プロローグ
執筆中が圧迫されだしたため、投稿です。
ストックがあるうちは毎日投稿します。
よろしくお願いします。
「こ〜〜の〜〜〜、バカ兄貴!なんてモノの封印解いてくれちゃってんのよ!!」
ところどころアスファルトの割れた、それでも、辛うじてまだ舗装されたと言っていいだろう坂道を半泣きで駆け下りる。
時刻は深夜。
叫びまくるなんて普通なら迷惑以外の何者でもない時間帯だけど、そこは問題なし。
だって、今いる場所は、人里離れた山奥の廃墟だから。
山奥にある数十年前に潰れた元病院の廃墟、なんてモノに突撃して居たのには、海より深い訳が、当然ある。
けして、廃墟マニア、だの、オカルトマニア、だの、そんな浮かれた理由ではないことだけは、声を大にして言いたい。
むしろ、お化けなんか大嫌いだし、ホラー映画なんて好んで見る人の気が知れない。
生まれてこのかた16年。
物心ついた後は、その手のものは避けれるだけ避けて来た、それが私、だ。
そんな人間がなんでこんな所にいて、悲鳴あげながら走ってるかって?
それは………。
『いやぁ〜〜、だって元々「アレ」をどうにかする為にここまで来たんじゃん?』
必死の形相で走る私の横を涼しい顔でフヨフヨと追いかけている非常識のせいだ。
「だからって、あんなヤバそうなモノだなんて聞いてない!アレ、どうにかできるの?!」
チラリと背後を振り返り、見なきゃ良かったと私は悲鳴をあげた。
ガラスなんて割れてとっくにその役目を果たさなくなった元病院の正面玄関から、ウニョウニョと湧き出てくる黒いもの。
とっくの昔に電気なんて通ってないから、照明なんて私の手の中にある懐中電灯だけで、辺りは後は仄かな月明かりだけの基本真っ暗。
それなのに、その闇よりも黒く感じる「ナニカ」が、走る私の後を追うように湧き出して追いかけて来ていると「判る」、この現状。
兄貴のせいで人並み程度にはついてきたホラー耐性なんて吹っ飛んで、爆散するくらいあり得ない、この状況。
震えて座り込まず、走ってるだけ褒めて欲しい。
叫んでるのだって、どっかに飛んで行っちゃいそうな意識さんを引き止める為の苦肉の策、なのだ。
だって、「アレ」に捕まっちゃった時点で人生終了の鐘が高らかに鳴り響くに違いない。
それくらい、ヤバいモノだって、見ただけでビシビシ感じる。
『ダイジョーブ、ダイジョーブ。その為に朝から色々準備してたんだし。だから、頑張って結界まで走れ〜〜』
「うわぁ〜〜ん、キモい〜〜〜、コワい〜〜〜!兄貴のバカァ〜〜〜」
ジワジワと近づいてくる気配を、もう振り返る余裕なんてない。
悲鳴をあげながら足の回転数をあげる。
『ガンバれ〜〜〜』
半泣きの私の横で、能天気に笑っている兄貴の笑顔は、半分透けて光っていた。
読んでくださり、ありがとうございました。