chapter13 水浴びといえばノゾキだと小一時間
なし崩しの戦闘が終わったところで、全員のステータスを鑑定してみると、直接、戦いに参加していなかったシーラ以外の全員のステータスが上がっていた。
○俺
・名前:上北直輝
・年齢:16歳
・Lv15
・HP:87(79)
・MP:71(51)
・筋力:92(88)
・知力:25(25)
・敏捷:60(60)
・スキル:『変質者』『賢者』『剣術上級』『罠探知中級』『遠見』『対人型魔獣特化(中)』『翻訳』『主人公補正』『精神耐性(小)』
○瀬尾さん
・名前:瀬尾桃華
・年齢:16歳
・Lv15
・HP:79(55)
・MP:65(38)
・筋力:77(38)
・知力:19(19)
・敏捷:90(62)
・スキル:『疾風迅雷』『立体機動』『調教』『予知(最大五分前)』『裁縫(中級)』『対巨乳特化(大)』『狂乱(中)』『主人公補正』『鈍器戦闘(初級)』『裸族』
○フローリス
・名前:フローリス=クライフ
・年齢:16歳
・Lv13
・HP:60(50)
・MP:95(90)
・筋力:41(41)
・知力:49(49)
・敏捷:26(26)
・スキル:『傾国傾城』『水属性魔術(中級)』『火属性魔術(中級)』『魔力回復(中)』『使役』
○リーフェ
・名前:〈青の森〉ヨークス族の娘・リーフェ
・年齢:15歳
・Lv10
・HP:29(27)
・MP:39(37)
・筋力:39(37)
・知力:21(21)
・敏捷:39(39)
・スキル:『狩猟(上級)』『連射』『投擲武器(上級)』『鷹の目』『植物知識Ⅲ』『音楽の達人』
○シーラ
・名前:シーラ・クロタル
・年齢:17歳
・Lv11
・HP:46(46)
・MP:34(30)
・筋力:52(52)
・知力:22(22)
・敏捷:18(18)
・スキル::『神聖魔術(中級)』『戦意高揚の歌(中)』『鍛冶(上級)』「細工(中級)』『料理(中級)』
どうやらどの程度、相手にダメージを与えられたか・相手と自分のレベル差に応じて経験値が配分される仕様らしい。同じパーティに所属していればある程度経験値がもらえるパワーレベリングはできないということだ。
んでもって、俺の『精神耐性(小)』というのは、確実に最後のシーラの歌の影響だろうな。
今後の事もあるので『精神耐性(中)』へワンランクアップしておいた。
そんなわけで最後に瀕死の二匹まとめて豚の丸焼きにしたフローリスが、直接1VS1でオーク二匹を倒した瀬尾さんと同じくらいレベルアップしていた。
なお、瀬尾さんの『裸族』というのは、裸になればなるほど強くなるというもので、素っ裸で戦った場合にはすべてのステータスが倍になるというご褒美スキルだったのだが、
「すぐに消して! 上書きして! なんでもいいからっ!」
「え~~、勿体ない……」
渋る俺目掛けて本気の斧が飛んできたので、しぶしぶ『精神耐性(中)』を複写して上書きした。
さて、戦闘が終わるのと同時に、白目を剥いて昏倒した――ついでに起きた時には体中の筋肉痛を訴えていた――瀬尾さん。
「きっと緊張の糸が途切れて、倒れちゃったんですね」
「「「(いや、お前の歌のせいだよ、歌の)」」」
訳知り顔で同情するシーラを、思わず半眼で睨む俺、リーフェ、フローリスの三人。
ともかくも疲労困憊して、身動きもならなかった俺たちは、安全そうな傍の木陰に移動して(寝ている間に俺が触ると文句を言われそうだったので、瀬尾さんはリーフェとシーラとで運んだ)、一休みしていた俺たちだが、一番最後に目覚めた瀬尾さんが、ここで初めて我が身の状態を自覚したらしい。
「ぎゃああああああああああああああ!?!」
いまさらながらの悲鳴を上げて、上半身を両手で隠したが、いまさら感動も感慨もあるようなでもないので、
「落ち着け。スキルの影響で服がボロボロになっただけだ」
そう冷静に言い聞かせる。
「う、うぅぅぅぅ……」どうやら多少は戦闘中の記憶があったらしい、瀬尾さんは茹蛸のように真っ赤になったかと思うと、微妙な涙目で俺に向かっておずおずと上目遣いに聞いてきた。「……見た?」
「??? それこそ主語を明確にしてもらわないと、俺としても返答に困るのだが?」
「……う、うぅ。私の下着よ」
Q:返答の例
①パッド入りのスポーツブラか? それ蒸すと思うから外した方がいいんじゃないのか。どうせ意味ないし。
②縞々のパンツか? 瀬尾さんらしくて似合ってるんじゃないかな。
③見てない。な~んも見てないよ。
――さあ。どれが正解だ、『賢者』さん!? 個人的には①が俺らしくていいと思うんだけど。
【解・不明です】
心なしか『賢者』さんの返答が呆れかえっているような響きを伴っていた。
なら、俺は俺の信じる道を突き進むぜ!
