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謹慎

申し訳ない! 1週間ぶりの投稿です。

何でこんなに書くのが遅いのか…。

自分が情けない。


2017/09/01 

蜂須賀との会話がワンパターンなので、漬物の話にしました。

【天正15年03月15日】


なんとか…なんとか3合までは太刀で豊久の攻撃をしのぐことができた。

けど、それは薄氷を踏むようなギリギリのものだ。


悔しいが、豊久は強い。それこそ、槍を持った加藤清正に匹敵するかもしれない。


「大したもんだ」


へたり込んだ俺は、目の前に突きつけられる切っ先をまえにして、そんなことを呟いた。


豊久の眉が歪む。


「な~んか、おかしい。お前、手を抜いてないか?」


「命がけなのに手なんて抜けるものかよ」


ん~、と絶世の美少年といえる豊久が小首を傾げる。

と、豊久の視線が俺の右腕に注がれた。


激しく動いたせいで塞がりかけていた矢傷が広がってしまったのか、鎧の合間から血がタラリと伝っていた。


「どうりで」


豊久が刀を仕舞う。


「なんだ、この首がいらないのかよ?」


「欲しいさ。戦場だったら、躊躇いなく間違いなく問題なく、首を獲ってる。でもなぁ、ココは戦場じゃないし、戦場じゃないなら、俺は万全なお前の負かして、そのうえで首が欲しいんだよ」


「つまり、俺は情けをかけられたわけか」


「悔しいか?」


はらわたがねじれるぐらいに悔しいぜ」


「へへへ、なら、俺がお前に味わわされたのと同じだ」


俺は、よっこいせ、と立ち上がった。ヘトヘトだった。


「これで勝負は一勝一敗だな、孫次郎殿」


「次こそは戦場で、だな。又七郎殿」


ニヤリと笑みを交わし合う。


豊久はそびらを返すと、馬に乗って去って行った。


「どえらいのに見込まれたもんですな、若も大変だ」


文六が冷や汗を腕でぬぐいながら話しかけてくる。


ずいぶんと心配させてしまったようだ。


「情けない姿を見せちまったな」


「まったくです!」


声を荒げたのは妙林尼だ。


「孫次郎様の槍のさばきは粗雑に過ぎます。傷が癒えましたら、わたくしが直々に指導してさしあげます!」


そう言ってくれた妙林尼は涙目だ。


「頼む」


俺は優しく妙林尼を抱きしめた。


微かに震える体に、申し訳ないが、心底から愛されているんだと感じてしまった。






俺たちは、そのまま府内城へと入った。


豊臣に接収された府内城はてんやわんやの大騒ぎだ。中津から荷車がドシドシと運び込まれている。


こんな中で1人残って、来るかも知れやしない俺を待ち受けていた豊久という男は、やはり傑物なのだろう。

俺たちを府内城まで案内してくれた武者はのどかな笑顔で『なかなかに良い殺り取りでしたな』などと言っている。他にも見物人がいたが、よもや島津の者と刃を交えていたとは思っていないようだ。おおかた、小僧同士が喧嘩して刃傷沙汰になったぐらいに見ていたのだろう。それで死んでしまっても『まぁ仕方ないよね』ぐらいの感覚なのが戦国なのだ。


俺と妙林には一行と別れて、城内の一室へと通された。

待っていたのは黒田孝高様と蜂須賀正勝様、それに秀勝。


「久方ぶりだな、小僧」


蜂須賀様が面白そうに興味深そうに畏まった俺に声をかける。


「はッ」


「ああ、そういう鯱張ったのはいいからよ。普通でいろ普通で」


蜂須賀正勝という御仁は、もとは山賊のような出だ。己よりも目上の者がいなければ、万事こんな感じなのだろう。


俺はお言葉に甘えることにした。


「なれば。ほぼ三月みつきぶりでしょうか」


頭を上げて平然と受け答えした俺の様子を、秀勝が睨んでくる。恐れ敬わないのが気に食わないんだろうな。というか、前ほどに蜂須賀様から威圧を感じない。たぶん、俺が馴れてしまったんだろう。


