2話 僕らは働く。
「あ〜、今回はこれからに関わる重大な話がある。」
ある日、ルイさんとスズナちゃんで格ゲー大会をしていた所にジンさんが合流した。
珍しく重いトーンで喋り出したジンさんに息を呑む。
「…何があったんですか?」
スズナちゃんが覚悟の顔でジンさんに問いかける。
長い沈黙からジンさんがやっと口を開き。
「…実は……!競馬とパチンコで全財産使っちまった!」
「「「は?」」」
は?しか言えなかった。
「整理すると、新しく出たパチンコの台が楽しくてのめり込んで敗北。競馬で手堅く行こうとしたら次は大敗と。」
「いやいや!あいつは確実に勝てる筈だったんだ!途中で転んでしまったのが敗因だった!」
「敗因も何もこけた時点で負け確だろ…。」
…ジンさんは重度のギャンブル依存である。あと酒も。
しかし、ここまでとは思わなかった。流石にルイさんもスズナちゃんも失望の目で…。
「ま、よくあることか。」
「!?」
「だなー、またバイト探すか〜。」
「???????????????」
なんでこの人たちは普通のことみたいな反応をしてんだ?
脳の理解が追いつかない僕に気づいたジンさんが口を開く
「あぁ、俺全財産失うのここ最近で6回目なんだ。」
「そんな失うほど少ねぇのかよ!」
「結構あるぞ。」
「あんのかよ!!!」
僕がこの三人と遊び始めたのは一年前から。この人たちは僕よりも長い間遊んでいたのは知ってるけど…マジか。
「とりあえず…金は必要だよな。」
ルイさんがスマホで短期バイトを探しながら喋る。
「金がないとな…でかねぇもんな…パチンコ。」
「一生やんな、ジンさん。」
僕とジンさんで余談を話しているとそこにルイさんが割って入る。
「お二人さん。いい仕事見つけたぞ。人外の俺たちにぴったりぜ。」
「「いい仕事?」」
「あ、ルイ〜!こっちこっちー!!!」
僕たちは言われるがままにルイさんについていく。するとそこは大きな倉庫であり、女性の人がこちらを手招きしている。
「ルナさんお久しぶりです。」
「おぉ!ルイとそのお友達さんこんにちは!ルイの大学サークルの元先輩であり、猫娘の堀村ルナです!どうかよろしくね〜!!!」
おぉ、すげー陽な雰囲気だ。
ルイさんと堀村さん。スズナちゃんとジンさんの温度差で風邪ひきそうなほど明確に陽と陰で別れてる。
「わ、私急用思い出したかも。」
そう言いながらこの場を立ち去ろうとするスズナちゃんの手を堀村さんがガッシリと捕む。
「あなたがスズナちゃんね!噂の100倍可愛い!やっぱり吸血鬼特有の雰囲気もかっこいい!牙見せてもらっていいですか!?」
「え、かわ、私可愛い?」
「はい!めっちゃ可愛いです!」
「…そ、そう?ありがと………。」
……スズナちゃんチョッッロ。顔すごい赤い。可愛いだけでいいのかよ。めっちゃ一瞬で落ちたな。
「ヨルくんとジン。この子めっちゃいい子だよ。」
「「なんなんだよお前」」
一段落したところで堀村さんが口を開く。
「今回の仕事は簡単!倉庫の荷物を全て横の倉庫に持ち運ぶこと!一個9トンほどするから頑張って運んでね♪」
え?聞き間違え?山積みの荷物を指差しながら清々しい声で言う堀村さんに耳を疑う。
「堀村さん質問です。」
「ルナでいいよ。」
「ルナさん質問です。9トンってなんかの比喩ですか?」
本当に9トンの荷物なわけが無い。うん、なんかの間違いだよな。
「いや、普通に9トン。」
「普通に9トン?」
「うん。ガチで9トンの荷物。」
「まじかよ。」
僕がドン引きの顔をしていると横にルイさんが立つ。
「ま、だからこそ俺たちに頼んだんだろ?この仕事。」
「そゆこと!君たちは人間の何千倍もの力があるからね。怪我しても再生するし!あ、ヨルくんも別で仕事はあるから暇しないよ♪」
呆れたような様子で仕事に取り掛かる三人と別に僕はルナさんと海辺へ向かう。
「君とは海辺のゴミ拾いだよ!簡単でしょ?」
「まぁ、そのぐらいなら。」
「ルイくんはね。大学の頃はめっちゃ暗かったの。」
黙々と作業を続ける僕にルナさんが口を開く。
「ルイくんは幼かった。狼男の力が制御出来ず、すぐに暴走してしまっていた。その暴走を隠そうと人と関わらなかった。」
明るいルナさんの声から漏れるトーンは悲しみの声であった。
「ルイくんには笑っていてほしいの。色々あったからね。でも、初めてジンさんと出会った時は凄く明るかった。」
僕はルイさんにどんな過去があったか、知らない。
ルナさん含めて、4人は人ではない。
ゾンビは不死である故、永遠の時を過ごすことになる。
吸血鬼は本能で血を欲する。それはきっと恐ろしいことに繋がる。
狼男と猫娘は姿が変わるので感情の変化で制御できないことがある。
そして、この分類の人たちは寿命と身体能力が桁外れでいるんだ。それに加えて再生待ちときた。
人間との関わりにはいつか決別が確実に来る。
「よし、仕事は終わり!お疲れ様ぁ!!!」
考え事をしている間にもうすでに仕事は終わっていたようだ。
「くっっそしんどかったぞ。」
「分かってて呼んだから。」
「ルーちゃんガチでオニィ……。」
「猫娘ですけど?」
「そこじゃねぇよ。」
謎に仲を深めているジンさんとスズナちゃんを遠くから眺める。
この楽しい日々も…いつか終わるのかな。
そんなことを思いながらも、僕は今の自由を大切にしようと思えた。
ちなみに、報酬は百万円だった。




