虚構の基盤 1女神セパルス
そこは誰もあなたを傷つけない。とてもやさしい世界なの。
「通算50連敗おめでと!」
「これでお前も一人前のバーチャル廃人だな」
「全然うれしくないんだけど……」
時代は進化し、テーブルゲームもバーチャル化でリアルに楽しめる。
「それにしても、オセロはできるのに囲碁はできないなんてねえ」
「いやいや、あたりまえだろ。姿は似ててもルール違うんだからさ」
「姿……」
どうかしたのと、二人から心配そうに問われる。
「ううん」
「それより、このごろ流行ってるアレやりにいかない?」
「なにそれ?」
「チェスが元のゲームなんだけど、ルールが変わってるのよ」
「アニメ化もされてるんだぜ、これネットのあらすじ」
開いた検索画面、紙ではなく電子媒体のものをはじいてよこされる。
年寄りばかりの田舎育ちには慣れない。
「その世界ではゲーム・セパルスで全てを決める……ありがちな設定だな」
「まあ遊んでみたら?」
「気が向いたら店に行くよ」
◇
「……ここが例のゲームがおいてある場所か」
ゲーム画面を起動させるとバーチャル画面が展開される。
昔は特殊な機器を装着しないと見られなかったのに現実と仮想の区別がつかなくなるほど鮮明だ。
「ようこそ……」
翼の生えたホログラムのジラジラ透ける巨大な美女が現れる。
「女神?」
「貴方は神様を信じるのね?」
神の存在は未だに論じられるが、ファンタジー全否定で、地球を実験場にしている宇宙人説派だ。
「とくに信仰してるわけじゃないけど、卵運びってなんだ?」
「私を携帯の音声ガイドと一緒にしないで」
リアルな回答がプログラムされている。同じような質問をしたやつがいるのか?
「おまえ新入りか! 勝負しろ」
「えっえっ!?」
「この世界で覇権を持つのは魔札での勝者だ!」
「なにそれ? 俺がやりたいのは……あれ、女神いねえ!」
「何も知らずに異界へ来るとは間抜けなやつめ。ルールを説明してやるよ」
「お……おう、あれか初期のルール説明キャラだな?」
「とりあえずバトルフィールドの図面がこうだ」
「真ん中のチェス盤みたいなとこにそれぞれが向き合うのは当然として
某有名魔法学校映画にも出てきたあれのバーチャル版のようなものか?」
「まず対戦には命世界石を1戦につき1消費する。
最大値に個人差があり勝利すると増えてくぞ」
「時間経過で回復しないのか?」
「宿屋で寝ると回復したりアイテムで回復したりだな」
「へー」
「もちろんバトル内で消費する体力とは違うぞ。
バトル内での体力の初期値はそれぞれ5でカードと装備のスキルで増えたりする」
「少なくないか」
「攻撃で1ずつ減らすんだよ」
「あーバト●ピでいうライフか……最初からそういってくれれば」
「うるせえオレは●ュエマ派なんだ」
「はっ……そんなら俺は……」
「争うなら去りなさい」
「すんませんした女神様……」
「まあ普通のゲームとさほど変わらない。敵の体力を0にすれば勝ちだ」
「勝ち負けはわかったけど、連戦してアニマムなんとかを最大まで減らしたらどうなるんだ?」
「無くなったら人間界に帰ることになるの」
「死ぬ?」
「この世界で死んでも人間界には関係ないぜ」
「……本当かな?」
「俺に聞かれてもな」
「ふーん」
「試しに帰ってみろよ」
「戻ってきた」
「あーいたいた!」
「今さ、女神と会って変な奴にバトル挑まれて」
「このゲーム女神キャラなんていないけどな?」
「別のゲームと間違えたんでしょ」