episode1 異世界召喚させられ五分で処刑
気軽な小説が書きたいんや~~!
ということで、書籍版執筆の合間に発作的に書きました。
【変質者】……その名の通り、極めて特殊で特別な性質を持った者だけが持てるスキル。※触れるな危険。
鑑定の宝玉とやらに映し出された俺のスキルを目にした瞬間、にこやかに笑ってクラスメイト達の能力結果に一喜一憂していた、この国の第二王女にして《狭間渡しの巫女》だという金髪碧眼の美少女(推定17歳・巨乳)が笑みを強張らせ、素早く俺から身を引いた。
それと同時に近衛兵だか近衛騎士だかが俺と王女の間に武器を構えて割って入る。
「いやいや、ちょっと待て。確かにちょっとエッチな……美少女と美幼女と男の娘が出てくるゲームや漫画はやり込んでるけど、いきなりリアル女子。それも一国の王女様にセクハラするとかないから――つーか、お前らからもなんか言ってくれよ!」
俺同様に突然この異世界ガイアースに強制召喚させられたクラスメイトに擁護を頼むも、
「やだ……上北ってやっぱり変態だったのね」
「前々から目付きが怪しいと思っていたのよ」
「はっきり鑑定にでているとか、どれだけのド変態なわけ!?」
「オンナの敵!」
「人類の害悪!」
「死ね変質者っ!!」
クラスの女子からは東南極高原(最低気温マイナス100℃)なみの冷たい視線と罵声が飛んできた。
まさかの背中からの攻撃に愕然となる俺。
男子連中は――基本的にウチのクラスは草食系が多いせいか――女子の勢いに呑まれて、ダンマリを決め込んでしまったようだ。
中村、加藤、真田~っ! お前らにもゲームや漫画を貸してやった仲じゃないのか!? こんな時こそ友人の苦難を救うべきだろう!!
つーか、これが友情の現実か!? 女の友情は軽くて割れやすいというけど、男の友情はリバーシブルで『本日閉店』と『開店』がコロコロと、風見鶏のように変わるものだったらしい。
なんという連中だ!
憤慨する俺を余所に、出入り口にまで下がった王女様が、恰幅のいいいかにも大臣といったオッサンに、何やら耳打ちしている。
チラチラと俺を見る目が汚物を見る目であるのが、なにげに怖いんですけど!?
え、なに、もしかして勝手に異世界に召喚しておいて、いきなり変質者扱いで処刑コース?! 展開が斬新過ぎてゲームと漫画で鍛えた俺の2次元頭脳をもってしても理解不能なんですけど!!
「ちょっと! いくら何でもこの扱いは理不尽なんじゃない!」
と、そんな俺の前に女神が立ちはだかってくれた。
「確かに妙な名前のスキルだけれど、だからといって上北君を変態扱いするのはおかしいわよ! 実際にそんな目にあった娘なんて聞いたことないじゃない!」
女神の名は『瀬尾桃華』。陸上部の期待の星で、ポニーテールが良く似合うアクティブな美少女である。
気性もサバサバした姐御タイプで、同性異性を問わずに人気が高い。高校に入ってからまともに会話をした、俺にとって数少ない女子だ。
「そうはいっても桃華、図書委員で本好きの山県さんは、『速読』と『分析』スキルだったし、野球部の高橋君は『投擲武器マスター』と『身体強化』だったじゃない。やっぱり本人の素質とか、性癖が反映されているとしか……」
それに対して女子陣が不満そうに反論するも、学園の姐御にして運動部のアイドル相手に、表立って立ち向かうのは不利だと悟って、段々と声が小さくなる。
『女神様バンザイ! これで勝つる!』
瀬尾に一睨みされ、威勢の良かった女子陣が不承不承黙り込んだのを確認して、俺はクラスの女子どもにお尻ぺんぺんをして、女神には感謝の踊りを捧げたのだった。
「ケケケッ。ザマアみさらせ、このうすらトンカチども!」
「上北君も調子に乗らない――変質者じゃないとは思うけど、変なのは確かよね」
