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学園追放を免れることは諦めませんけど、執着的な愛を拒否することは諦めました

作者: 中川円茄

転生ものを読み漁ってたら、どうしても書きたくなってしまいました。いろいろツッコミどころは多いと思いますが、暖かい心で脳内補正等お願いします。

私が乙女ゲームのライバルキャラだと気がついたのは12歳とき、自分の婚約者が決まりその人と対面したときだった。

物心ついてから、なんとなく違和感のようなものをずっと抱いていて、どうしても幼稚園や小学校で行われるようなお遊戯等のイベントが大嫌いで、よく幼稚園も小学校も休んでいた。

でも、その今までの違和感の理由がこれでやっと解決したことに、ひとまず私は安堵した。それと同時に、これからの自分の人生がゲーム通り進まないように、自らを律することを決意した。


ゲームの設定は単純明快で、お金持ちだけが通う私立の高校に庶民だけど成績優秀な特待生として入学してきたヒロインが、学園のイケメンを攻略していくという筋書きだ。

ちなみに私はその攻略対象の一人である生徒会副会長の婚約者という設定で、ヒロインと副会長の恋の邪魔をする役だ。ヒロインと副会長がゴールインすると、最後には学園を追放される。


前世の記憶のようなものが若干戻った私は、それを活用しながら現在の世界での勉強に集中した。ずばり、婚約者に自分が排除される前に、私が排除してしまえ作戦だ。

私の家と、婚約者である山崎尚義の家との間で、資金援助を目的とした株のやりとりが発生したことを私はとある人物を通じて情報を得ていたので、高校2年生になるまでに山崎の関連株の3分の2を取得するのを目標に、株の売買をはじめた。


私の前世は、外資系ファンドの社員をしていて、株や為替取引に関する知識は既に身につけていた。幸いここもゲームの世界と酷似しているとはいえ、株の売買の仕組みは同じようなものだったから、前世の経験を十分に活かすことができた。

私は親から貰う一般庶民からするとかなり高額なお小遣いやお年玉を元手に、確実に山崎関連株の持ち株率と資金を増やしていった。


****


「すまない、透子。婚約を破棄して欲しい。」


目の前にいる私の婚約者は、学園の生徒会副会長で成績も優秀、スポーツもできて、顔良し、おまけにそれなりの企業の社長の息子ということもあり、女には不自由しない全ての条件が揃ったような人物だった。


私と彼との婚約は、彼の両親からの願いもあり、成立したものだった。つまり、彼の家にはそれなりの利益があるからこそ成立した婚約だった。

それを破棄するということは、自分の親の会社がどうなっても構わないということだろうか?お前、自分の立場わかってんの?


「尚義さん、本気でおっしゃっているのですか?御両親は了承したのですか?」


私が尚義さんを責めるような口調で問いかけると、なぜか一人の女が教室に乱入してきた。


「違うんです!尚くんを責めないで!」


男性を意識した泣き顔を浮かべる彼女を見ながら、私は「ああ、これがヒロインちゃんか」と理解した。


「別に、尚義さんを責めているつもりはありません。本当に破棄で進めて大丈夫なのか確認したかっただけです。」


「両親には話していないが、必ず説得する。」


二人手を取り合い、他者がいるにも関わらず自分たちの世界に入るバカップルに、ため息がでた。


「婚約解消は了承します。それに伴って私の家とあなたの家には何も関係がなくなるということになりますが、よろしいですか?

