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鶴賀城

短いかな?


2017/08 高城の位置について重大な勘違いをしておりました。

     よって、高城の代わりに鶴賀城とさせていただきます。

     勝手ですが、すみません。

【天正15年03月08日】


寺司浜。未来では西鶴崎2丁目の辺りである。

浜、というように戦国時代はココまで海がきていた。


乙津川に沿って北上した島津兵は、今、その寺司浜に追い込まれていた。


その数はざっと100。油断ならない数だ。

実際、史実でも妙林尼たちはココで手痛い反撃を受けている。


が、史実とは決定的に違うことがある。


雑兵を率いる将がいないということだ。

ザっと見たところ、3将の残る1人であった野村備中守はいない。討ったという伝令もないから、どうにかして鶴崎の追っ手を振り切ったのだろう。

おかげで将のいない島津兵は統制を失って、反抗する素振りさえない。


ババン! 寺司浜で伏せていた鶴崎城の鉄砲隊が襲い掛かった。


妙林尼は下手な将よりも先が読める。島津兵を追い立てれば、今だ島津のものである高城のある方角に逃げると踏んで、ココ、寺司浜に大部分の鉄砲隊を伏せていたのだ。


妙林尼たち、鶴崎城の者どもは島津兵を1人たりとも逃がすつもりがないようだった。


遠距離から弓を射かけて、傷ついて倒れた兵には日向後家が寄ってたかって惨殺している。泣いて命乞いをする兵にも容赦はなかった。徹底している。


もちろん、俺の班も投石をした。投石の良いところのひとつに、石の補充が容易だということがあげられる。鶴崎城の弓兵はとっくに矢を使い切っていたが、俺たちはその場で石を拾っては投げてを繰り返していた。そのうち投げるのに疲れてしまって、暇そうにしていた鶴崎城の女に投石器を任せてしまう始末だ。


100いた島津兵は、時を追うごとに漸減して、1時間もかからずに残らずほふることができた。


「終わりましたな」


文六がホゥと息を吐く。


俺は周囲を見回した。


浜に転がる島津の死体。そして、鶴崎城の女や老人は、気の抜けたように立ち尽くしている。


実際、もう戦う気力はないだろう。

彼等の復讐は成ったのだ。


だが俺は、まだ満足していなかった。

史実ではここまで。妙林尼は300名以上の島津兵を倒しはしたが、鶴崎城の兵もまた手酷い反撃を受けて、ここで戦闘を終えている。


「もう少し…行ってみるか」


俺は50名の配下を見渡した。


どいつも疲れてはいるが、まだ動けそうだ。


「文六。鶴賀城を取ろうと思うのだが」


俺の発言に、文六は目を輝かせた。


「よきお考えが?」


「今なら、な」


「では、取りましょう」


「ほほ、まるでわらべの遊びのようにおっしゃいますのね」


妙林尼が遣って来て、文六が軽く頭を下げる。


「その鶴賀城取りに、わたくし達の力は必要ですか?」


「いいや、それがし達だけで充分にて」


「ご武運を」


妙林尼たち鶴崎城の者に見送られて、俺と配下の50人は乙津川に沿って南へと進んだ。


俺と50人は手に手に島津兵の落とした槍を持っている。

これが秘策だ。


1日ほどで鶴賀城を望見できるところまで来た。

しかし鶴崎城とは決定的に違っている。立派な山城なのだ。


鶴賀城にほど近い林に配下をひそめる。


「では、行ってくる」


俺は1人でブラリと鶴賀城へと歩いた。

文六どもには危険だと止められたのだが、無理を通させてもらった。これぐらい相手の度肝を抜かねば、高城を取るなんて成功しないだろうからだ。


鶴賀城の門は、当然ながら固く閉まっていた。


「おーう! おーう!」


呼びかけていると、門の向こうから声が返った。


「何者ぞ?!」


「それがしは豊臣の者にて、津野孫次郎親忠」


豊臣と聞いて、向こう側が騒がしくなる。動揺しているのだろう。「早すぎる」なんていう泣き言めいた声も聞こえた。


当然ながら、鶴賀城側は俺が1人だと把握している。

それでも警戒するかのように、ゆっくりと門が開かれた。


「それがしは野村のむら備中守びっちゅうのかみ松綱ますつな


顔色の悪い武者が名乗りを上げた。

この男。史実では胸に受けた矢傷がもとで、遥か南の日向にある高城にて死ぬことになっている。

顔色が優れないのは、矢傷を受けているからだろう。


「豊臣の者が1人で何用だ」


「用とは異なことを。我が豊臣が九州平定に動いておることは知っていよう。なれば、この鶴賀城をもらい受けに来たのよ」


「ははは、たった1人でか」


「1人ではないさ」


俺は片手を上げた。

応じて、文六たちが声を張り上げ、多くの兵がいるかのように用意した島津の槍も使って林の外へと穂先をのぞかせる。


小賢こざかしい」


野村備中守は鼻で笑ってくれた。


分かるぞ、分かるとも。少しばかり知恵の働く者なら、俺の策なぞ見抜いて当然、嘲弄ものだろうさ。


だがね。


「お、おい、あの林に豊臣の兵がひそんでるぞ!」「なんだ、あの数は!」「こっちの倍はいる!」


野村備中守の背後では兵どもが騒ぎ始めていた。


今や鶴賀城には多くの敗残兵が入り込んでしまっている。

しかも事前の噂として豊臣が20万という軍勢で寄せていることが伝わっているのだ。

加えて、この野村備中の姿である。

動揺しないはずがない。


俺は嗤い返してやった。

あんたは平気でも、負け戦で弱気になっている兵どもはどうだろうな。


「まだまだ! これからドシドシ豊臣は軍勢を送ってくるぞ!」


俺の張り上げた声に、島津は恐慌状態だ。


ここに至って、野村備中守は負けを悟ったようだった。


「拙者の命を差し出す故、配下の兵どもの命はどうか」


「許す」


所詮、俺は50人しか率いていない。この鶴賀城に籠もる数倍以上の人数を監視することなぞできはしない。


その後、俺は鶴賀城兵どもの武装を解除させた。

そこで配下を呼び寄せる。


まっとうではない俺の配下に、今更ながら鶴賀城の兵どもは騒いだが、もう遅い。武器は取り上げているのだ。


「逃げたいものは逃げい!」


俺の発言に、島津兵は我先にと鶴賀城から尻をまくった。

兵士とはいっても、その本来は農民なのだ。故郷に帰れるものなら帰りたいだろう。


「やりましたな」


文六が嬉しそうに言う。まるで孫を褒める老爺のようだ。


「とりあえずはこれで、丹波少将ひでかつにも顔が立つだろう」


「顔が立つどころの騒ぎではありませんぞ。若は、2つも城を落としたのですからな」


「鶴崎は違うだろう」


「同じことです」


配下のなかから長距離走を得意とするものを呼んで伝令を豊臣に走らせる。


次いで、配下の連中には城下で悪さをしないように言い含めた。


「きっと丹波少将ひでかつから褒美が出るだろう。お前たちにはぞんぶんに配ってやるから、狼藉はしてくれるなよ」


悶々としているのは俺も同じなのだ。


俺は鶴賀城の一室にはいってふんどしを脱ぎ捨てると、興奮を鎮めるのだった。

戦いの後って興奮するッて聞いたもので。

でも、こういう下世話なのは要らないですかね?

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