chapter24 瀬尾さんの説得1時間。いまだ混乱中。
「縺ェ繧薙〒縺昴螂ウ縺後%縺薙↓縺k縺ョ繧茨シシ溘縺ヲ繧縺九√↑繧薙〒荳雁圏蜷帙′縺昴>縺、縺ョ蜻ウ譁ケ繧偵@縺ヲ縺k繧上¢√繧ー繝ォ縺縺」縺溘滂シ√陬丞縺」縺溘シ溘??隕区錐縺ェ縺」縺溘o繧医∽ク雁圏縺シ√縺ゅ→縲∽サ悶逧b縺ェ繧薙〒荳雁圏縺ォ蜊泌鴨縺励※縲∫ァ√r謚シ縺輔∴縺ヲ縺k繧上¢シ溘諡俶據縺吶k縺ェ繧峨√∪縺壹縺昴閻舌l邇句・ウ縺ァ縺励g縺シシ!!!」
俺が両腕を背後から全力で押さえつけ、両足をシーラが押さえて、その間にリーフェとフローリスがせっせとロープで瀬尾さんを縛り付けているにも関わらず、もの凄い力でいまにも目前のユリアに掴みかかろうとする瀬尾さん。
筋力では瀬尾さんを上回る俺とシーラがふたりがかりなのにも関わらず、いまにも振り解かれそうな勢いだ。
「……つーか、頼むから文明人に戻ってくれ」
興奮のあまり野生化して、言葉にならない意味不明な咆哮を放つだけの瀬尾さんを、なんとか宥めようと俺は必死に語りかける。
「ちなみにいまの叫び声を人語に直すと、『なんでその女がここにいるのよ!? てゆーか、なんで上北君がそいつの味方をしているわけ! グルだったの?! 裏切ったの!? 見損なったわよ、上北ぁ! あと、他の皆もなんで上北に協力して、私を押さえているわけ!? 拘束するなら、まずはその腐れ王女でしょう!!』と捲し立ててるっす」
『預言者』が瀬尾さんの周りを飛び回りながら、いまの叫びを翻訳してくれた。
「サンキュ。あー、まず誤解しているようだが、彼女はあのクソビッチ第二王女じゃない。その妹のユリアだ。俺たち以前にあの第二王女に陥れられて、この《穢穴》に堕とされた被害者で、立場は俺たちと変わらないらしい」
「グルルルルル……いもうと……?」
どうにか野人からターザンくらいには理性が戻ったらしい。
禁呪である『異世界勇者召喚』の儀式の犠牲者である俺たちを前に、居たたまれない様子で肩を落としているユリアの全身を舐めるようにチェックし始めた。
「…………。……髪が痛んでいる。色合いが薄い。目の色が違う。目の形もやや下がり気味。爪の手入れができてない。肌も水浴びだけでお風呂に入った様子はないので荒れ気味。鎧もろくに手入れされずに痛んでいる。バストサイズが1サイズ……ぐっ……大きい」
女のチェックは細けーなー。
ややあって瀬尾さんの抵抗がなくなったのでロープは解いたが、念のために両手両足の拘束は解かないでおく。
「――OK。わかったわ。確かにアレとは違うってのは理解した。で、その妹がなんでここにいるわけよ?! あ、なんでってのは上北君とフローリスと一緒にいるのって意味よ?」
不信感丸出しの瀬尾さんに対して、俺とフローリスとで今に至る状況の流れを、お互いに補完しながら説明する。
「ということで、鑑定してみたらLv28の聖騎士らしいし、『盾マスタリー(大)』スキルも持っているようだから、この際、欠けていた盾役をやってもらおうかと仲間に誘ったんだ」
「反対反対、大反対っ!!!」
俺の言葉が終わらないうちに、間髪入れずに瀬尾さんが全力で反対を表明した。
「あの女そっくりの妹なんて虫唾が走るわ。そもそも信用できない。いまのパーティでも十分よ。調和を乱す因子は必要ないわ!」
一気呵成に捲し立てる瀬尾さんが、首を巡らせてリーフェとシーラに同意を求めるも、
「う~~ん、別にいいんじゃないのー」
「そうですね~。盾役がいるといないのとでは、後衛としては安定度が違いますから」
あっさりと賛成するふたり。
「なんでよ!? アイツの姉が私たちをこの苦境に導いたのよ?! 仲間の仇でもあるのよ!」
「そう言われても、ワタシたちを捕らえたのは衛兵だし、この《穢穴》に転移させたのは神殿の下っ端神官だし、直接、そのユリア姫だっけ? に対する、怨みつらみとか、えーと、こう刺々しい感情というか……」
「確執ですね~」
シーラのフォローに喉のつかえが下りた顔で、ポンと手を叩くリーフェ。
「そうそう直接の確執とかはないから、どーでもいいよ」
「あたしもそうですね。国に怨みがないかと言われれば確かに釈然としないものはありますけど、もともとあたしたち亜人種は二級市民として人権がないも同然でしたからね~。仕方ないというか、正直、王族とか雲の上の相手過ぎて、怒りの感情は湧きませんね~」
