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マジか!?  作者: 夜凪
3/18

眠ってて愛でられるのはお姫様だけだから!

ピッ、ピッ、シュコー、シュコー。


たくさんの機械の音が静かな病室の中に響いていた。

その只中のベッドの上。

沢山の管やコードで機械に繋がれた兄が眠っている。




手術は10時間以上に及んだ。


骨も、内臓も、あらゆるところに損傷が及んでいたらしい。

父母が説明されている横にいたけど、難しすぎて右から左に聞き流していたからよく覚えていない。


分かった事は、信号待ちをしていた人達にトラックが突っ込んできた事。

隣に立っていた見知らぬ親子連れを庇って、兄だけが犠牲になってしまった事。




「ふだんボゥ〜としてるくせに、なにカッコつけて人助けなんてしてんのよ。それで、自分が死んじゃったら意味ないじゃん」

真っ白なシーツに負けないほど白い兄は、ピクリとも動かない。


普段、長めの前髪で隠された顔は、今度は包帯や酸素マスクに覆われてよく見えない。

ぐるぐる巻きにされて、まるでミイラ男のようだ。

辛うじて見える右目もぴったりと閉じられて開く気配は微塵もなかった。


母親達は長期になる入院に備えて、一度家に帰っていた。

私だけが無理を言ってここにいる。


さっきまでは事後処理や様子観察の看護婦さん達が沢山いたけど、今は誰もいない。

半透明のビニールで区切られた空間に、ミイラ男な兄と2人きり。

無菌室用の白い白衣と帽子、マスクを身につけているのも合間って、酷く現実感が薄かった。


兄の手術は一応、成功したそうだ。

ただ、頭部も激しく打っているし、内臓の損傷も激しい。

意識を取り戻すのかは半々だと言われた。

さらに、その後にどんな障害が残るのかも不明、だと。


「………なんでも良いよ。早く起きてよ」

ポツリと溢れた声はあまりにも小さくて、機械の電子音に負けてしまった。






鳴瀬結衣(なるせゆい)


共働きの両親の元に、可もなく不可もない頭脳と運動神経と容姿を持って産まれ、特筆するべくもない平凡な人生を歩んで16年。


それが、私だ。






そんな私には、7歳年の離れた兄が1人いる。


名前は志月(しづき)


穏やかで人と争うのが苦手。騒ぐよりひっそりと部屋の隅で本を読んでいるのが幸せ。

こう言えば、何処にでもいそうな大人しい人に聞こえるが、兄は変わった人だった。


例えば、隅でひっそり読んでいるものが「世界呪術歴」だったり、真剣に呪符のようなもの書いていたかと思えば、突然、理解不能な数式をズラズラと書き散らしてみたり。


頭は悪くないのに「あの先生嫌い」の一言で、それまで得意だった教科の点数が底辺まで落ち込んでみたり。


突然「旅に出る」とママチャリに荷物を積み込み、本当に2ヶ月ほど帰ってこなかった時には、流石に放任主義で適当なうちの両親も慌ててたっけ。




自分の興味のある所は寝食を忘れて追求する反面、苦手なものは徹底してスルー。

あまりのスルーっぷりに不思議になって一度聞いたことがあるけど、どうもわざと無視しているわけではなく、本当に「気づかない」らしい。


無意識に脳が判断して排除している、ってのが1番近いみたいで、結構、本人も困ってたりしてた。

それが元で発生するトラブルも結構あったから、ね。




「不器用なんだよ」

と笑っていたのは、そんな兄の友人をやっている物好きな方達。

彼らがいたから、兄はどうにか学生生活を送っていられたんだと思う。


影に日向にフォロー入れてくれてたもんなぁ。

7歳なんて結構な年の差があれば、家の外の兄の生活なんて殆ど見ることはない。

それでも彼らのフォローが垣間見える時点で、相当な迷惑をかけていたのは間違いない。


幼心に申し訳なくて、頭を下げたり、手作りおやつを貢いでみたりしてた。

だって、兄貴、絶対フォローされてる全容の半分も気づいてないんだもん。


何が楽しくて兄貴の友人やってるのか、本当に不思議になって尋ねたら、顔見合わせた後、本人たちも首かしげてたけどね。

で、どうにかひねり出してくれた理由らしきものが「見てて面白いから」って………。


確かに、ある種珍獣っぽかったけど。


きっと、自分達がハイスペックすぎて多少のトラブルはトラブルと認識されず退屈だったに違いない。

偶に兄が語ってくれる友人達の話に、私は半ばそう確信してた。


だって、顔良し頭よしスタイル良しの超絶人間だったんだもん。

少女漫画のヒーローかと。

まぁ、トラブルから救いだされるヒロインポディションにいるのが兄貴だって時点でぶち壊しなんですけどね。





………なんか、あの兄貴がいるだけで、意外と私の人生平凡じゃなかったのかも。


つらつらと考えていた私の意識が、ポンと置かれた誰かの手に引き戻された。



読んでくださり、ありがとうございました。

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