あと、尚義さんの彼女さんにも聞きますが、尚義さんが、貧乏になっても、この学校に通えなくて公立に行くことになっても、好きだということでよろしいですか。」


「もちろんよ。尚くんが好きなのであって、尚くんがどんな立場になったって、愛してるわ。」


私は、自分の鞄からノートを取り出して、婚約破棄を正式に認める旨を書き記し、彼にサインを求めた。


「尚義さん、これからもう二度と会うことはないと思うけど、お幸せにね。」


私の言葉に引っ掛かった尚義さんは、首を傾げた。


「透子は学校を辞めるのか?俺たちのことで居づらいかもしれないが、何なら透子から婚約破棄したと広めてくれて構わないよ。じゃあ、俺達はこれで失礼するよ。」


そう言って元婚約者様とその恋人は教室を出て行った。

寝ぼけたことをほざく元婚約者様に、呆れてしまう。これだから自分の立場をきちんと教えられず甘やかされて育ったお坊ちゃんは嫌いなんだ。


「辞めるのは尚義さんですよ。私と婚約破棄して、あなたの家が無事にいられると思っているんですか?」


私はなんとなくひとりごとを呟いた。

教室を出て校門にはすでに車が待っていて、運転手がドアを開けるとなぜかそこにはすでに人が乗っていた。その姿をみてなぜかため息が漏れた。


「なんで津村がここにいるわけ?」


「山崎のボンクラと婚約破棄になったのでしょう。」


どうやってその情報を得たのかはあえて聞かないが、どうしても恐怖を感じてしまうのはなぜだろうか。


「山崎の株、今何%「現在、全部で75%です。あと社長が所有している株は好きにしていいと了承をもらっています。」


津村がなぜか私の言葉に食い気味で状況を説明するのが、なんとなく腑に落ちないが、まあとりあえず無視しよう。


「そう、じゃあ、現在の山崎代表取締役は即刻解任の手続きをして。後任はとりあえず、若原にさせて、細かい打ち合わせは明日するから。」


「かしこまりました。」


そう言ってなぜか津村が私の手をとって、私の手の甲に口づけを落とす。


「なんの真似?」


「これから、がんばるご褒美を先にもらったんです。」


「そんな態度なら、津村は辞めてもらっても良いのよ?」


「透子様。私よりも優秀な人材はそうそう現れませんよ?私が本気になれば宮澤だって乗っ取りますよ?」


なんでこんな厄介な男に目をつけられたのか、どうしてもわからない。実は、婚約者の山崎とあのお馬鹿女をくっつけたのはこの男なのではないかと疑っている。


「ロリコン」


「透子様。性的に成熟した思春期後期を迎えた女性に対する性愛は精神医学では性嗜好障害ではありませんので、その言葉は適切ではありません。それに、私は幼い少女が好きなのではなく、透子様が好きなのです。ですから、そのように表現されるのは納得いきません。」


なんだその無駄に論理的な説明は、お前を落ち込ませる言葉はじゃあ、なんだ?


「ストーカー」


「それについては、否定はできませんね。でも、つきまとい・待ち伏せ等以外はしていないので、軽い方だと思いますけど?」


ストーカーに軽いもの重いも無いだろ?


「監視していると告げる行為と面会・交際の要求も該当するんじゃない?」


「監視なんてしていませんよ。透子様に危険が及ばないように、見守っているだけですよ。面会は仕事上仕方がないと思いますし、交際は要求していませんよ?」


だから、見守るね。物は言いようってわけか。


「じゃあ、私が別の人と結婚しても何も言わないってこと。」


「それとこれとは別です。交際を要求はしませんから、透子様から私を望んでください。」


にっこりと微笑む男に私は無言で視線を逸らした。

厄介な男に目をつけられた私は、男性と付き合わないか、この男と付き合うかの選択肢しかのこされていないらしい。

男女の関係になれば、すぐに飽きて次にいく可能性もあるとは思うが、溺愛がひどくなる可能性の方が高い気がしてやっぱり踏み込めないでいる。


****


私と津村の出会いは遡ること10年前、津村はご立派な学歴を引っさげて私の父親の会社を入社し、その手腕を買われ、入社3年で私の父親の秘書になった。

それからは、頻繁に家に出入りするようになり、私も最初はカッコイイ年上の大人な彼にときめいたのだが、だんだん過ごすうちに彼の行動に違和感を覚えはじめた。


私の全ての行動を彼は把握していて、なぜか、私が友人と話した内容を聞いていなければわからないことまで知っていた。

もちろん私は怖くて必死で盗聴器を探したのだが、結局見つけることができなかった。

不自然なスキンシップも頻繁にあり、私は津村をロリコンなのだと思い、襲われないようになるべく二人きりにならないようにしていた。

しかし、警戒してはいたが、なぜか私は津村に襲われることはなかった。

そのうち、私も不思議なもので、津村との関係をなんとも思わなくなり、津村も彼女がいたりしたので、社長の娘で大事に思ってくれているだけなのだと認識を改めるようになった。


