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「そうだ。それでこそ面白い。で、どこ行きたい」
「君の期待にはこたえられないが。残念ながら僕はどこに行きたいと思えるほどの知識はない」
「んじゃあ、何か好きなもんは?」
「ない。ちなみに嫌いなものもない。そうだ、癖のある食べ物が好きだ」
つまんないやつ!とヴァイスは頭を掻きむしった
自分のことを面白いと思ったことは無いが、さすがに腹が立ってくる
子供っぽいと思ったが近くにあった水を思わずかけてしまった
ヴァイスは目をぱちくりさせた。酒場がしんと静まり返って気まずくなったが、構わずに口を開く
「あんまつまらないっていうから水かけてみたけどどう?」
「……く、くあははははは。突拍子もないな!」
「そうかも。悪かったな」
「いや、十分面白かった。つまらないままよりそっちのほうがずっといい」
ヴァイスはいたずらっ子似ている笑顔で答えた
悪いことをしようとしている後ろめたさのあるわくわく感が目を輝かせだした。同世代よりは大人び居ているが、リリアナもまだ10歳の子供だ
面白いの誘惑に勝てるわけがない
「僕、全部行きたい」
「全部かいいな。じゃあ、まずは海だ」
「いや、山にしよう!山の中の洞窟を探検してみたい」
いままで、止められていたが思わず勢いのままに言ってしまった
恐る恐るヴァイスの顔を伺う。いやな顔をしていたら、謝らなくてはならない
ヴァイスは謝ることなく目を輝かせた
まさか自分の意見が認められるとは思わず、じんわりと嬉しさがこみ上げてきた
「海は後で行こう」
「気にすんな、これはお前の旅だろ」
ヴァイスは旅にこだわりを見せた
100年も眠っていたのに言葉が通じていることは不思議だ。常識外れに思えるが、知識はそこまで差がない。ハンバーグは見たことなくても、フォークはきちんと扱うことができている
「僕の旅か」
「そうだ。坊ちゃん、旅は初めてかい?俺はここの酒場のマスターだ。いい情報はあるぞ」
「情報?」
「秘密の宝がある洞窟があるって噂の山がここらにあるらしいぜ」
二人は嬉しそうに顔を見合わせた
行先は決まったものだ
秘密、宝、洞窟なんていわれてわくわくしない旅人なんていないだろう
「まあ、今日はもう遅いからうちの宿に止まっとけ。安くするぞ」
「旦那商売上手だね」
「褒めても安くはしないぞ」
明日は午前8時に次話投稿します