第十一話 女の理想と男の理想
――イケメンの彼氏が自慢という貴女。イケメンだと思っているのは、貴女だけなんじゃないですか?――
「松潤好き?」
と、女の子に聞くと、「チョーかっこいい」っていう人と、以外にも「気持ち悪い」っていう人がいる。
松潤こと、松本潤――アイドルグループ嵐のメンバー――は、果たしてかっこいいのか? それとも、気持ち悪いのか?
答えは、どちらもノーだ。あたりまえだが、松潤には「かっこいい」とか「気持ち悪い」とかいう性質も要素もない。これらは、受け手の頭の中にある、妄想でしかないのだ。どんなに甘い苺でも嫌いという人がいれば、どんなに酸っぱい苺でもおいしいという人がいる。酸いも甘いも人それぞれの感覚だから。
同じように、《エロい》も《気持ちいい》も《デカい》も《狭い》も《凄い》も《キモい》も《激しい》も《いやらしい》も……、すべての形容詞が妄想であることは言うまでもない。
どうして、こんなにたくさんの形容詞ができて、人間は妄想するようになってしまったのか?
その理由とは――、
こんなところでする話ではないので書かないが……
(わからんのかい!)
よくテレビなんかで「理想の相手」をたずねられ、形容詞オンパレードで、妄想をぶちまける女がいる。
――やっぱイケメンで、
身長は180cmくらいで、
細身で、
芸能人で言えば亀梨君みたいな感じで、
車は、外車で、
年収は、1,000万円以上で――
(って、尋ね人か? 具体的すぎんねん)
こんなこと言われて、
「はい、それ、オレです」
なんて出てくるやつは、よっぽどの勘違い野郎しかいないだろう。
このような、理想が具体的なのって、女の人に多い気がするのは、気のせいだろうか? 女って、控えめなことを言っているようでも、実はめちゃくちゃ理想が高いんだよね――。
*
「こちらの女性にインタビューしてみましょう。あなたの好きな男性のタイプを教えていただけますか?」
「私、好きなタイプって特にないんです。好きになったかたが、タイプみたいな」
「ほほう! では、キモい人でも、体型がイケてない人でも、ケチな人でも、暴力を振るう人でも、好きになったらそれがタイプというわけですか?」
「はぁ……、まぁその……、そもそもそういう人は、好きにならないというか……」
「顔は?」
「顔なんて、あればいいんです。首の上に、最低一つ」
「芸能人で言うと?」
「福山雅治さんとか、木村拓哉さんみたいな、ちょっと年上で優しそうな感じの、普通の顔でいいんです」
(どこが普通やねん)
「年上で優しそうな感じなら、温水さんとかも……」
「――それは無い」
(即答かい!)
「職業や年収についてはどうですか?」
「はい、まったくこだわっていません」
「今までお付き合いしたかたでは、どういう職業の人がいましたか?」
「そうですね 、お医者様が多かったかと。私って、お医者さんごっこが好きじゃないですか?」
(知らんがな)
「あとは、弁護士のかたとかも。でもみなさんお忙しくて疎遠になってしまいましたが」
「本当に職業にこだわってないのですか? 彼氏がニートでもかまいませんか?」
「まったく気にしません。現に前の彼が、ニートでした。私のために一生懸命バイトしてくれて、年収は1,000万円超えてましたのよ」
「えぇ! 年収1,000万円ですか? その彼とも別れられたのですよね」
「はい。過労死でした」
(過労死って! どんだけ働かしてん)
「私、どんな職業の人でも、おか、あっ! いや、愛があればOKなんです」
「あんた、ちょいちょい、本音が見え隠れしてまんがな」
とまぁ、こんな感じだろうか――。
その点、男は、どんなに高らかに理想をうたっても、そのハードルは、案外低いもの。
「あなたですか。理想が高すぎて、ついにスカイツリーを超えたと豪語されている勘違い野郎のかたは。理想の彼女ってどういう人ですか?」
「おぅ。俺の理想か? そりゃぁ顔だってスタイルだって抜群じゃねぇとな。それにこれは、ぜってぇはずせねぇのが、とにかく年が若くないと無理だわ」
「ほほう。たとえば女優の深田恭子さんとかは、もう三十歳を越えられていますが、めちゃくちゃかわいいじゃないですか?」
「深田恭子! お前あいつの肌見たことあんのか。地デジのハイビジョン舐めたら痛い目にあうぜぇ」
「そんなに深田恭子さんの肌年齢っていっちゃってるんですか?」
「てめぇ、喧嘩売ってんのか? 俺は深田恭子の大ファンなんだよ。肌年齢は十代だよ十代。地デジで深田恭子の肌見るたびに、朝、必ず夢精すっから」
「スタイル抜群というと、やっぱり、菜々緒さんとか、エビちゃんとかですか?」
「バカ。森三中、はずすなよ」
(も、もりさんちゅう!)
「いったい、何歳くらいが理想ですか?」
「まぁ、三十代くらいまでは適齢期だからねぇ」
「三十代までなら大丈夫ですか?」
「アラフォーだって、井川遥、藤原紀香ねえさんみたいな人いるからね」
「わかりました。四十代までは大丈夫ということで」
「ちょちょちょちょ。五十代の高島礼子、忘れたらあかんやろ」
「まさか?」
「はい。六十代では永遠のオナペット、松坂慶子。まぁ、五月みどりなら七十代だってOKだぜ」
(あんた森光子の墓参りにも行ってるやろ?)
「結局、あなたの理想ってなんなのですか?」
――はい。
ぶっちゃけ、女でさえあってくれたら、あとはなんとかなりまんねん――




