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マジか!?  作者: 夜凪
9/18

封印解除の儀式は化学実験っぽいでした。

「さて、グチグチ言ってもしょうがないし。兄貴に夢枕に立たれるのも正直勘弁なので、サッサとやる事やって見ましょうか」


散々叫びまくった後、なにをおっしゃる、と突っ込まない2人は非常に大人だ。

ありがたい。


1つ息を吐くと、何食わぬ顔で兄の残した手順の紙を眺める。

先ずは、私の封印とやらから。


兄が書き残した手引書によると、幼い頃、私は霊能力なるものを持っていたのだが、あまりに大きすぎる力に振り回され、眼に映る幽霊や化け物にただ怯えるだけだったそうな。

泣きじゃくる私を哀れに思った兄が、いろいろな人の協力のもと調べて、封印なるものを施してくれたらしい。

幼かった私は、力そのものを夢の産物と消化して、今ではその頃の記憶も朧、と………。


「あぁ、そういえば、小さい頃怖い夢とかたくさん見てた覚えがうっすらと。それかなぁ?」

はて?と首を傾げても、ここには正解を解いてくれる人物は居ない。


「え〜と、グラスの中に清らかな水を満たして陣の中央に置く………。ミネラルウォーターでいいかな?確か富士山麓の美味しい水がどっかに………」

冷蔵庫をゴソゴソ。

あ、あったあった………。


トクトクとグラスに水を注ぐ。

「…………………アレでいいのか?」

「…………………俺に聞くな」

微妙な顔でささやき合うイケメンなんて見えません。

なにも聞こえません。

いいじゃん、霊峰富士山のお水だよ?

問題なんて無い!………多分。


「で、ロウソクをそれぞれのとんがりの先に立てて〜〜。カップの水の中にコレを3滴垂らして〜〜」

なんだかチョット楽しくなってきた、かも?

蝋燭に照らされた薄暗い部屋の中は、独特の雰囲気。


「で、左の薬指でクルクル〜〜…………て、いつまで混ぜるんでしたっけ?」

そこで、隅に控えてくれてる浅宮さん達を振り返る。

「印が現れるまでって書いてあるけど」


おう。

適当だね、兄よ。

ザックリ説明と文句を言おうとした時に、視界の隅で何かが光った。


明らかに蝋燭の灯りとは違う色合いに、視線を手元に落とす。

蝋燭の炎が、軸と同じ色に光っていた。


赤、緑、青、橙、紫、そして金。


おおよそ炎としてはあり得ない、まるで絵の具のような鮮やかな色に呆気にとられて、ポカンと口が開いて固まっているうちにも不思議現象は進行していく。


六芒星の模様を伝うように炎の色が移動していき、やがてグラスまでたどり着き、そして水の中へと渦をまいた。

慌ててつけたままの指を持ち上げる。


そんな私の慌てる様子をよそに水はグルグルと渦を巻き、綺麗なマーブル模様を作り、最後にポンッと白い煙をあげた。


そうして、残った水は無色透明、だった。


元の色に戻った蝋燭の灯りがゆらゆらと揺れる中、その場を沈黙が支配する。

「…………………凄いな、なんか」

ポツリと呟いたのがどっちだったのかは分からない。

だけど、その言葉は、その場にいるみんなの気持ちだったと思う。


「電気、つけますね」

なんだかふわふわした気持ちのまま、私は電気をつけた。

途端に部屋が人工的な灯りに満たされる。

眩しさに目を瞬くと、なんだか、少し現実感が戻ってきた。


「で、コレをどうするんでしたっけ?」

蝋燭の火を消しながら、改めてグラスの中身を眺める。

先ほどの不思議現象が嘘のように、そこには無色透明の水が満たされていた。


「とりあえず、飲むって書いてあるけど」

「はい、却下!次!!」

被せ気味に拒否。


「………………結衣ちゃん」

「いや、だって無理でしょ?あんな不思議現象起こった怪しい水ってのもだけど、コレ、兄貴の血が入ってるんですよ?」

コンマの勢いで拒否した私に呆れた目が飛んでくるけど無理ったら無理。

「そんな言うなら、浅宮さん達飲めます?!」

私の魂の叫びに2つの首が横に振られた。でしょ?!


「どうせ別案があるんでしょ?そっちで!」

「いや、まぁ、あるけど………」

言い切った私に、手引書を持った浅宮さんが口籠る。

その様子に、不審そうに手元を覗き込んだ堤さんも微妙な顔でくちごもった。


「何ですか?」

首を傾げた私に、浅宮さんが言いにくそうに口を開く。

「自分の机の引き出しに聖水がある。それを結衣ちゃんの背中に塗ったら封印の陣が浮かび上がってくるはずだから、それを水でなぞれって…………」

「…………………は?」


「本当にそう書いてあるんだって!」

怪訝な顔になった私に、浅宮さんが慌てて手引書を手渡す。

…………マジだ。


「…………………なぞれってわざわざ書いてあるってことは、この水直接背中にかぶるとかじゃダメって事、ですよね。きっと」

ポツリと呟けば「たぶん」との肯定が返ってくる。

デスよね〜〜。


「あ、自分で難しい場合は2人に協力求めろって、こういう事かぁ」

私の口から乾いた笑い声が漏れる。

なに、このラノベ的なドッキリイベント。


どう考えてもヒーロー役はともかくヒロイン役に私じゃ役不足でしょうよ!

誰得だよ!誰も得しないじゃん!

むしろ私の1人討ち死にイベじゃん!





兄の血液入り不思議ドリンクを飲むか、兄の友人のイケメン2人組に背中とはいえ生肌晒すか…………。

あなたなら、どっち選びますか?!


さぁ、どっち!?!




読んでくださり、ありがとうございました。


次回R18な展開が?!


………嘘です。お月様は遠いです。

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