ちなみに正直に①と②を答えた俺が、瀬尾さんにマウントを取られてタコ殴りされている間、シーラたちは甲斐甲斐しく昼飯の支度をしていたのだった。
そんでもってお昼は焼肉だった。当然オークからのドロップ品である『豚肉(普通品質)』である。
だいたい10㎏くらいのブロックだったので、各自が食べられそうな量ということで、半分ほどを鉄剣(無事だった)で薄切りにして、それを野生のハーブやスパイスに浸して、焼いた岩で鉄板焼きにして食べるという、豪快極まりない昼食であった。
で、瀬尾さんは腰に巻いていたお陰で、どうにか無事だった制服の上着を着て、腰には俺の制服の上着を没収して、ぐるりと巻いた変則腰蓑スタイルで当座、やり過ごすことにしたらしい。
「後で洗って返すわよ」
「いえ、JKの腰に巻いた制服とかご褒美ですので、そのまま返してもらって一向にかまいません」
「……やっぱ返すのやめたわ」
ひと悶着あったものの、ちょうど昼食ができたということで、全員が集まって焼いた岩を囲んで昼食となった。
焼き終わった肉を俺と瀬尾さんは枝を切って作った箸で、他の三人は枝に突き刺して食べるやり方で、次々に頬張る俺たち。
「塩がないのが玉に瑕だけど、美味いなー」
「あー、お塩は欲しいですよね~。どこかでドロップするのを待つか、岩山エリアで岩塩でも探すか……」
俺の言葉に同意しつつ、次々に慣れた手さばきで追加の焼き肉を焼くシーラ。さすが『料理(中級)』スキル持ちである。
三分の一くらいは残るかな? と思っていたのだが、食べ始めると皆、意外な健啖ぶりを発揮して、たちまち10㎏の肉は、各自の胃の中に納まり、それぞれの血となり肉となり脂肪となった。
「う~~っ、久しぶりに肉食べた~っ! ここんところ木の実とか、果物ばっかりでたんぱく質に飢えてたから、なおさら美味しかったわ」
リーフェがお腹を押さえて満足そうなゲップをする。
「つーか、いまさらだけど、エルフって肉は食わない菜食主義者じゃなかったのか?」
「あ~、それ異世界人がエルフに抱いている定番の偏見だけど。だったらなんで弓持っているのよって言いたいわね」
ふと思った何気ない疑問に、リーフェが一目瞭然の事実を手にして言い放つ。
「そりゃそうだ。人間ばっかり撃ってるわけにもいかないだろうからな。そういえばその弓と矢は手製なん?」
「弓はそうだけど、矢の方はそのへんで拾った良さそうな石を研いでシーラに加工して、作ってもらっているわ。どっかでドロップか宝箱にちゃんとした弓矢が入ってれば、さっきのオークも確実に仕留められてたんだけど……」
確かに。今後は各自の装備の充実に努めるべきだろう。
「水浴びしたい……」
お腹が一杯になって、いまになって汗が気になりだしたのか、瀬尾さんが滝つぼの方を見ながらそう呟いた。
「ああ、そうですね。ジャングルの中を走ってきて泥だらけですし、着ているものの洗濯を兼ねて水浴びをするのもいいですね~」
食後の跡片付けをしながら、シーラもそれに同意する。
実際、何度かここで水浴びをしたことがあって安全は保障されているとか。
「んじゃ滝を挟んで向こう側で俺とフローリスの男性陣が、こっち側で瀬尾さん、リーフェ、シーラの女性陣が使うってことでどうだ?」
ちょうど滝つぼの真ん中あたりに大きな岩があって壁になっているし、それでなくても滝から落ちる水煙で、カーテンを敷かれたみたいに左右で遮断されているので、俺がそう指さしながら提案したところ、
「うん♪」
フローリスは二つ返事で了承して、
「えー、別に見られてもどーでもいいから一緒にいたほうが安全じゃない?」
「あ、あたしもナオキさんだったら、大丈夫だと……」
リーフェ、シーラはさらに素晴らしいお誘いの言葉をかけてくれた。
「反対はんたい! みんな非常事態で唯一の男であるコイツを頼もしく、紳士だと信じているみたいだけど、それはバイアスかかっているだけよ! もしくは吊り橋効果ね。とにかく男と一緒の水浴びなんてとんでもないわ!」
いまだに日本人的倫理観で反対をする瀬尾さん(フローリスが小声で「ボクも男なんだけど……」と抗議していたが耳も貸さず)こそ、俺に対するバイアスがかかっているとは思うけど、まあここでグダグダ言っていても仕方ないので、とっとと場所を移動することにした。
「……まあなんでもいいけど、汗まみれだしさっさと水浴びしようぜ」
「そうだね」
面倒臭くなったので、フローリスを誘って石伝いに向こう岸へと向かう。
そこへ、瀬尾さんの不信感丸出しの声が追ってくる。
「覗かないでよね! 覗いたら殺すわよ!!」
これが洒落にならないから怖い。
「やらんやらん」
俺とても命は惜しいし、命と天秤に賭けるほどの胸でもないので、気軽に手を振って安請け合いをするのだった。




