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内政チートの書状

短いです。ごめんなさい。

【天正15年03月20日】


妙林尼と日向後家たちは豊臣の臣下ではない。大友家の者である。というわけで、彼女たちは島津兵の首を手土産に臼杵城の宗麟のもとへと向かった。


「結局、仲直りできなかった」


彼女たちを見送った俺は、溜め息をつきながら文机に着いた。


ここのところ、暇があれば手紙を書いている。

土佐にいる兄である吉良親実様や弟の千熊丸もりちかに、そして播磨屋と松本重則殿に、だ。


吉良様には、先進的な稲作について書いて送っている。種を塩水で選別する方法から、水田に直に種を植えるのではなしに苗として育ててから植える田植えの方法、肥を利用した肥料と、それによる土壌の改良、さらに某農業系アイドルが広めた無農薬農薬のつくりかたを記しておいた。もちろん、後家殺しの異名を持つ千把扱きも絵を添えて書いておいた。


これで上手くいけば米の収穫量は跳ね上がるだろう。


千熊丸には、イソップ寓話を日本風に変えたものを書いて送った。オオカミと少年。農夫とその子供たち。ガチョウと黄金の卵。恋するライオンと農夫。子牛と老牛。こうした寓話が千熊丸にどう影響するか。

加えて、遊び道具も手作りして送った。独楽こまたこ、水鉄砲、糸で操れる人形、折り紙と紙飛行機、双六すごろく、ヨーヨー、ブーメラン、そして簡単な漫画だ。


あいつのことだから狂喜乱舞してくれるだろう。


播磨屋と松本殿には、金になる商品を書いて送った。

まずは塩だ。大量の塩をつくる方法として入浜式塩田について解説した。今のところ普及している揚浜式塩田は人力で海水を砂の敷いてある塩田に撒き、その塩分のついた砂から『かん水』という塩分の濃い水を取り出し、さらに『かん水』を煮詰めて塩を作るという方法だ。けれど、この人力で海水を撒く、というのが重労働で、塩もそれほど採取できない。だけど入浜式塩田ならば、潮の干満を利用して海水を引き入れることで、労働力を大幅に省いて、大量の塩を獲得することができる。

もっとも、この入浜式塩田が土佐の地で可能かと言われると、難しいかもしれない。気候や立地条件があるからだ。前世では瀬戸内海沿岸で隆盛を誇ったらしい。


他にも、にがりを使った豆腐の作成方法から、揚げ豆腐や油揚げなどの豆腐料理を。


これは前世で俺が豆腐好きだったから憶えていたことだ。塩の作成方法については『にがり』について調べるついでに知った雑学のようなものだ。


料理ばかりではなんなので、木綿についても書いた。今はちょうど全国的に綿布が普及し始めていて、あわせて綿花の栽培も各地に広がっているところだ。平和になれば、当然だが衣食住へと人の興味は移る。そしてについての綿布は、爆発的に広がることになる。そこを見越したうえで、大金を投じて紡績と機織りの工業地をつくりあげ、各地に先駆けて土佐を綿花の集積地のようなものにしてしまおうと俺は考えたのだ。


必要な大金は秀吉から融通してもらわなければならないし、偏屈な元親様の許可も仰がねばならないが、事が運べば少なくとも江戸時代と呼ばれる世が終わって工業化の波がおとずれるまで土佐は安泰のはずだ。


そして。土佐と言えば、の産物。鰹節についても作成方法を、それは詳しく書き送った。

俺は長宗我部が好きで好きで、土佐つながりから、前世では鰹節についても調べたのだ。もちろん、実際に鰹節工場に見学にも行った。


戦国時代には、まだ鰹節はない。


だから、どんな料理を食べても味に深みがない。出汁をとらないからだ。はやいところ、鰹節は実現してもらいたいのだ。






【天正15年03月24日】


「こんなもんか」


手紙を書き終えた俺は顔を上げた。それから呼びつけた文六に手伝ってもらって具足を身に着ける。


表に出ると、廃寺の境内には配下の連中が揃っていた。秀勝に借り受けた連中だが、城を落とした褒美のついでで、この戦の間だけは俺の手元に置いていてもいいと言質をとっている。


俺たちは秀勝の隊まで行進した。


通りがかった人々が、俺たちに注目する。


それもそのはずで、俺たちは正しく行進していたからだ。手の振りも足の差し出しも揃って、背筋をピンと張って、しっかと前を向く。雑談なぞしない。


さぞかし異様だったろう。同時に、迫力もあったはずだ。


戦国時代の武者どもときたら、小学生…いいや園児レベルだからな。雑談どころか、あっちをうろちょろ、こっちをうろちょろするのは普通だ。おそらくだが、これほど整然とした移動ができるのは全国でも上杉謙信の率いた越後兵くらいではなかろうか。


せっせと練習したからな。もっとも聞き分けのいい連中だから、それほどの手間はかからなかったが。


むろん、この行進には意味がある。


俺たちの存在を目立たせて、印象付けさせ、むざむざ犬死にさせないためだ。


「津野孫次郎親忠、参上つかまつりました」


果たして、馬上で俺たちを出迎えた秀勝は鼻白んでいた。


ふん、と鼻をならして馬首を返す。


隊が進んでゆく。俺たちはどん尻だ。


何処へ行くのか? これから北上して秀吉の本体と合流するのだ。


いよいよ、九州征伐が始まる。

なんで書くのがこんなに遅いんだろう。

自分のことながら、情けない。

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