友人(イケメン)使いパシリにするとか何様ですか?
車待機していた堤さんと合流して、移動した先はオシャレなフレンチレストランだった。
ギャルソンエプロンのウエイターさんがスマートに案内してくれたのはこじんまりとした個室で、確かにここならプライベートな話をしても大丈夫だろう。
だが、しかし。
しがない小娘には敷居が高すぎるよ、フレンチレストラン。
ドレスコードがあるような店じゃ無いと言われたし、堤さんもサマーニットにブラックジーンズというラフな格好だったけれども。
辛うじて着替えたから制服ではなかったものの、イケメン2人に挟まれたモブ女子とか、どう考えても悪目立ち物件だったし。
個室に入るまで、他のお客さん(主に女性陣)の視線がビシビシ刺さってました。
視線で惨殺されるかとおもたよ。
そんなこんなで、席に着いた時にはすでに私の気力は赤ランプがついた状態で、メニューにワクワクする余裕もなく、全てお任せ。
季節のコース料理が出て来た時は遠い目をしたけど、まぁ、個室の強みでマナーがなってなくても問題なし、と、しっかり堪能させていただきました。
すっごく美味しかった。
で、最後のコーヒーを飲んでいる時、ようやく本題に入る気になったらしい。
たわいもない話をしていた2人の雰囲気が、ピリッと引き締まった。
(あ、ようやく?)
察知して、こちらもなんとなく居住まいをただす。
と、突然、堤さんがガバリと頭を下げた。
「え……と、堤さん?」
唐突すぎてわけわからん。
救いを求めるように浅宮さんの方を向けば、こちらは少し困ったように苦笑している。
「実は、前に志月から「自分に何かあった時は結衣に渡してくれ」って頼まれていたものがあったんだ」
顔を上げた堤さんから、申し訳なさそうな顔で突然のカミングアウトがきた。
「自分になにか、って………?」
「数年前のことで、すっかり忘れてたんだが、今朝、唐突に思い出して、な」
いつもは凛々しい眉がヘリョリと下がって情けない顔になってる堤さん。
それでもかっこいいとか、イケメンスゴイな。
「で、ゴメンね。今朝、大知から電話で相談受けた時に、実は僕も同じようなものを預けられてたの思い出してさ」
「は?浅宮さんにも、ですか?」
「そう。僕の時は「然るべき時が来たら結衣に渡してくれ」って。で、それが今なのかなぁ?って」
「………それは………また」
「然るべき時」ってなによ、バカ兄貴?!
そんなふざけた言葉で渡されたもの、よくも今まで大事に保管してくれてたなぁ、浅宮さんも。
だけど、いかにも兄のやりそうな言動に脱力しながらもしおしおと頭を下げる。
なんか、もう、うちの兄がすみません。
「アァ、そんな顔しないで。志月らしいなって、受け取ってたのに忘れてた俺たちが1番悪いんだから。で、随分遅くなったけど、コレ」
そう言って差し出されたのは、手紙らしい真っ黒の便箋とA4サイズの少し厚みのあるコレまた真っ黒の封筒。
………便箋はともかくこんなサイズで真っ黒の封筒とか、どこに売ってあるの?
目の前に置かれたそれらを、少し迷った後、その場ですぐに広げることにする。
浅宮さん達も気になるだろうし。
この2人にワザワザ別々に託すなんて、なんか意味ありそうだし、ね。
まぁ、兄の場合、単に勿体つけただけとかいうオチもありそうだけど………。
そうして。
ワザワザ蜜蝋が押されたそれを開け中を見た私は………。
「なんじゃ、こりぁ〜〜〜!?!」
某俳優さん並みに叫びをあげ、その場にパタリと突っ伏した。
読んでくださり、ありがとうございました。




