーを飲んでも舌が火傷しないスキル』などなど)を集めて、適当にコネ合わせたら、なぜかとんでもないぶっ壊れ性能の攻撃スキルが生まれた……という、曰くありげな技であった。
なんでこんな屑スキルを集めて、こうなったのかは『預言者』も、まったくわからないとのこと。
「鰻と梅干し理論で、食い合わせが悪すぎて変質したんじゃないですかね~。『変質者』の面目躍如でやんすね~」
適当なことを言っていたが、案外的を射ているのかも知れない。
どうでもいいスキルを組み合わせて、あり得ないスキルを生み出す。これが俺の『変質者』としての本来の能力の最終形態であり、いまだ慣らし運転状態……というのが現状であったりするのではないかと思える。
偶然にせよ奇跡にせよ、この『グロリアス・ブレード』を習得したことで、俺の戦闘スタイル(対ボス戦特化)が固まったようなものだ。
「ぐはあああああああああああああああっ!?!」
ともかくもものの見事に『グロリアス・ブレード』が、口上の途中の死霊王を両断し、爆炎に包まれる。
『預言者』曰く、現在のレベル差だと直撃最低でもHPを2000は削ったはずで、クリティカルなら一発でお陀仏でもおかしくないとのこと。
「やったわけ!?」
リーフェが、それ絶対にフラグだろう? という台詞を口に出すのと同時に、俺たちの周囲に黒い霧のようなものが発生して、全員が肌にピリピリした不快感を覚えた。
で、案の定――。
「グオオオ……。貴様、人の台詞が終わらないうちに不意撃ちをかけるとは、それでも勇者か……!?」
煙が晴れた元の場所へ、ボロボロになっても割と元気そうな死霊王が、憤怒の表情で浮遊していた。
・NAME:死霊王
・JOB:《穢穴》第30層のフロアボス
・Lv60
・HP:1851(/3654)
・MP:4511(/4811)
・筋力:1639
・知力:241
・敏捷:667
・スキル:『死霊魔術(大)』『鑑定』『呪文短縮』『性魔術(大)』『対聖魔術耐性(大)』『物理防御(中)』『死霊召喚』『死の暗黒』(※防御無効で相手のHPの15%に特殊ダメージを与え、吸収した50%のHPを自分のものとする)『即死の雲』(※12%の確率で相手を即死させる)
「――案外、削れてないな」
「クリティカルとはいかないまでも、直撃した直後はHPを2500以上削っていたっす。けど直後に『死の暗黒』を食らって、ある程度回復させられたみたいでやんすね」
攻撃後の首尾を『鑑定』で観測した俺の感想に、『預言者』が解説してくれる。
「いまのをもう一度食らうのは危険だな。手加減してはこちらが斃されるか。やむを得ん、アルセリア王女たちには生きている間に、儂の魔羅……もとい、恐怖を味わってもらいたかったが、死した後にゾンビとして傍らに侍らせることで妥協をしよう」
死霊王の死者を冒涜しまくる発言に、瀬尾さん以下の女子の面々が憤怒の表情を浮かべる。
そんな彼女たちの怒りと嫌悪感もなんのその。
「出でよ、無念を残し《穢穴》で命を落とせし、我が下僕たちよ!」
手にした錫杖を振るった死霊王の『死霊召喚』に合わせて、床に魔法陣が現れ、そこから青黒い肌をしたゾンビ――趣味なのか、いずれもうら若い貫頭衣を着て武器を持った女性ばかり――が十人ほど、床からせりあがってくるように現れた。
普通の人間のような見かけの相手が五人ほど、猫の耳や兎の耳、ロバの耳を持った獣人が三人、もともと黒いのか腐って黒くなったのか不明なダークエルフらしいのがひとりに、ホビットらしい少女がひとりという陣容である。
言うまでもなく、《穢穴》に落とされるだけあって、全員がAカップからBカップといったところであった。
「ああああああああああっ! ティルザ!? それにヘルヴィ、イーネス、カトリーナ、リューリ!」
フローリスが愕然とした表情で、剣を持った女戦士と他の人間種を指さしながらその名を連呼する。
「それにマリカにミエリッキ、サイラもいますね」
シーラが獣人を痛まし気に見ながら、その名を次々に呼ぶ。
「シルッカとテルヒもこんな形で再会するとは思わなかったわ」
最後にリーフェが、ダークエルフとホビットの少女を見据えて哀し気に吐き捨てた。
「一応聞くけど、もしかしなくても、彼女たちは……」
「うん。ボクたちと一緒に《穢穴》に放逐されて、途中で命を落とした仲間だよ」
俺の質問に悄然と肩を落とすフローリス。
そういえば最初に会った時に俺が拾った鉄剣を見て「ティルザの剣だ!」って言ってたな。死者とはいえ、思い入れのある相手が敵となって立ち塞がったとなれば、フローリスを筆頭にリーフェもシーラもやり辛いだろう。
「クハハハハッ! ゾンビとはいえ友人知人を手にかけるのは躊躇するだろう。だが、儂の傀儡と化したそ奴らに情けはないぞ」
高笑いをする死霊王を前に、唇を噛み締めるフローリスたち。
でもって――。
「おらおら、死ねーっ――っていうか、往生しなさいよ!」
もともと思い入れのない瀬尾さんはまったく躊躇することなく、ゾンビたちの真っただ中に飛び込んで行って、『魔牛の斧』を振り回してゾンビを袈裟切りにして、なおも半身が動いている頭を斧で叩き潰して完全に息の根を止めるのだった。
「あああああっ、カトリーナさん!?」
「……お前、死者への尊厳はないのか?」
愕然とするフローリスたちと死霊王。
その所業にゾンビの方が腰が引けて――特にホビットの少女が恐慌をきたして、キャーキャー悲鳴を上げながら背中を向けて――逃げようとしたのを、瀬尾さんは冷静に『魔牛の斧』をトマホークのように投げて、頭から唐竹割りにする。
「うわあああああ……なんか思ってたのと違う。涙ながらに情を割り切って、悲痛な覚悟で向かって来るかと思ってたのに。無茶苦茶、冷静な作業で始末してるわ」
それを眺めていたティルザのゾンビが、心なしか流れる筈のない冷や汗を拭いながら、そう慄きながら感想を口に出す。
つーか、ただの生きた死体かと思っていたら、きっちりと明瞭な意識があるじゃねーか。
それに気づいたのは勿論俺だけじゃなくて、フローリスも顔を輝かせて問いかける。
「ティルザさん、記憶があるの!? ボクたちのことが――」
「ほれ、行け!」
フローリスの台詞が終わらないうちに、腕に抱きかかえられていたカーバンクルのカー君のところへ飛んで行った『預言者』が一発頭を叩くと、怒ったカー君が火炎放射器のように『レインボーブレス』を噴射して、その射線上にいたティルザとヘルヴィ、イーネスを消し飛ばした。
「きゃああああああああああああああああああっ!!」
悲鳴を上げるフローリスを他所に、回転しながら戻ってきた『魔牛の斧』を再び振り回す瀬尾さん。
「どうせもう死んでるし、敵なんだから情けは無用っ!」
葛藤ゼロであっさりと割り切って、逃げ回る残りのゾンビたちをミンチにする。
止めようもない無慈悲な暴力を前に、
「ノリ軽っ!」
幾多の戦場を駆け巡って屍山血河を経験してきたであろうユリアでさえも、そんな瀬尾さんの容赦のなさにドン引きするのだった。
9/16 若干修正しました。




