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chapter23 上北君、5秒で覚醒する!

「なんだそれは!?」

 咄嗟に受け身を取ったのか、よほど頑丈なのか(後者っぽい)、かすり傷一つ負わずに立ち上がったユリア姫とやらがフローリスに食って掛かる。


「だから、ナオキをその気にさせるのには、ユリア様のその豊満な胸が必要なんですよぉ。お願いです、助けると思って一肌脱いでください」

 その勢いにオロオロと泣きそうな声でフローリスが必死に説得する。


「冗談抜きで私に一肌脱いで、と、殿方に胸を揉ませろと言うのか?! だったら自分が――」

 反論しかけたユリア姫の視線が、フローリスの胸元へと落ちて、当然ながらすとーんと起伏のない形状を目の当たりにして、

「……ああ、いや、済まなかった。……その。女の価値は胸だけではないぞ、うん。それにこれから成長する可能性も……」

 痛々し気に視線を逸らしながら、一転して無理した優しい笑顔になって、フローリスを励ますのだった。


「いや、その気の使いようはボクじゃなくて、別なひと(セオさん)に向けていただきたいのですが……いや、駄目かな? 逆に燃料をくべることになりそうな。胸の話題は極力回避してもらった方がいいかな? いや無駄かな。すでに存在自体が水と油というか、不俱戴天の敵になりそうな……」

 ブツブツと独り言ちるフローリスを、珍妙な生物を見るような目で見詰めるユリア姫。


 俺はといえば、

「豊満な胸、巨乳ってどのくらいだ? リーフェの倍くらいかな~」

 と、漠然と考えていた。

「なんすかね。野生のスカンポとか舐めて『草甘ぇええっ!』と、すっかり粗食に慣れた漂流者が、三十年ぶりに助けられて、目の前に三段重ねのホールケーキを出され、『さあ、好きなだけ召し上がれ』と言われても、『なんか胸やけしそう』と、警戒している感覚っすかねぇ」

 そんな俺の様子を眺めながら、『預言者(ウィスパード)』が「不憫でやんすな~」と、流れる涙を拭うフリをした。


「この苦境を脱出するにはナオキの突破力が必須なんです! そのためにはユリア様の玉体に触れることで、男としてのリビドーを再燃させる必要があるんです!」

「いや、しかし、未婚の乙女が胸を殿方に触らせるということは……」

 言葉を並べるフローリスと、なおも躊躇するユリア姫。


「どーでもいいけど、骨ども(あちらさん)の準備が整ったみたいだぞー」

 俺が指さす先では、二体のスケルトン・ナイトが盾を前面に押し立てたファランクスモードで、じりじりとこちらに迫って来る。

 その背後に隠れてスケルトン・ビショップが何やら禍々しい呪文を唱えていた。


「くっ、この狭い場所でファランクス態勢か。背後にはスケルトン・ビショップの支援か。少女よ、先ほどの魔術を高威力で叩き込めることができるか? 魔力は持つか?」

 半分、壊れた盾を構えて、ナマクラ剣を手にフローリスを守る体勢になったユリア姫が、一発逆転を賭けてフローリスに尋ねる。

「あ、はい、それは大丈夫です」

 素直に頷くフローリス。ま、『自動MP回復(中)』と『最大MP増大(中)』スキルを持っているフローリスは、魔力に関してはすでにLv40~50台に突入しているから、ボス戦でもなければガス欠になることはないんだが。

「けど、あれはどうかな。鑑定してみたけど、ナイト(あいつら)の盾って生意気に『魔力遮断(中)』が付いているから、この距離から放てる威力の魔術だと、効果がかなり減衰しそうな感じだぞ」

 あの盾のスキル便利そうだな。複写できるもんならやっておきたいな。俺、武器や防具のスキルがイマイチ充実してないから、スキル保存じゃなくて、直接触って丸ごと複写しておきたいんだよな~。


 あと、『魔術反射』ではなくて『遮断』だから、まるっきり効果がないわけじゃないだろうけど、『遮断』を上回るようなもっと高威力の魔術を使えば倒せるだろうけど、ただでさえ狭い通路なんだから、この距離で使えば自爆みたいに、自分にもダメージが返ってくるだろうから使えないだろうな。ゲームと違って。


※なお、地上にいて生き残った男子9名は、ゲーム感覚でバックドラフトやフレンドリーファイアーで、軒並み重傷を負ったことから、安全第一とばかり最高でもLv12と初心者講習が終わった鉛級冒険者程度の実力しか持たないまま、『なんで勝手に異世界から拉致されて、命かけなきゃならんねん』という、しごく真っ当な理由から、王宮から出て好き勝手始めた――中には商売人として大成功を収めた者もいる――ため、第二王女アルセリアが頭を抱える原因にもなった。


 まあいざとなればフローリスだけ抱えて『瞬動』で距離を置いて、ユリア(クソビッチの妹)姫ごと、薙ぎ払えばいいだけのことだ。

「――と、マスターは心中で申しております」

「きゃあああああああああ!」

「やむを得ん。民のために盾になることが王族のさだめ。ここを我が死地としよう」

 余計な『預言者(ウィスパード)』の言葉に、フローリスが絶望の悲鳴をあげて、ユリアが悲痛な表情で覚悟を決めた。


「ふ~~ん、あ、そう」

 どーでもいい話だ。俺はフローリスを連れて後ろに下がろうと手を伸ばした――ところで、フローリスが思い余った様子で俺の両手を掴んで、

「えええい、ままよ! ユリア様、失礼いたします!!」

 後ろを向いているユリアの白銀のプレートアーマー、さらにはその下のシャツとパンタロンの隙間から、彼女の前面胸部――異様に膨らんだ場所へと導いた。

「きゃああああああああああああああああああああああああああああッ!?!?」

「うわああああああああああああああああああああああああああああッ?!!!」

 絹を引き裂く乙女の悲鳴と、変なモノ触らされて混乱した俺の悲鳴が木霊する。


 が――。


(なんだ、この感触は!? 硬いようであり、蕩けるように柔らかいようでもあり、でも張りがあって先端がツンツンしていて……)