しかし、それも山崎のバカ息子と12歳の時に婚約してからまた変化してしまった。

私は前世の記憶が僅かだが戻ったことで、この津村という男が隠しキャラで、実は私はこの津村を攻略したくて、このゲームをプレイしていたことを思い出した。


ヤンデレキャラはやっぱ、二次元に限ることを痛感しながら、なぜそのヤンデレ野郎に目を付けられたのが私なのかが理解に苦しむ。


婚約が決まった後は、なぜか毎朝津村が学校まで送るようになり、山崎のバカ息子に身体を触られていないか確認され、隙ある毎に、私の身体の何処かにキスをするようになった。

最初に玄関で靴を履こうとした時に、靴を用意した津村が私の膝にキスをしたら時は、ゾッとして軽く悲鳴をあげてしまった。


****


翌日、学校へ行くと校門の前には元婚約者様が立っていた。


「透子!どういうつもりだ!」


「何がですか?」


「何って、俺の父親が代表取締役を解任させられた。」


「当然ではありませんか。婚約関係と同時にこちらは金銭的援助と引き換えに株式を購入したのですから。」


「俺が婚約解消したことがそんなに気に入らないのか?」


まったく、馬鹿はこれだから嫌いだ。

なんでそういうことになるんだ?

私がいつお前を好きだと言った?

ちょっとばかし顔が良いからって、女をなめんなよ?

私が言い返そうと口を開こうとしたら、その前に津村に遮られてしまった。


「山崎様。見苦しいですよ。透子様は婚約解消の前に、婚約解消は了承します。それに伴って私の家とあなたの家には何も関係がなくなるということになりますが、よろしいですか。と尋ねたでしょう?

もしかして、あなたは山崎家と宮澤家の間でどんな取引があったのかも知らなかったのですか?」


おい!なんでお前はその場に居なかったのに、淀みなくセリフを再現できるんだよ。


「それは・・・」


「大体、所有している株をどのように利用しようが、こちらの自由ですよ。訴えたって何も起こりませんよ。あなた方にはどちらにせよ経営能力は無いのだから、大人しく雇われる側にまわるのが良いと思いますけどね。」


その言葉に激昂した元婚約者様は、津村に手をあげようとしたが、それは全くもって無駄なことだった。なぜなら津村は私を守れるようにとか言って、無駄に武術の類には長けていたからだ。

あっさり津村に倒されてしまった婚約者様を跨いで、私は教室へと向かう。


「津村。山崎さんの始末は任せるから、二度と私の前には現れないようにしてくれる。」


私は吐き捨てるように津村に告げる。

別に愛してもいない婚約者だったが、津村から逃げれるならそれでも良いかなと実は思っていたのだった。

それが・・・役立たず!


教室に向かう途中、昨日泣きながら私に交際を許して欲しいと訴えてきたヒロインちゃんが、別の男と腕を組んで歩いているのが見えた。

乗り換えるのはやっ!

彼女のたくましさに感心してしまった。


慌ただしい一日が過ぎて家に戻ると、なぜか津村が私の部屋で待ち構えていた。もう、こうなると嫌な予感しかしない。


「何か用?」


「山崎様には、十分に言い聞かせてお帰りいただきましたので、ご心配いりません。とご報告に参りました。」


「その報告、電話でいいわよね?」


「頑張ったご褒美を下さい。」


「お金?」


「そんなものはいりません。透子様が欲しいです。」


婚約破棄したら、絶対襲われるだろうなと予想はしていたが、まさか、こうも正攻法でくるとは思わなくて、逆に困ってしまった。

愛するより愛される方が幸せだと思うべきか。

津村に抱かれるのがそこまで嫌じゃ無いとおもってしまう自分が怖い。そりゃ、前世の私は津村が好きだったし、病的に愛されたいとか思ってましたけど、いざ、それが現実になると恐怖心が勝ってしまうのは、人間として仕方が無いことだと思う。


