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不幸せな青い鳥に願いを込めて  作者: 満月小僧
切れないハサミ、書けない鉛筆、飲めないコップ
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 何故こんな事になっているのでしょう? 推測も推論も立ちません。ああ、見ないでください。辛いでしょう。私を見たら辛いのでしょう?


「ここのミルクティーは美味しいですね。まあ、自分はミルクティー自体が好きだから特に味が分かる訳ではないのですが」


 ミルクティーを一口飲んだあなたの口元は笑みの形です。けれど、アナタは未だ呆然と私とあなたを交互に見ています。


 あなたは湯気の立つカップを陶器特有の甲高い音を立てながら、皿の上に置きました。それと同時にアナタが口を開きます。


「答えて、ください。何故、ここに幸が、居るのですか?」


 あなたの笑みは崩れませんでした。


「俺が今日連れてきたからです」


 それは分かっています。分かりきっています。


 では何故、あなたは私をアナタに会わせたのですか?


 当然アナタは歪めた表情のまま問い掛けを続けます。


「そんな事を、聞いているんじゃ、ありません。何で幸を、私に会わせたんですか?」


 ああ、そんな辛そうな表情を止めてください。苦しそうな表情を止めてください。哀しそうな表情を止めてください。


「そうですね。答えは至極単純、そうしようと思ったからですよ」


 しかしながら、あなたはその言葉をまるで頬を撫でる風のように受け流し、飄々とした口調を崩しません。


「ふざけ、ないで、ください」


 アナタの肩が震えます。表情がますます苦い物へと変わっていきます。待ってください。これ以上アナタは苦しまないでください。


「俺はいたって真面目ですよ。久しぶりに真剣ですよ。こう見えても」


 そう言って、あなたはミルクティーをもう一口飲みました。


「何が、したいんですか?」


 ああ、初めて見ました。アナタの怒りを初めてみました。ここまで震えたアナタの声も始めて聞きました。落ち着いてください。


 けれど、あなたの態度は何も変わらず、口元に笑みを張り付かせたままです。


 あなたは口を開きました。


「そういえば、幸と青山さんは久しぶりの再会に、挨拶とかはしないんですか?」


 その言葉に弾かれた様にアナタは息を呑みながら立ち上がりました。椅子の足が地面を激しくこする音がします。


「…………」


 肩が震えていました。そんな表情をするアナタを私は初めて見ました。


「すいません。ふざけすぎました。まあ、勘弁してください。俺も俺で結構一杯一杯なんですから。とりあえず、今から話すので座ってください」


 あなたは何故、そこまで飄々と話すのですか? 何がしたいのですか? ああ、まだ声が出ません。力が入りません。体のどこか重要な機関が壊れたのでしょうか?


 アナタは未だ肩を震わせたまま座り直しました。


 あなたは右手で頭を数回ほど掻いています。


 あなたはいちど小さく息を吐いてから、口を開きました。


「んじゃ、話すとしますか」



「とりあえず、青山さん。俺は思ったんですよ。俺があなたの言う事を聞く必要無いなって」


 あなたはそう語りだしました。その表情は笑っているようにも苦笑しているようにも見えました。


 一体あなたは何を考えているのですか? 何を思ってアナタに私を会わせたのですか? 分かりません、分かりません、分かりません。


「…………」


 アナタは視線に力を込めてあなたを見ています。ああ、そんな表情も私は初めてみました。アナタが今、幸せではない事は分かります。


 けれど、あなたはそれをまるで無い物かのように、言葉を続けました。


「だってそうでしょう? あなたは俺の先輩でも先生でも家族でも友でも無い。ただの幸を通して出会った知り合いだ。しかも、コンタクトを取ってきたのも、俺には何のリターンも無いお願いをしてきたのもあなただ」


 どうやら、この口ぶりからすると、アナタがあなたに近づいたようです。しかもその理由は私のようです。ああ、こんな役目も果たせない不良品にまた要らぬ手間をかけさせてしまいました。


 本当に私はつくづくポンコツでガラクタです。アナタを不幸にしか出来ません。


「だから、とはいえ、幸をここに、連れてくる事は、無いでしょう?」


 怒っています。その肩が、その声が怒りで震えている事は明らかでした。私はまたアナタにそんな感情を持たせてしまいました。ごめんなさい。


 ……まだ声が出ません。


 アナタとは対照的にあなたは笑っています。その口元は笑みの形のままで、その体は脱力しているように見えます。何故、そうも、飄々とするのですか? 今までのあなたの行動を整理し統合した場合、そのような行動を選択しないはずです。一体、何故アナタを苦しめるのですか?


「それも、俺の自由ですよ」


 ああ、何故でしょうか? あなたが一瞬だけ見た事もない表情をしたように感じられました。


 いえ、見た事の無いではありません。一週間前、あなたが数回だけ見せた、あの喜怒哀楽どれともつかない硬い表情をしたように見えました。


「もう一度、聴きます。君は、何がしたい?」


 アナタの視線もますます強くなりました。私の体はまだ言う事を聞きません。早く動いてくださいこのガラクタが。

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