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ジグザグボックス

2025年8月17日

女の子の死体は、思ったよりも軽かった。

高校生にしては、幼い少女が手足を縛られ、山に掘られた穴の中に横たわり、土を被せられている。

気の毒だと思う暇さえなかった。早く隠さなければと思い、一心不乱にスコップを動かし、穴を埋める。

突然の雨が汗をかき消してくれたおかげで比較的快適に終わってくれた。

全てが終わったあと、ようやくその女の子を可哀想だと思った。


2026年8月

D市歴史記念館は、名前の割に小さくいつもは不気味なくらい人がいない。かすかにシューという音が聞こえ、ショーケースの中には歴史ある本や、甲冑、城跡の残骸が飾ってある。そして入り口には地方のニュースを垂れ流すテレビと昨日このあたりで行方不明になっている女の子のポスターが貼られている。

「本能寺の変が起こった年は?」

「15……82年?」

「大阪夏の陣と冬の陣の年を答えろ」

「夏の陣が1614年で…冬の陣が16…15年?」

「夏の陣と冬の陣が逆だ。」

「〜〜〜!!」

ワナを張られてしまった

「惜しかったな。」

「くっそ、どうしても2,3問で7割にならないんだよなぁ…」

「この程度で6割なら次のテストは50点も取れないぞ。」

「……っ!」

荒谷のこういった性格は今に始まった事じゃない。

しかし、予期せぬ時に言われてしまうから厄介なんだ。

「大体、なんで学校近くのここでやるんだ?図書館とかでも良いだろ…ちょっと不気味何だよ…ここ。」

二人の目の前にある城の模型は、すぐそこにある山にあったとされる小さな城の模型だ。そこから流れる解説アナウンスは薄暗いここで、不気味さを増す。そもそもこの城は教科書に乗らず、歴史が好きなあいつも何とも思ってない。しかし何もないここだと、軽く祭り上げられ、城跡で夏祭りも行われる。

「お前、料理学ぶ為に図書館に行くのか?」

「歴史好きの俺から言わせると、こういった物は触れるのが一番なんだ。」

「そんなもんかねぇ…」

「で、どうする?ここで辞めるか?」

「辞めるわけねぇだろ。さっさと問題出せ」

「そうだな。じゃあ…」

「車椅子の人可哀想だよねー」

問題を出す前に後ろの女性の声にかき消されてしまった。一瞬振り返ると同じ学校の制服を着た女子生徒2人だった。

「そうだね。あのホームレスみたいなやつ。カワイソー」

「ね。カーワイソ」

二人の横を通りすぎると、そのまま何処かに行ってしまった。気分が悪い。可哀想という言葉をこうも攻撃的に使えるのはもはや才能だろう。

ホームレスと言うのは、この記念館の入り口付近にいた車椅子の老人の事だ。ホームレスのような外観で特に喋る事もなく、そこに居座っている。

「くっそ…気分悪いな…すまん荒谷。続き…」

「帰る」

そう言うと荒谷は機嫌が悪い顔をして、出ていってしまった。

1人取り残され、ここに用もなくなってしまったので記念館内部の自販機でジュースを買って帰る事にした。

オレンジは前飲んだからなー。グレープでいいか。

「ねー、それちょうだい。」

寒気がした。夏でかなり熱いのに、後ろからの声が寒気による震えを起こさせ、鳥肌を立たせる

驚きつつも首だけ後ろを振り返ると、小さい女の子が立っていた。何処かで見たことある若々しい服装。今どき高校生じゃなくてもあんなの着るんだなと少し感心を覚える。

「あ?」

こんな小さい子供にこの反応は不味かっただろうか…しかしいきなり買ったジュース寄こせなんて、失礼にも程がある。一歩間違えればクソガキだ。

「それってこれをか?」

「うん。ちょーだい」

髪を肩より少し上に切られた短い髪の女の子の目は悪意は感じられなかったが何かが欠けていた。

「お前、お母さんは?もしいるんなら、これ俺のだからそっちに…」

「いない」

「……っ!」

地雷をふんじまった。

「じゃ、お父さんは?」

「どっちもいない」

まいったな……これじゃあ、なんて言えば…


「わたし幽霊だもん」

………は?

なんだこいつ、ビビらせてジュース取ろうってのか?

「お前さ、もう少しマシな嘘考えたほうが良いぜ?そんなんじゃ、友達も怖がらせられねぇ」

女の子に背中を見せながら勝ち誇ったようにジュースを口につけようとしたとき女の子の手が、ジュースのペットボトルを持った自分の手を掴もうとしていた

そして、自分を驚かせたのはこの手はどっから伸びているのか?自分は女の子に背を向けているのだ。答えは単純。女の子の腕が自分の背を通過しているからだ。

どっかのバトル漫画で奇襲を受けた主人公の仲間が後ろから貫かれる描写があったような気がするがそれに近い。

ビビリながら後ろを振り向くと身長差を埋めるように背を伸ばした女の子がニヤリと悪意のある目をして

「このままかたちにしちゃおうか」

自分の体から血が沢山でる想像をしてしまった。そしてこいつがにやにやしながら血まみれになる想像も

「くっそ…こいつ…」

妙な緊張感が走っている。俺は今日もしかしたら死ぬんじゃないか?と


自販機機近くのイスで年齢差のある二人の若者が座っている。

隣で呑気に俺が買ったジュースを飲んでいるこいつは何なんだ?