リーフェとシーラ、どちらもサッパリしたものである。
「……なんかこれじゃあ、私一人が聞き分けのない、女のドロドロした感情を捨てきれない女々しい人間みたいじゃないのぉ」
アウェーなのを感じたのか、瀬尾さんがドロドロした怨みがましい口調で不満をあらわにする。
「いや、まあ、セオさんの場合は、直接、アルセリア第二王女に恩讐があるわけだから、よく似たユリア様を前に冷静でいられないのはわかるけど」
フローリスが困ったように、ユリアと瀬尾さんとを見比べる。
視線を感じたユリアは、一歩前に出て瀬尾さんに向かって片膝を突いて頭を下げた。
「異世界より召喚された勇者セオ殿。貴女の現在の苦境は我が異母姉アルセリア並びに王宮に巣食う愚かな同胞が招いたもの。同じ血を引く一族として、また異母妹として深く陳謝する。これもすべて我が力なき故の失態。どのような叱責・拷問であろうと甘んじて受けよう。だが、貴殿らの盾となって、旦那様方とこの《穢穴》を突破したいというのも私の本心。私を使い潰すつもりで構わん。贖罪にもならぬのは重々承知しているが、どうか貴殿らの一助とさせていただけないだろうか?」
そこには一点の曇りもない真摯な真心があった。
「う~~~~っ! なんか狡いわよ。これで断ったら、私の器が圧倒的に小さい駄々っ子みたいじゃない!!」
((((胸もな))))
その場にいた仲間全員が思った瞬間、むっとした瀬尾さんに跳び上がっての頭突きを顎に受けた。
「なんで俺だけ……!?」
「ふん! ――いいわ、わかったわよ。とりあえず盾役としては受け入れる……というか、お望み通り肉壁として使い潰してあげるわ」
それから、ごくごく小さな声で、
「……くくくっ、このふしだらな胸が磨り減るくらい、いつも最前線に蹴り飛ばしてやるわ。削れろ~、萎め~っ……」
という、なんか恐ろしい怨念を感じさせる呟きが聞こえた。
「…………」
なんだかなー。瀬尾さんが反対している理由って、姉に対する遺恨よりも巨乳に対する私怨によるものではあるまいか?
それから普通の声で続ける。
「認めるけど、仲間として認めるかは別よ。あくまでここを脱出するまでの暫定メンバーとしか思わない」
「それでいい。だが、私は己の信念と民のため、なにより旦那様のためにこの命を捨てる覚悟だ」
凛とした張りのある声で応えるユリア。
「つーか、さっきから出てくる『旦那様』ってどーいう意味よ?」
リーフェの素朴な疑問に、シーラが首をひねりながら俺を見た。
「文脈と視線の向きからして、カミキタさんですよね~?」
いや、俺も訳がわからんというか、気が付いたらこう呼ばれていたんだ。
「――ふっ、決まっている。嫁入り前の乙女の柔肌。それも口には出せない卑猥な部分を思う存分、揉みしだかれ、熱烈な愛を囁かれたのだ。この身はもはや旦那様と夫婦になる以外にないではないか」
「「「「えええええええええええええええっ!?!」」」」
虚飾混じりのユリアの熱い告白に、瀬尾さん、リーフェ、シーラ、フローリスが驚愕の叫びをあげた後、白い目で俺を見た。
「いや、待て。誤解だ、フローリス!」
「なんで真っ先にフローリスに釈明するのよ!?」
ジタバタと暴れる瀬尾さん。シーラが足を押さえる役目を放棄したので、俺も渾身の力と技を駆使して、さらには複写したばかりの『呪い』まで使って、瀬尾さんのステータスを下げることで、どうにか抑えるのがやっとである。
(まさか『呪い』を仲間に使うとはなぁ……)
お陰で、この一カ月の間、必死にスキルを覚えようと努力して習得した『リリアン編み(小)』のスキルを上書きせねばならなかった。
不毛な思いを抱きながら、きっちとユリアの言葉を否定しておく。
「告白なんぞしとらん!」
「むぅ? 言ったではないか。『君が必要だ』と」
不満そうに口を尖らせるユリア。
「『盾役として』必要だという意味だ」
そこは明確に訂正しておく。
俺とユリアのやり取りを聞いていた瀬尾さんが、おどろおどろしい声で確認する。
「……つまり、あの卑猥な部分を揉んだというのは、本当のことってことよねぇ?」
「――うっ……!」
当の本人が『卑猥な部分』のところで、さり気なく巨大なオッパイを触ったので、誰の目にもどこを触ったのか一目瞭然であった。おまけに、フローリスという証人がいるので誤魔化しようがない。
