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第一話 夫婦交換(スワッピング)

 会社の飲み会で、熟年離婚の危機に瀕しているオッサンの愚痴をよく聞く。こういうオッサンはすぐ、

「お前のところは大丈夫なのか?」

 と、〝仲間探し〟みえみえでたずねてくる。

「うちもヤバイですよ」

 とでも言えば満足なのだろうが、そんなことは絶対に言わない。

「うちは仲いいですよ。課長と違って人間ができていますから」

 こう言うと決まって、

「お前のかあちゃん、まだ若いからなぁ」

 俺は、にっこり笑って、心の中でこう吐き捨てる。

(若けりゃいいとか露骨に言ってっから、愛想をつかされるんだろ)

 こんな会話をするたびに、俺は永続きの秘訣をアドバイスしているのだが、ひねくれたオッサンたちは、誰一人としてまともに話を聞こうとはしない。


――永続きさせたかったらまず、女の本質を理解しておく必要がある。ポイントは、これだ!

【女は、かなり面倒くさがり】

 女は、ちまちま歩いたりしない。面倒だと思うと、すぐタクシーに乗ってしまう。自分で歩いて目的地を捜すなんて、バカがやることだと思っているのだ。ほんの少しお金を払えば、プロのドライバーがどこにだって連れて行ってくれる。それをケチって歩いたりしたら、へたをすれば化粧がはげるし、汗臭い女にもなりかねない。もったいないほどに、時間と労力が無駄になると思っているのだ。

 女は、誰も見ていなかったら、足で物を取ったりもする。

「手より足のほうが長いのだから当然でしょう」

 てなわけだ。はしたないなんて考えは毛頭ない。人は、他人に見られていない場所でなら、ウンコだってしていいわけだから。

 ひとりの食事に、インスタントラーメンを鍋のまま食べたりもする。なぜ、洗うためだけに丼を出すのか。器で味なんかかわるものかと思っているのだ。たかがインスタントラーメンごときに、丼を使いたがる男を見ると、『死ねばいいのに』とさえ思う女もいる。

 なにかはりきって、面倒なことをしそうな男への警戒心も半端ない。たとえば、犬小屋の一つでも作ろうとしたなら、烈火のごとく猛反対することだろう。買ったほうが安いだの、売っているほうがきれいにできているだの、絶対に作らせてはもらえない。

『買えば済むところを、なにややこしいこと言ってんだ、このタコ』

 と、いうわけだ。

 とにかく女は、面倒くさいことが大嫌いな生き物だということを、しっかり理解しておかなければならない。

――だから、

【女は、料理ができてきれい好き】

 なんて妄想は、今すぐ広告の裏にでも書いてヤギに食わせちまえ。今や〝女が家事をする〟 なんて決まりは、都市伝説ですらない。本音はこんなところだ。

(実は、掃除も洗濯も大嫌い)

(すべてのモノを使い捨てにしたい)

(好きな男にだって、ごはん作りたくない)

(彼が光合成してくれたらどんなに楽か)

(化粧もオシャレもチョー面倒くさい)

(私のすっぴんに、早く慣れてよ)

 つまり、女には料理も掃除も期待してはいけない。なにかしてもらおうなどと思ってはいけない。気が利いて、優しくて、きれいで、いい匂いで……、とにかく、過度の期待は不満にしかならないのだ。

――結論!

【相手に、まったくなんの期待もしないこと】

 これこそが、永続きの秘訣にほかならない。

 ペットの犬や猫をみてみろ。あいつら、食べたあとの皿を洗ったことがあるか? 部屋を出るとき、扉を閉めたことがあるか? 生まれてこのかた定職にも就かず、一生、人に面倒をみてもらうだけだ。なのに、どんなに散らかしても、ときにウンコを漏らしても、しっぽを振ったり、頭をすり寄せたりしてきたなら、かわいくてかわいくて仕方がないだろ。

 なぜ腹が立たないのか。やつらには、なんの期待もしていないからにほかならない。腹を立てるポイントがないから、かわいいポイントだけが見えるのだ。

(人間と犬猫を一緒にできるわけがないだろう)

 そう思ったら大間違いだ。不満とは期待の裏返しだという本質は、その対象が人間か犬猫かは関係ない。

 つまりは、相手に求めてばかりではダメということ。ここに気づかなければ、相手が誰にかわろうとも、結局は不満が湧き、やがては不仲になってしまう。

 試しに隣の奥さんとかわってもらってみろ。すぐに今の奥さんと同じように不満に思うから。要するに、自分がかわらなければなにもかわりは――

 と、ここまで力説したとき、オッサンたちは突然、鼻糞をほじる手を止めた。

「うちの婆さんを隣の奥さんと取りかえてもらえるなら、願ったり叶ったりだなぁ」

「えっ?」

「課長、夫婦交換(スワッピング)ですか。いいですなぁ」

 腰巾着が、すかさず合いの手を入れた。

「俺はいいが、隣の旦那に悪いなぁ」

「大丈夫ですよ。お隣も、その隣の奥さんと交換しちゃいますから、きっと……」

「おお! そうだなぁ。そうしたら、うちの婆さん、みんなに交換されちゃって、最後はカムチャッカまで行っちゃうぞ」

――ここで一同大爆笑となった。

 俺は、たまらず、

「あんたら、脳味噌までチンコでできているのか?」

 と、恫喝したら、あろうことかこのオッサンたちは、

「脳味噌がチンコでできていたら、気持ちよさそうだなぁ」

「ダメですよ、課長。自慰(オナニー)するたびに、脳内出血で死んじゃいますから」

「おお! そりゃいかん。それじゃ俺、中一の夏に死んじゃってたなぁ」

――再び大爆笑が起こった。

 …………

 今からでも遅くなあああい!

 …………

 死ねええええええええええ!

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