「それぐらいか。ああ、そういえば虎漬けを食ったが、美味かったぞ」


「虎漬けとは何でしょうか?」


「ああん?」


俺と蜂須賀様は互いに疑問顔をしてしまった。


「蜂須賀殿、たしか虎之助はアレのことを糠漬けとか言ってましたぞ」


横から黒田様が助け船をだしてくれて、ようやく合点がいった。

俺と蜂須賀様は期せずして『ああ』と同じような顔をしてしまう。


「糠漬けだ、糠漬け! あの美味いものを虎之助に教えたのはお前なんだろう?」


「その通りでございます」


虎之助とは、加藤清正のことだ。俺が出発してから、ジジババに糠漬けを教わったのだろう。たぶん、糠も分けてもらったはずだ。

しかし虎漬けかよ。虎之助が広めた漬け物だから、虎漬けなんだろうけど。


蜂須賀様は糠漬けのことを褒めまくった。

なんでも、京の周辺には糠漬けならぬ虎漬けが既に広まっているらしい。そして大名の間では漬け物の味比べが流行しているとか。


「で、だ。虎漬けを考え出したお前なら、漬けて美味いものを知ってるんじゃないか?」


日が浅いので、まだまだ糠床ぬかどこの差はでてない。そこで大名たちは漬ける品物で味比べをしているようだ。


「そうですね……でしたら、茹でた鶏卵などはどうでしょう?」


戦国時代は仏教の影響で鶏卵を食べなかった。それは間違いだ。初期中期はともかく、豊臣の世ともなれば鶏卵は普通に食していた。仏教へのこだわりは信長が破壊しているし、そもそも南蛮菓子には鶏卵が使われている。再び鶏卵が人の口に入らなくなったのは、ひとえに徳川の仏教回帰への政策からだろう。


「鶏卵か! よし、やってみるぞ。黒田、お主は真似るなよ」


返事の代わりに「ちっ」と黒田様は舌打ちをすると


「孫次郎よ、そなたは2つの城を落としたそうだな」


訊く…というよりも詰問をされる。


ようやく話がもどったか。俺は気を引き締めた。


「ただしくは、ひとつにて。それがしが落としましたのは鶴賀城のみ。鶴崎城は、こちらの妙林尼が」


3人の視線が注がれる。

秀勝はともかく、黒田様と蜂須賀様の眼光は重く鋭い。にもかかわらず、妙林尼は微笑みさえ浮かべて答えた。


「孫次郎様の申すことはご謙遜です。彼がいなくば、女と老兵ばかりのわたくしどもでは鶴崎城を回復すること適わなかったでしょう」


本当にたいした女だ。

俺が心底から安堵しているのは、この場に秀吉がいないことだった。女好きのアイツが居たらば、間違いなく妙林尼を欲しがることだろう。史実でも妙林尼に会いたがっていたほどなのだから。


「それこそ謙遜というものでしょう」秀勝が隻眼を歪めて子馬鹿にしたように言う。

「そやつにあずけたのは、どいつもこいつも使い物にならない似非者ばかり。そんな者どもがいたところで、何の力にもならなかったでしょうに」


「ほほほほほ、丹波少将様は面白きことをおっしゃる。それでは丸で、わざわざ使い物にならない似非者とやらを津野様にあずけたように聞こえますが? それに、その似非者とやらを見事に采配して鶴崎城を落としたのは真のこと。どうしてどうして、津野様の手腕が素晴らしいということに他ならないではありませんか」


妙林尼の言い様に、秀勝が顔を真っ赤にして押し黙る。


まぁ、言えないわな。俺が気に食わないから、文六を始めとした傷物を配下にあずけただなんてこと。


とはいえ、既にそんなことは黒田様も蜂須賀様も知っているはずだ。

2人は口を滑らせた秀勝を呆れたように一瞥した。


「だ、だがな! 貴様が余計なことをしでかしたせいで、島津との講和が破断したのは事実だぞ!」


「おい、それは」


と蜂須賀様が異議を挟もうとするのを


「丹波少将様の言うとおりだな」


黒田様が遮って言った。


「孫次郎よ。追って沙汰あるまで、城下に用意した屋敷で謹慎しておることを命ずる」


どうにも黒田様には嫌われているようだ。


俺は平伏して、大人しくうけたまわった。


ま、グータラ過ごしつつ妙林尼とイチャコラするのも悪くない。


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