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不幸せな青い鳥に願いを込めて  作者: 満月小僧
あなたを幸せにします
39/42

七月六日、金曜日。


「…………」


 時刻は午後三時四十分。佐野は木陰に入ったベンチに腰かけて、ボーっと空を見ていた。ポツンと浮雲がのびのびと漂っている。


 あの日から五日間、その間一度も佐野は幸の事を見ていない。

彼女は何をしているのか? それさえも知らなかった。


 正直、とてもとても気になるが、これ以上、佐野が幸達にしようと思う事は存在しなかった。


 彼はただ、トゥルーエンドでなくても良いから、ハッピーエンドで終わって欲しいと思っていた。


「宮代じゃないけど、もしこれがギャルゲーなら売れないだろうなぁ」


 浮雲を見ながら、ポツッと呟きが漏れた。


 最後の最後の選択肢でヒロインに関れないギャルゲーなど何処の層の人々が買おうと言うのだろうか。


 とは言ったものの、このような結末になる選択肢を選び続けたのは佐野自身であり、そのようなエンディングを迎えようとしたのも彼である。


 宝くじを破り捨てる事を選択し、青い鳥が入った鳥籠を壊す事を選択し、最後の最後に青い鳥に関らない事を選択したのだ。ここで文句を言うのは筋違いで、見苦しいとしか、彼には思えない。


「……ミルクティーでも買いに行くか」


 呟きながらベンチから立ち上がり、佐野は大学内にある売店に向かった。



 購入した紙パックのミルクティーを持って、売店から出た佐野は学内掲示板の所である物を発見した。笹と短冊である。どうやら大学が設置した物らしく、隣の机に置かれた短冊を自由に使って良いようだ。


「……明日は七夕か」


 佐野は机に歩み寄り、ミルクティーをそこに置いて、短冊を手に持った。彼女のワンピースのような青色の短冊である。


「……」


 肩にかけたショルダーバックから筆箱を取り出し、そこから佐野は愛用のシャーペンを取り出した。机に置かれたボールペンを何故だか使う気に成れなかった。


「……………良し」


 少し考えた後、佐野は短冊に何か書き、そのまま隣にあった笹へその空のように青い短冊を括りつけた。


 彼が近くにあった柱時計を確認してみると今の時刻は四時を回った所、後三十分ほどで本日最後の授業が開始である。


 佐野はシャーペンを筆箱に戻し、それをバックに入れ、


「んじゃ、行くか」


 そう言いながら、ミルクティーを左手に佐野は次の授業の教室に向かった。



七月七日、土曜日。



 聞き慣れたアラーム音で佐野は眼が覚めた。眠気眼に携帯電話に手を伸ばし、アラーム音を切る。時刻を確認してみると七時半だ。


「…………眠い」


 布団が強烈に誘惑してくるが、佐野は少しの伸びをした後、ベットから起き上がり、そのまま洗面所に向かった。


 顔を洗い、多少は眠気の晴れた頭でテレビの電源をつけると、ちょうど天気予報の時間である。


 お天気お姉さんは、今日は雲ひとつ無い快晴であり、縁起の良い七夕になりそうだと言っている。実際に窓の外からは快晴特有の健やかな空気が流れ込んでいた。


 佐野はその後、トーストと牛乳という簡素すぎる朝食を終えて、のそのそと外着に着替え、あくび混じりに玄関から外に出た。


 せっかくの快晴である。散歩しなければ勿体無いと思ったのだ。



 とはいえ、佐野は大学一年生だというのに特にやりたい事も予定も無く、結局古本屋に立ち読みをしに行く事した。


「…………」


 そう決めて、いざ近場の古本屋へと足を進めるのだが、佐野の脳裏を過ぎるのは、今何をしているのかも分からない幸の事ばかりだ。


 幸が姿を見せなくなってから今日で六日間、彼女が何をしようとしているかは知っていても何をしているのかは佐野には検討が付かない。


 佐野はとても歯がゆかった。


 ふと、佐野は自分の左側を見た。そこには当然誰も居ない。


 その事に寂しさを感じないといえば嘘である。


 佐野は一度ため息を付いて、古本屋へ足を速めた。



 時刻は昼過ぎ、ファストフード店で昼食を終えた佐野は、何と無しにブラブラと歩いていた。その左手には数冊の本が入った袋が下げられている。先ほど訪れた古本屋で彼が買った物だ。


 そのまま歩き続けて、しばらくの時間が経った。


「……………………まったく、何でここにたどり着いちゃうのかね」


 佐野は苦笑混じりに自らの足が訪れた場所を見つめていた。何度も何度も幸と訪れ、色々な事を何度も何度も話したT公園が、目の前に広がっていたのだ。


 苦笑とため息を混ぜながら、佐野はこれもまた何度も座ったベンチまで歩いて、そこに腰かけた。せっかくだから、ここで本を読む事にしたのである。

袋から、本を取り出す前に、佐野は空を見上げた。幸のワンピースのように青い、浮雲一つ無い空が広がっている。


 それに彼は眼を細めた。

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