「……いい服着てるな」

「これ?いいでしょ。死んだ人からもらったの幽霊だからできるんだー」

「本当に…お前幽霊なのか?」

そういった疑問を持つのは見た目が全くそう見えないからだ。

なんだその現代的な服。

「ん?そうだよ」

「まだしんじない?」

「いや…あんなことされたんじゃもう信じるしか…というかお前、幽霊のクセに、ジュースは飲むんだな。」

「のまなくても大丈夫だけどね。わたしお金もてないから、たまーにしかのめないんだ」

都合のいい幽霊だな…ってか!

「他の奴にもたかってんのか!?」

こいつどういう教育されてんだ…

「わたしのことみえないし後ろから声かけたらみんなきみ悪がってにげちゃうんだー」

「そりゃ、お前みたいなやつ誰だって逃げるだろそもそも他にお前のこと見える奴いるのか?」

「いないよ。えーと…」

「ん?あぁ…俺は火鉈…色紙火鉈だよお前は?」

「わかんない」

「は?」

「わたし、生きてるときのことなんにも覚えてないんだ。」

「なにもって…全くか?」 

幽霊の女の子は頷く。

幽霊は生きている時の事を覚えていないというのは、漫画でちらほら見たことがある。

現実でもそうなのか?

「じゃあ…お前なんて呼べば良いんだ?」

「うーん……」

「そうだな…幽霊だから幽子………ありきたりか……今どき〇〇子もな」

ちらっと女の子の方を見たとき手に持っていたぶどうジュースに目がいった。

葡萄…たしか葡っても読めたよな…葡……ほ…ホ……

次に女の子の後ろには展示物の刀が見えた。

「かほ…なんてのはどうだ?」

「かほ?なんで?」

「刀の側に葡萄ジュース持った子供がいるから刀葡…てことなんだが……」

「わかんないまぁそれでいいよ!」

「じゃあ、刀葡…さっきの話だが…」

「ごちそうさま!」

早!

「おいしかった!何かお礼させてよ」

「150円」

「幽霊はおかねを持たないのでーす!」

都合のいい幽霊だな!

「じゃあもう良いよ…」

帰ろうとしたときにさっきの二人組の女子生徒が見えた。なんだまだ帰っていなかったのか…あっ!そうだ

「やっぱじゃあ、頼んじゃおっかなー」

多分刀葡には俺の目が悪巧みをする目に見えただろう


記念館入り口までその2人は歩いていた。

「じゃあ、リモコンは持ったな?」

「これを使ってさっき言った通りに」

刀葡は頷き、二人組には見えない角度に行ってもらう。


「でさー、A組の子妊娠しちゃったみたい」

「マジで?親ガチャ失敗確定じゃん!」


今だ!電気をつけたり消したりを繰り返し、合図を送る。

「?どうしたんだろう…」

「壊れたのかな…」

次は刀葡がテレビをつけたり消したりして、不気味さを増させる…元々誰もいない図書館みたいな不気味さだから効果は倍だろう。

「も…もう行こう……?」

「う…うん……」

そして

「次 の ニ ュ ー ス で す 本 日 ! 」

とんでもない量のテレビの音が部屋中に響き渡る。

その量は30や40なんてもんじゃないそれをいきなり聞いた2人は…

「キャアァァァァアァァァ!!!!」

一目散に外に出てしまった

「フフフ…ハハハハハハ!!」

久しぶりに本気で笑ったかもしれない。悪知恵が働く方だと昔から思っていたが、ここまでとは

「ど…どうしたんだい?大きいテレビの音がしたんだけど」

こちらに大人が走ってくる。おそらくここの館長さんだろう想像よりも若々しい

「すいませんわかんないです。突然電気とかチカチカ鳴り始めちゃって…」

社交的な笑顔を振り向きながら話をでっちあげる。

笑顔は本心だがな

「そうなのかい?変だな…ここもそろそろがたが来ちゃったかな…」

「ここに幽霊でもいるんじゃないですかね?ハハハ」

「幽霊?まぁ、いいか閉館だから気をつけるんだよ」

わかりましたと言い、刀葡の元に行く。

「これで良いの?」

「あぁ。ジュースもう一本買ってやりたいくらいだよ」

「ホント!?」

「あぁ!何がいい?」

「何にしよっかなー」

「昨日から行方がわからなくなっている内田 咲さんですが…」

直ぐ側にある音が戻ったテレビを見る

行方不明?あぁ、入り口のポスターに貼ってるやつか。見つかってないのは…これで3人目何だっけ?

「服装は………」

さっきの笑顔が消える。

「なぁ、刀葡?」

「なーに?」

「お前の服、死体からはぎ取ったとか言ってたな」

「そーだよ。」

これ以上は聞いちゃいけない。自分の本能が警告する。しかし、興味が本能を覆いかぶさり、それどころじゃない。

「その死体…何処にあるんだ?」

刀葡に案内されたのは、トイレにある清掃用のロッカーだ。そこをこの子は指さす。

「なにも…いるわけないって……お化けじゃないんだし……」

ロッカーを開けると、清掃用具とは程遠い、可憐で清潔…刀葡と同じくらいの女の子が飛び出してきた。

それもゆっくりと目を閉じ…自分の体に身を任せながら落ちてくる用に。自分の顔に血が付いてしまった。俺の血じゃない。刀葡?あいつは幽霊だ。血なんて出るはずない。

答えは簡単。女の子の血だから。これは死体だ。それも刀葡と同じ服を着た誘拐された3人目の女の子の!

なんで気づかなかった!刀葡の服をどっかで見たことがあると言ったがそれは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

死体は冷たく、自分の体を冷やしていく。

今すぐ叫び、逃げ出したい…そんな中でも無邪気に刀葡は…

「ねーカナタジュースまだー!」

自分の恐怖を加速させた



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