「ここでは嫌だ。」


「好きなホテルのスイートを取りますから、リクエストしてください。」


嫌がらせのように、開業したばかりの一流ホテルの名前を出したのに、なぜか電話をして数分で手配してきやがった。

津村。

だからお前はいったい何者なんだ。


「透子様、じゃあ、いきましょうか。」


私は津村に引きずられるようにホテルへ連行され、彼の褒美を与えることになった。

シャワーを浴びたかったが、それはなぜか許され無かった。私は感情のない人形のように、ただベッドの上に寝転んで津村の行為を他人事のように見ていた。

今まで何人の女を相手にしてきたのかは分からないが、慣れた手つきで、結局どちらの褒美なのかわからないくらいに、気持ち良くさせられてしまった。

ただし、破瓜の痛みはあったけど・・・


今は嬉しそうに枕に顔をうずめて潰れている私の露わになった背中にキスしたり肩を撫でたりしている。


「満足した?」


「まさか!全然足りません。」


「あんたのの望みは一体何なの?」


「透子様を私だけのものにしたいですね。」


「どうせ、手に入ったらポイとかでしょ。」


津村はなぜか、私を仰向けにして、触れるだけの優しいキスを落としてくる。


「透子様は何か勘違いしておられるようですが、どうしてそのように思われるのですか?」


「だって、昔から関係を持った女が愛を囁き出したらポイ捨てしてたじゃない。」


「当然です。透子様以外の女はただの性欲処理のための付き合いですから。」


もう、私は深く考えることを手放した。

というか、今までの女に土下座して謝れ!!!


****


「でさ、津村はいつから私のことが好きなわけ。」


「前世からです。」


私は、自分が前世の記憶持ちのくせに、津村の言葉にものすごく驚いてしまった。


「透子様も前世持ちですよね?」


「なんで?わかるの?」


「なんとなく。子供らしいことがお嫌いなようでしたし。そうだろうと思って観察していたので。」


「じゃあ、津村はこのゲームのファンだったの?でも私、悪役ライバルキャラなんだけど。」


「私は、あまり主人公が好きでは無いんですよ。脇役のキャラが好みなんです。ちなみに、乙ゲーをプレイしていたのは、このゲームのイラストレーターのファンだったので。」


「じゃあ、私の見た目がものすごくタイプということなのね。」


「そういう言い方は、気に入りませんね。私は前世の記憶を持っていることも含めた透子様の全てが好きですよ。」


「好きねぇ。私が津村に屈しないから、意地になってるだけじゃない?」


「勝手に勘違いしていればいいですよ。でも、私は意地になってるのでもなく、勘違いでも、思い込みでもなく、純粋に透子様を愛していますよ。」


「愛してるなら、私のために身を引こうとは思わないわけ。」


「私よりも透子様を幸せにできる相手が現れればそうしますよ。でも、残念ながら、まだ現れないのです。」


「あっそ」


「でも、透子様は私の見た目と声は好きですよね?あとは手もお気に召して頂いているようですし、問題ないのでは?」


私は図星を刺されて、赤面してしまった。自分のことをよく見ていると思ったが、自分が表に出していないと思ってたことを指摘されて、動揺してしまう。


「でも、あんたのその粘着質な性格は好みじゃないし。」


「でも、最近は慣れて来て、平気になっているではありませんか。」


心の盗聴器をつけられているのではないかと思いたいほど言い当てられて、私はこの日を境に津村から逃げることを諦めた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 津村の前世って女性だったり…?w
[一言] ハーレム主人公嫌いなんだよね、どうしてヒロインが許容できるのか疑問でしかない 乙女ゲーは……男どもがよくがまんできてるというか気付かないというか……腹黒だね
[一言] 透子さんの性格・行動と、津村さんの底知れぬ優秀・執着ぶりが良かったです! ほとんど存在感がなかった山崎くんは、節操のないヒロインちゃんに捨てられて女性不信になりそうですね。 少しの間だけで…
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