「あ、や、駄目っ。そ、そんな風に揉まれたら、ああ……」

 身悶えするユリア。

 同時に俺の胸の奥に熱い鼓動が湧きだし、その衝動に従って掌に収まらない柔らかな双丘を、思う存分こね回す。


 ――ッパイ。

 同時に、忘れていた何かが、固い殻を破って、徐々に声を大にするのだった。


 オッパイ……オッパイ……オッパイ


「オッ……パイ……?」

 そう口に出した途端、

おっぱい! 

おっぱい! おっぱい! 

おっぱい! おっぱい! おっぱい! 

おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい!

おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい!

おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい!

おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい!

おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい!

 天啓の如き力強い声が天を割き、地を割り、俺の血をたぎらせた!!


「――そうだ、コレがオッパイだ!」

 いままで俺の周りにあったのはオッパイではない。これこそが俺の求めていたモノなのだ!


「わあああっ、来たよナオキ! いい加減に手を放して、戦わないとっ」

 フローリスに促されて、目前まで迫っていたスケルトン・ナイトたちを一瞥した俺は、しぶしぶ手を放して、

「――あ……?」

 虚空を見詰め、ボーっとしている巨乳王女に、『倉庫(ストレージ)』から取り出した『不死鳥の盾』と『鋼鉄の剣+10』を渡した。


「その武器と盾じゃ心もとないだろうから渡しておく。――ま、こんな連中、10秒で片をつけてみせるけど」

 気負いなくそう言って月影丸(カタナ)を手に、『瞬動』発動した。


 とりあえず手近なスケルトン・ナイトに向かう――相手が盾で防御するのを横目に――と見せかけて、壁との僅かな隙間を足捌きですり抜け、そのまま一直線にスケルトン・ビショップへ向かう。

 いきなり目の前に現れたように見えただろう、ビショップが慌てて手にしたワンドを向けるよりも先に首を切り飛ばして、そのままスカスカの体を掴んで(ついでにスキル『複成(コピー)』をしたところ『呪い(カース)』が取れたので保存しておく)、態勢の整わないナイトたちへ向かって片手で放り投げる。


 狭い通路で振り返ろうとして中途半端な姿勢になっていたナイトたち。ビショップの体が当たった衝撃でたたらを踏むのを確認して、俺は足元にあったビショップの頭蓋骨を踏み込み――中国拳法で言うところの震脚――で粉砕しつつ、狭い場所で長い獲物が邪魔なのかモタモタしている槍スケルトン・ナイトを『連撃』で粉砕した。


 一気に1VS3と立場が逆転した剣スケルトン・ナイトは、まだしも与しやすいと見たのか、ユリアとフローリスに向かうも、正気を取り戻したユリアが『不死鳥の盾』と『鋼鉄の剣+10』を構えて、これを阻む。


 強引に盾でこれを突破しようとした剣スケルトン・ナイトの盾と、ユリアの『不死鳥の盾』が正面から激突し、あっさりとユリアに弾き返された。

「ああ、この背中で無辜の民を守っている感触。そして、迫りくる敵の硬くて重い猛攻を受けて立つこの手応え……これこそ私が求めていた戦いだ!」

 なぜか感動に背を震わせながら、ついでにカウンターで剣スケルトン・ナイトの盾を持った手を切り飛ばすユリア。


「ラッキー♪」

 それはともかく、ちょうど盾のスキルが欲しいと思ってたところだ。スキルを複写するまで、盾を《穢穴(アビス)》に吸収させるわけにはいかないから、その間はじっとしていてもらおうか。

 そう思いながら、俺は剣スケルトン・ナイトの首から下を早々再生できないレベルで粉砕するのだった。


 で、『不死鳥の盾』に『魔力遮断(中)』改め『魔力遮断(大)』にレベルアップさせたスキルを複写したところで、

「ちょうど10秒っすね」

預言者(ウィスパード)』が床に落ちているドロップ品――『スケルトンの剣』とか『スケルトンの盾』などのステータスの低い武具――の上を飛び回りながら言った。


「フェアリー?! 一体、君は何者なのだ!?」

 呆然としたユリアに向かって俺は手を差し伸べた。

「上北直輝。さっきも言ったように異世界から召喚された元勇者……という名目の、現代では絶滅寸前のサムライさ」

「サムライ……? 騎士のようなものか。私はヘンリエッテ・ユリア・モエニア――いや、いまや、ただのユリアだ」

 自嘲するようにその名を告げる。

「そうか。ま、よろしくな、ユリア」

 改めて差し出した俺の手を握るユリア。

「ああ、よろしくな、ナオキ。それと……責任は取ってもらうぞ(・・・・・・・・・・)


 頬を染めて意味深に言い放たれた俺の胸にほのかなトキメキが。同時に背筋に、なぜか冷たい汗が流れた。

 同様にフローリスが床にうずくまって頭を抱えていた。

「あああああ……絶対に、この後、修羅場が待っているよぉ。それもいろんな意味で」


 煩悶している俺たちの耳に、スケルトン・ポーンの大軍を片付けたらしい、瀬尾さんたちが、

「こらーっ、上北君! フローリス。どこにいるのーっ!」

 足音も荒くこちらに向かってやって来る気配が、まるで破滅への前奏曲のように響いてきた。

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