振り返った女神に窘められた。
「てへ、ぺろ☆」
と――。
「なんですか、あの身の程知らずに偉ぶったブサイクな女は?」
私語が止んだ大広間――郊外にある神殿の『召喚の間』だというのは後から聞いた――に、苦々しい王女の声が響いた。
ちなみに聞いたこともない言語なんだけれど、この広間全体に『翻訳』の魔術が施されているとのことで、同時通訳みたいな形で俺たちの耳には日本語と重ねて聞こえる。
「はあ? ブサイク……!?」思わず素っ頓狂な声を張り上げる俺。
ここで悪しざまに言われたのは瀬尾のことだろうけど、同性愛者でもない限り男の十人中九人が振り返る美少女様だぞ。
そりゃ確かに異世界でなおかつ人種が違えば、美醜も違うかも知れないけど、王女のお付きの侍女の顔ぶれを見ても、基本的な美意識はさほど変わらな……そこで、俺の美少女センサーが、王女を含む異世界の女たちと、瀬尾との決定的な違いを感知してしまった。
王女(推定Gカップ)、侍女A(推定Fカップ)、侍女B(推定Hカップ)、侍女C(推定Iカップ)。
そして瀬尾に関しては、天は二物を与えずというか、陸上をする上では有利なんだろうけれど、胸に関しては見事な関東ローム層。男と見まごうばかりの平坦な地平がどこまでも続いているのだった。
「オッパイか!?!」
「どーいう意味よ!? てゆーか、やっぱり変態だったの、上北君!」
俺の視線を感じてか、慌てて両手を交差させて胸を隠す瀬尾。だが、残念ながらそうやっても男の方が、まだ胸筋がある分、盛り上がるのに比べて、哀しいほど変わらぬ背中のような胸があるだけである。
「その通りです。女の魅力とは豊かな双丘にあるもの。胸のない女など男のなりそこない。生物的欠陥を持った醜い存在です。異世界ではなぜそのような女ともつかぬ中途半端な存在を処分しないのか、理解に苦しみます」
そんでもって俺の推測をあっさりと肯定する王女様。
「なっ――!」
絶句する瀬尾。
ついでにもう見たくないとばかり、王女は侍女から渡されたハンカチで目を覆って、俺と瀬尾を視界から取り除く。
「残りの者たちだけで十分です。この者たちは《穢穴》に還すように」
大臣(仮)に向けて指示したらしい王女の決定事項を受けて、オッサンが「はっ!」と腰を曲げたのと同時に、俺と瀬尾とは槍を構えた兵士たちによって十重二十重に包囲され、有無を言わせず鉄製の手枷足枷猿轡を噛ませられて、クラスメイトたちと離れ離れにドナドナされるのだった。
いや、ラノベだったら責任感の強いクラス委員とか、完璧超人の正義漢とか、粋がった不良枠とかが騒ぐ展開でねーの?! 男子、お前ら全員つくづく小市民の事なかれ主義だな、おい!!
あと女子、なにげに瀬尾が虐げられているのを見て留飲下げてるんじゃねーよ! つくづく性格悪いな!!
そんな思いを視線に込めて、引き摺られながら俺は元クラスメイトたちにガン飛ばした。
こんなもん書いてる暇にエタってる作品をどーにかしろというご意見は
(∩゜д゜)アーアーきこえなーい
します。仕事と書籍版のほうで手一杯で、WEB版までまじ卍で手が回りません。
あと一カ月くらいしたら時間ができるので、それまで申し訳ありません。
作者「というか、最近、お前が何を考えているのかよくわからなくなってきた」
ジル「いえ、私に愚痴られても……」
作者「原稿書いていても、悩むんだよ! 勝手に動いてくれよ! 主役だろう。昔は勝手に行動してたじゃないか!」
ジル「それを考えるのが作者のお仕事なのでは……? 別に悩まずにやりたいようにやればよろしいかと」
作者「それでWEB版グダグダになったからリカバリーが大変なんだよ……」
ジル「ははぁ、自業自得というものですわね」