chapter25 男女密室(?)25日、告白タイム
『ユニット感知』をもとに、瀬尾さんが駆けて行った方角に向かうと、途中で半透明の死霊が三体ばかり、たったいま首の骨(?)をへし折られたような状態で、断末魔の悲鳴を上げて消えていった。
死霊、物理攻撃は利かない筈なのに、どうやって倒したんだろう? と疑問に思いつつ、
・銘:死霊の布(※合成、加工用)
・属性:闇
・物理攻撃力:0
・物理防御力:3
・魔法攻撃力:0
・魔法防御力:12
・スキル:『異常状態防御(小)』
せっかくなので行きがけの駄賃にドロップ品を拾って歩いて行くと、三叉路があってその右手側の角の所で、瀬尾さんが顔を出して「グルルルルル!」と、野生の獣じみた威嚇の唸りをあげていた。
そのくせ、全身から構って欲しい、宥めて欲しいオーラをこれでもかと垂れ流している。
「…………」
果てしない徒労感を感じながらも、テクテクと瀬尾さんの方へ歩いて行くと、
「何しにきたのよ! あっちであの巨乳とよろしくやってればいいんじゃないの!?」
目を吊り上げて憎々し気に吐き捨てられた。
いや、俺もそうしたかったんだけど、周りからの同調圧力によって、こっちに来ざるを得なかったんだよ――と、言いたいのを堪えて、
「さっきも言ったけど、俺とユリアとはそんな関係じゃないぞ。単に成り行きとパーティの戦力強化のために誘っただけで、他意はない」
まあ、あの胸を思う存分、毎日揉めるんだったら、お荷物でも仲間に入れただろうけど。
「それよ!」
途端、なぜか余計に機嫌を損ねる瀬尾さん。
「それ?」
「私はずっと『瀬尾さん』なのに、なんでさっき会ったばかりのデカ乳2号(1号は姉の事)のことは『ユリア』って呼び捨てなのよ!?」
いや、俺、リーフェもシーラもフローリスも全員呼び捨てだけど?
「なんでって、呼びやすいからなぁ……瀬尾さんの場合は、もともとクラスメイトだった頃から『瀬尾さん』だったし、瀬尾さんも俺の事『上北君』って呼んでるじゃん」
もしくは『アンタ』呼ばわりだな。
「それはそっちがずっと名字で呼んでいるからで、それに私も名前で呼び合うような親しい男子とかいなかったし……」
(けど、アンタとはそろそろお互いに名前呼びしてもいいんじゃないかと思うのよ。けど、それだと本格的に恋人みたいな感じだし……)
なにやらブツブツ呟いている瀬尾さん。
「え? なんだって?」
聞き返すと、顔を赤らめてワタワタする瀬尾さん。
「な、なんでもないわよ!」
「そうか? なんかそろそろお互いに名前呼びしたいけど、恋人みたいで恥ずかしい――とか言っていたように聞こえたけど」
「わかってんだったら、聞こえないフリなんかするなっ!」
正直に口に出したら怒られた。解せんな。
「だいたい、上北君はもともとあの第二王女が好みのど真ん中だったんでしょう?! 性格の悪さと悶着があったせいで嫌っているだけで。だったらアレそっくりで性格も良くて慕ってくれて、なおかつアレより巨乳のユリアのが、私なんかよりもよっぽど好みってことじゃない!」
「――!!」
「目から鱗みたいな顔で納得するな~~~っ!! そこは『そんなことはない』とか『他人と比較しても仕方ないだろう』とかフォローする場面でしょうが!」
自分で俺を説得しておいて、納得したらしたで、なんで理不尽にキレられなけりゃならんのだろうか?
