表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/15

第九話 白い恋人

 最近、ちょっとしたきっかけで、男性不妊の精子検査を受けることになった。まったく初めてのことで、病院を予約したあと、ふと精子はどこでどんな感じで出すのか、単純な疑問が浮かぶ。そして、男なら一度は見たことがあるだろう、あのエロビデオのエロナース。なぜか出すのを手伝ってくれるあり得ないストーリーが、ふと頭をよぎった。

――まさか?

 ありえへん。

 あったらたいへんやん。

 万が一にも、

 いやいやいやいや、

 イヤッ!

 ないとは限らんかも!

(はい、病気です)

 まぁ、男なんて、脳みそが生殖器みたいなもんやから。

(もしかして、オレだけ?)――

 ということで、いざ病院へ。

 どうせ検尿のときのような紙コップを渡されて、トイレで出してこいって言われると思いきや、意外にも、受付の清楚できれいなナースが、きれいな紙袋に入ったプラスチックの容器を渡してくれた。まるでチョコでも入っているような感じの。

「ご案内いたします」

――え!

 ほんまやったんかぁ!

 でも、あの清楚な感じは?

 イヤッ、かえってエロいぞ!

 こんなのに保険がきくのか?

 まさか、別料金?

 だとしたらなんぼや?

 えええい、もう、なんぼでもええぞ!

《よ、太っ腹!》

(『ああいう大人にだけは、なっちゃダメよ』ってよく言われる)――

 案内されたのは、広くてきれいな個室ビデオルーム。中から鍵がかかり、ティッシュや消毒用のアルコール、簡単な手洗い場などが完備されていた。

 ここのクリニックには、誰一人、ふざけている人はいない。先生、ナース、そして患者。みな真剣に不妊と向き合っている。

 だからなのか? ここに、こんな個室のあることに、凄い違和感があるのは。どんな最先端医療をもってしても、精子を出すには、やはりエロビデオなのか? ここに置いてあるビデオは、先生の趣味なのだろうか? ま、まさかあのエロナースが手伝ってくれる系のビデオなのか?

 それを確認することもなく、ちょこっと目をつぶって、ちゃちゃちゃってやったら、ピュッピュッピュッって……。すぐさまそれを、きれいな紙袋に入った容器に採って、さっきのナースに渡しに行った。

 なんだか、チョコのお返しみたいな気がした。

(白い濃いびちょ…… じゃない、恋人)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