第8話エイリアンの使命(1)
「…自分がエイリアンって、何でそう思うんだ?」
オーナーはTERUさんに、神妙な面持ちで問いかける。いつになくシリアスな雰囲気だ。
TERUさんがエイリアン?一体どういうことだ?
GINGAさんの替えのパンツを買いに行った後、たまたまオーナーの部屋を通りかかると、気になる会話が聞こえてきた。僕もなぜTERUさんがそんなことを言い出したのか理由を聞きたい。バレないように、こっそりと聞き耳を立てる。
「だって俺…3日前にカッターで刺されたのに、もう治ってるし。」
「ああ、傷跡一つ残ってないな。」
「あと、なんかめっちゃ体力あるし。ネットで調べたら、シャトルランって大人でも平均70回くらいって出てきたし。」
「お前、小3のときに200回超えてたもんな。」
(あの話、マジだったんだ…。)
「あと、腰のところになんかカチカチ鳴るスイッチがあるし。」
「ああ。エイリアンの持つ変身スイッチだな。」
(あの話も、マジだったんだ…。)
「これあれだろ、俺って人間として生きてきたけど、実はエイリアンだったってパターンなんだろ?」
「…。」
「な、何とか言えよ!」
(ど、どうなんだ…?)
オーナーは、TERUさんの話を聞いて黙りこくってしまう。まさか、本当にエイリアンなのか…?
「…テルヤ。」
「…おう。」
ゴクリ、とTERUさんが固唾をのむ音がこちらまで聞こえた。僕もつられて、ゴクリと喉を鳴らす。
「…逆になんで今まで気づかなかったんだ?」
「…は?」
「いや…。普通に生活してたら、小学生くらいのころには気づくだろ。自分の身体が普通じゃないって。」
「いや…は⁉」
「…バカな子だと思ってたが、まさかここまでとは…。」
「…いや!気づいてたし!気づいてた上での確認だし!バカって言う方がバカなんだよ!」
「はいはい。お前の言う通り、お前はエイリアンだよ。」
「そんなあっさり重要事項を伝えるな!こっちは真剣なんだぞ!」
あまりにもあっさりと、衝撃の事実が伝えられる。TERUさんはいつもの通り騒いでいるが、僕は混乱していた。あのTERUさんが、エイリアンだって?全くもって信じられない。
「…で、お前はそれを確認してどうしたいんだ?」
「え?」
騒いでいるTERUさんをなだめるように、オーナーは問いかける。
「エイリアンだってことを知って終わりじゃないだろ?他に何が知りたいんだ?」
「そんなの…、何もかもだ!俺が地球で育った理由とか、本当の親のこととか、そもそもなんでエイリアンが店に来るようになったのか!」
そうだ、全部聞いてくれ。自分も知りたい。
「まあ、そうだよな。何かを知ろうにも、今のお前は何も知らなさすぎるな。」
「そうだよ!」
「分かったよ。全部教える。お前が何者なのか。…その前に、おい!コメット!」
「ひゃ、ひゃいっ!」
急に名前を呼ばれて、返事が裏返った。僕はドアを開け、おずおずと前に出る。
「そんな所で何してるんだ?」
「その…GINGAさんの替えのパンツを持っていこうとしてたら、耳を疑うようなお話が聞こえまして…。」
「そうか。続きを聞きたいんだったら、立ち聞きじゃなくってこっちに来な。」
「は、はいっす。」
オーナーに言われるがまま、僕はTERUさんの隣に立つ。
「じゃあ、始めるか。あれは、今からざっくり千年くらい前の話だな。」
「…は?千年?」
「なんでそんな前からさかのぼるんすか?」
「まあ聞けよ。随分昔の話しだけどな、あの夜の月の光は、一時も忘れたことはないよ。」