「ん~、でも、俺、瀬尾さんのこと好きだよ」
とりあえず面倒臭いので、直截に告白してみた。
「な、な、な、な、な、な、ななななんで!?!」
刹那、頭の先から湯気が出そうなほど真っ赤になる瀬尾さん。
「いや、このあたりが曖昧なままだと話がややこしくなって、いつまでもループして終わらんだろうから。で、瀬尾さんは俺の事どう思っているの?」
「き……嫌い嫌い! そういうデリカシーのないところが大っ嫌い!」
「そうか。まあ、それでも俺は瀬尾さんのこと好きだけど」
再度、告白すると、瀬尾さんは身悶えして……なぜか通路の壁に、何度も頭突きをかましだした。
「……痛い」
「そりゃ痛いだろうな!」
「ということは現実ってことよね? なんでこんな時にこんな場所で……っていうか、なんで私に告白するのよォ。自分で言うのもなんだけど、可愛げがない、嫉妬深い、すぐ暴力を振るう、天邪鬼だし、胸もない女のどこがいいわけ?」
案外、自分を客観視できていたんだなぁ。
だったら、多少なりとも性格を改善してくれてもよかったろうに……と思いながら、俺は瀬尾さんに惹かれた理由を口に出す。
「一番最初に好意を持ったのは、やっぱり神殿の転移の部屋で、ひとりだけ俺の肩を持ってくれた時かなー。女子連中はあのクソ王女の尻馬に乗って、男子連中は日和やがったただ中で、きちんと自分の信念に従って行動できるのは凄いって思った。正直、俺には瀬尾さんが女神に見えたもんだ」
「女神!? 私が?! え~、そんなことないしぃ……」
否定しつつも、満更でもなさそうな瀬尾さん。
まあ、その後、三日も経たないうちに女神からアマゾネスへと、認識が変わったわけだが。
「その後も、一緒に行動をして、良いところも悪いところも知って、そうして徐々に時間をかけて『瀬尾桃華』という女性を好きになっていった。一目惚れみたいに浮ついた気持じゃない。しっかりと心に根を下ろした恋心だと自信を持って言えるよ」
胸を叩いて断言する俺に対して、
「ううううううっ、わ、私は上北君のことずっと変な奴だと思ってたわ。変だけど、頼りになるというか、不真面目かと思うと必要なことは確実にやってくれるし、気が付いたら、いつの間にか頼っている自分が変だと思って、それで変な気持ちの正体がなんなのか、ずっとわからないでモヤモヤしてたんだけど、さっきユリアが現れて上北君が取られるんじゃないか、夢中になって私のことをお座なりにするんじゃないかと思ったら、なんかもうたまらなくなったの!」
それで脳天から床に叩きつけられた俺のほうがたまったもんじゃなかったんだが……。
「それで、いま好きだって言われて気が付いたの。わ、私も上北君のことが割と好きかも……って。あ、割とっていうのは、好きか嫌いかで言えば好きの範疇に入っているというか、時たま大好きの部分に入ることもあるというか、通常は大好きのところに居座っているんだけど、ふらふら勝手に出ていこうとするから、無理やり力ずくで止めている状態というか……」
それはもはや好きと言っているのも同然なのでは?
「だから、浮気は許さないというか、必要以上に他の女の子――フローリスも含めて――とベタベタしないこと。特にあの巨乳王女とは! 約束してねっ」
必死に言質を取ろうとする瀬尾さんに向かって、俺は満面の笑みとともに、
「うん、無理。他の子は他の子で魅力があるし、巨乳は巨乳で別腹だからなぁ。手を出すなとか無理だわ」
心からの誠意ある回答をした。
その途端、瀬尾さんが全力で放った顔面への膝蹴りによって、俺は再びどこぞの川を挟んで、死んだ愛犬ジャッキーと再会するのだった。
「相変わらずクズなマスターっすねー」
「てゆーか、いいのユリアさん?」
「別に構わん。旦那様はそれだけ器の大きな男ということであろう」
「器が大きいというか、節操がないというかだねー」
「まあまあ、丸く収まったんだからいいじゃないですか~」
当然のように出歯ガメたちはいましたよ。
難聴系優柔不断な主人公とは一線を画す赤裸々な主人公です。




