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屋根裏部屋の公爵夫人  作者: もり
タイセイ王国編
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番外編:賭けの行方


「――ねえ、ジュリアン。カードゲームをしましょうよ」

「カードゲーム? お前とか?」

「ええ」


 オパールの誘いに、ジュリアンは鼻で笑った。

 今まで一度もジュリアンに勝てたことがないからだ。


「あら、負けるのが怖いの?」

「バカを言うなよ。俺がお前に負けるわけがないだろ」

「じゃあ、賭けをしても平気ね。私が勝ったらもう一日滞在を延ばしてもらうわ」

「……なら、俺が勝ったら、そのうるさい口を閉じろよ」


 オパールの挑発にジュリアンは乗ることにしたらしい。そんな二人のやり取りをクロードは微笑んで見ていた。


 オパールたちは今、リュドが生まれてから初めての里帰り中である。

 王都には立ち寄らず、まっすぐホロウェイ伯爵領へ帰郷したのが三日前。


 マルシアたちからの熱烈な歓迎を受けたとき、そこにジュリアンがいたのはオパールもクロードもかなり驚いた。

 ジュリアンはもう十年以上帰っておらず、どうやらトレヴァーやマルシアからはしっかりお小言をもらったらしい。

 そのため、オパールも言いたいことはたくさんあったが飲み込んだ。


 それからは、クロードの両親や兄家族などの訪問で、忙しくも楽しい時間を過ごしていた。

 ところが、先ほどの昼食の席でジュリアンは明日にはここを発つといきなり告げたのだ。

 その理由は間違いなくホロウェイ伯爵が明後日に帰ってくるからだろう。


 せっかく家族が久しぶりに揃うはずだったのに、とオパールは残念だった。

 そこでリュドがお昼寝中の今、カードゲームでの賭けを持ちかけたのだが、ジュリアンはオパールの意図をわかっていても応える気はないらしい。


「――ずいぶん手慣れているじゃないか」

「カードはつい最近までよくやっていたのよ」

「へえ?」


 オパールが手際よくカードを切って配ると、ジュリアンが意外そうに言う。

 子どもの頃は上手くできなかったのだが、オマーの相手をする間にすっかり上達したのだ。

 相手の手を読むこともある程度できるようになったのだから、もうジュリアンに負け越すことはない。――と思っていたのだが、甘かった。


「――これで五勝目だ。賭けは俺の勝ちだな、オパール」


 手札をテーブルに放ったジュリアンの顔は得意げで、オパールは悔しさに唇を尖らせた。

 そんなオパールに、クロードが笑いながら席を替わるよう頼む。


「ジュリアン、今度は俺と勝負だ」

「何を賭ける?」

「俺が勝てば、オパールは今まで通り言いたいことを言う。負ければ、当分の間はアレッサンドロ陛下の妨害をしてやるよ」

「……いいぞ」


 アレッサンドロ国王はジュリアンを自国に滞在させようと、様々な手を打ってくるのだ。

 そして始まったクロードとジュリアンの勝負は、三勝二敗でクロードが勝った。


「ありがとう、クロード。これで私はまたジュリアンに言いたいことを言えるわ」


 家族で集まりたいというのはオパールの我儘なので、ジュリアンが領館に帰ってきてくれただけで十分だと思うことにした。

 そんなオパールの気持ちをジュリアンは台無しにしたいらしい。


「やっぱり、クロードにイカサマは通用しないか」

「当たり前だろ?」

「ちょっと待って。ジュリアン、私のときもイカサマしていたの?」

「気付かないやつが悪いんだよ」

「信じられない! クロードもどうして教えてくれなかったの⁉」

「……真剣勝負に口出しはできないよ」

「真剣じゃないわよ! イカサマなんだもの!」


 そこから〝男の友情〟に対するオパールの不満が爆発した。

 結局、二十年ぶりに領館に集まった幼馴染三人は、最終日を昔と変わらず仲良くケンカして過ごしたのだった。




発売中の『屋根裏部屋の公爵夫人3』@カドカワブックスでは、親子3人のあれこれや、まさかの!?なことがありますので、ぜひ書籍版もよろしくお願いします!

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