とりあえず行為の正当化を図るべく、俺は必死に舌を回らせた。
「確かに揉んだ。だが、あの時の俺はどうかしていたんだ。そう……そうだ。考えてもくれ。砂漠で水なしで遭難していた人間が、どうにか砂漠の植物の根を齧ったり、朝露を啜ったりして必死に渇きに苦しみながら、一月も放浪していたところへ、コンコンと透明な水が湧き出るオアシスがあったとしたら、何もかも忘れて飛び込むのが生き物としての本能ではないか」
「誰が木の根よ!」
俺の真剣な弁明の言葉に対して、両足のバネを使った渾身の頭突きで応える瀬尾さん。
顎から脳味噌が揺すられて、目から火花が散ったぞ。
そんな俺たちの様子を眺めていたユリアが、感心しない眼差しで瀬尾さんを咎める。
「まあ、確かに旦那様の言い方も問題ではあるが、そう一方的に旦那様を責めるのもお門違いであろう。別にセオ殿は旦那様の情人というわけでもないのであろう?」
「ぐっ――ち、違うわよ」
「で、あろうな。旦那様は我が胸に我を忘れておったからなぁ。男として健全な証拠。それを非難するのはおかしいであろう。特別な関係で法界悋気を起こしたというならともかく。当の本人である私が許しておるのじゃ。セオ殿が怒る理由はないぞ」
正論というのは時として武器になるんだなぁ……の典型であった。
「それにしても――」さらに続けて俺の周囲にいる面々(の主に胸)を見回して、ユリアはしみじみと嘆息した。「苦労しておったのであるな。エルフ殿やドワーフ殿は種族として仕方ないとしても、セオ殿といいフローリス殿といい、その年であまりにも不憫な……」
本気で嘆いてくれるユリアに、いまだに性別を訂正する機会がなかったフローリスは苦笑いをしただけだが、瀬尾さんといえば――。
「…………」
怒りでブルブルと震えていたと思ったら、頭突きを警戒する俺の意表を突いて、
「コンチクショーッ!! 結局、方向性が違うだけで、根っこは姉と同じじゃないの、この妹は!!!」
肩を掴んでいる俺の腕を始点にして、両足で思いっきりジャンプして、
「うおおおおおっ!?」
あまりの勢いにロケットで打ち上げられたように俺ごと宙に浮く。
さらに立っている状態の俺の頭を両足で挟み込み、下半身の力に自身の体が旋回する勢いを付け加え、両足を使って俺の事を思いっきり床に逆さまに叩きつけた。
「ぐはあああああああああああああああああっ!?!」
踏ん張りの利かない空中で成すすべなく投げられる俺。
「おお、『ヘッドシザーズ・ホイップ』っすね!」
感心したような『預言者』の声を聞きながら、朦朧とした俺の目と耳に飛び込んで来たのは――。
小川の流れる河原で、元クラスメイトたちが地獄の鬼を相手に野球をしていた。
『代打、上北直輝君。背番号10』
放送に呼ばれてそっちへ行こうとしたところで、鳩尾に一発、追撃の一撃を受けて覚醒したのと同時に、
「――上北君の馬鹿ァァァァァ~~~~~っ!!」
なぜか俺を非難して、ドップラー効果を伴いながら、この場から走り去っていく瀬尾さんの後姿であった。
「……なんで俺が非難されてボコられにゃならんのだ?」
床の上に尻をついた姿勢で起き上がった俺に向かって、
「なんでじゃないよ! すぐにセオさんを追いかけないと!」
フローリスが急き立て、リーフェとシーラも頷いて立つように俺を促す。
「追いかけろって言われても……そもそも、瀬尾さんが本気で逃げたら、俺でも追い付けないぞ」
つーか、この非常事態に愛憎渦巻かされて、若干辟易気味なんだが。
スパイスとして恋を楽しむのはいいよ。けどお前ら、生き延びることをまずは第一に考えろよ! と、声を大にして言いたいが、リーフェとシーラもそれが当然という顔で、ユリアは「ま、私は旦那様に側女の四人や五人いても、気にせんからな」と鷹揚としたもので、明かに今度は俺がアウェーの立場になっていた。
「追い付けるよ! 絶対に追い付けるように走っているに違いないよ!」
確信を込めたフローリスの言葉に、試しに『ユニット感知』で瀬尾さんの位置を特定してみたら、ここからさほど離れていない角を曲がったところで、ウロウロと行ったり来たりしていた。
(あざといなぁ……)
すげー面倒臭いと思いながらも、俺は制服についた埃を払って立ち上がった。




