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マジか!?  作者: 夜凪
12/18

僕は妹が可愛い。

お兄ちゃん視点となります。

僕に妹が出来たのは、7つの時だった。


自分で動く事もできない無力でふにゃふにゃした生き物を「あなたの妹よ」と見せられた時の困惑と、抱っこした時の感動は、今だにハッキリとおもいだせる。


コレは「護るべき存在」なんだと、僕の幼い魂にハッキリと刻み込まれた瞬間だった。


両親共に仕事で忙しく、ともすればネグレクトと言われてしまいそうなくらいスレスレの生活をしていた僕にとって、ずっと側にいてくれる存在というのが嬉しかったのもある。


1人よりも2人。


たとえそれがうまく話が通じない幼児だとしても、僕は嬉しかったんだ。

どうやら1人の時は、寂しかったことにすら気づいていなかったらしい。

その事に気付いた時、僕は少しだけ両親を恨んで、それ以上に、僕に「妹」を与えてくれた2人に感謝した。





妹はよく泣く赤ちゃんだった。


何もない部屋の隅やカーテンの隙間をじっと見つめては、ひどく泣きじゃくった。

ミルクじゃない。

オムツも濡れてない。

そういう時は、何をしてもダメで、抱っこしてはグルグルと部屋を歩き回るのが常だった。


そうしているうちに、僕は、1つの法則に気がついた。


妹が泣くのは、たいていが夕暮れの薄暗くなってくる時間帯。

そして、祖父母の位牌を置いている小さな仏壇の側に行くと、泣き止む事が多い、という事。


母親にそのことを伝えると、

「昔は子供は7つまでは神様の子供だっていってたらしいから、まだ赤ちゃんの結衣は、私達には見えない何かが見えてるのかもしれないわね」

と、夕飯の支度をしながら、肩越しにそう、答えた。


「そっか。結衣は《視える》んだね」

母親は適当に、よく言われている一般論を言っただけに過ぎなかったんだろう。

けど、僕にはその言葉をあっさりと納得してしまう根拠があった。


僕は《聴こえ》たのだ。


それは、人ならざるものの声。

古い物達の囁く声が、物心つく頃には、僕には普通のこととして聴こえていた。

ただ、ハッキリと《声》として聞こえるのは、少なくとも100年を過ごした物で、それ以下となると囁きのようなものでしかなくて、日常にさほど支障はなかったのだ。


考えてもみて欲しい。

何百年と続く旧家ならともかく、一般家庭に100年を越すアンティークが、そうそうあるはずもない。


僕が気付いたのだって、無料開放されていた美術館に暇つぶしに出かけてみた時が最初だった。

隅の方にポツリと置いてあった小さな石像の独り言を聞いてしまったのだ。


周囲に人影はなく、キョロキョロする僕に気づいた石像に「ぼうず、こっちやコッチ」と話しかけられ、その声が目の前の石像の声だと分かった時の驚きといったらなかった。

まぁ、それ以来、面白がった僕の美術館や博物館巡りは趣味となっていたのだけれど。


つまり、ワザワザそういうものを探して会いに行かなければ声を「聴く」事もないわけだ。

日常に支障がない以上、忙しい親にわざわざ訴えることもないだろうと判断したため、周囲はこの特異な能力のことを誰も知らなかった。


でも、だからこそ。

僕は素直に妹の力を信じた。


だったら、怖がっている妹のために何ができるのか。


仏壇の側に行くと落ち着くってことは、幽霊とかそういう類のものに怯えているんだろうと単純に考えた僕は、近所のお寺へと足を向けた。


そこそこ歴史のあるお寺であるそこには、建立時より鎮座している仏像があったのだ。

しかも、景気のいいことに、一般開放されている。

と、いうか、普通に本堂の真ん中に置かれているため、外から丸見えだった。

長い年月を越えた仏像は、なかなかの人格者であり、かなりの物知りで、暇な僕は、よく遊びに行っていた。


そのため、お寺の和尚さんとは顔なじみであり、「仏像が好き」との子供の無邪気な笑顔を真に受けて喜び勇んだ和尚さんの権限で、本堂内まで顔パスになっていた。

まさか、和尚さんも仏像と世間話をしているとは思わなかっただろうけど。


「と、いうわけで、妹が泣かなくなるには、どうしたらいいのかな?」

《そうじゃな。別に悪さをされておるわけではないようじゃし、単純に見た目が怖いんじゃろ。見えなくなればいいんじゃないかの?》


さらりと返ってきた答えは、単純明快だった。

「そっか。で、どうすればいいの?」

《知らん。自分で調べろ》

そして、さらなる質問にもあっさりと返事はきたが、全く役に立たなかった。


「え〜〜!少しは考えてよ。仮にも仏様の姿してるんだし、なんかあるでしょ?こう、神秘の力、とかさ」

《単なる仏師が想像で掘り出したものに、そんな力あるかい。元は単なる檜の木じゃぞ?ワシは》

ありがたみのある姿は単なるハリボテだったらしい。

ブーブー文句をいう僕に、仏像はため息をついて、顔見知りの祓屋に連絡とってやるから訪ねていけとしぶしぶ教えてくれた。


《夢枕たつの大変なんじゃからな。暫くは力使い果たして何もできなくなるくらい大変なんじゃぞ?しっかり感謝して、祈りを捧げろよ?》


仏像曰く、元は単なる檜の木でも、信心の力は偉大なもので、普通の他の道具よりも早く意思が宿りやすいし力も得やすいそうだ。


こんな寂れた寺の仏像で夢枕に立つくらい(いしそつう)の力があるんなら、奈良の大仏様とかは凄いんだろうな。

そのうち、会いに行ってみよう。


コッソリ心に誓ったのは仏像には秘密だ。

バレたら《浮気者!》とうるさいに違いない。







こうして、近所の知り合い(ぶつぞう)の力を借りて、僕はその後の人生の師匠とも言える人と出会うことになるのである。






読んでくださり、ありがとうございました。


お兄ちゃんは、知能が高く色々と早熟な子供でした。

普通の親なら気づいて「神童」ともてはやされたであろうレベル。

でも、忙しすぎる両親は「聞き分けのいい賢い子だなぁ」ぐらいの感覚でした。


そして、近所の仏像やその他諸々にいろんな話を聞く事でさらに「賢く」なっていったという………。



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